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2015/12/27

『小説紙の消える日』を読んで

小説 紙の消える日~森林メジャーの謀略』という本を読んだ。

 
著者は、森山剛。版元は、廣済堂。
 
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出版年は1982年1月(初版)だ。私の手にしたのは5刷りだから、よく売れたことになる。もちろん、こんな古い本は書店では売っていなくて、たまたま古書市で見かけたのを手に入れたのである。
 
結構分厚い本なので、読み終えるのに時間がかかったが、一読、これは小説ではない(笑)。
実は著者自身が、あとがきで「小説と題するのは不見識」であり、展開に想像力が必要なのでやむなくとった方法だと記している。そして「啓蒙書」になれば、とある。
事実、著者は何者かわからないが、とても小説家、いや文筆を職としている人とは思えない。おそらく製紙業を管轄する(通産)官僚だろう。名前もペンネームだ。
 
 
内容は、森林メジャーズ(アメリカやカナダの巨大製紙会社&森林所有会社)が、木材資源(主に製紙チップ)の供給を牛耳る「陰謀」を延々と語っているだけで、たいしたストーリーはない。
 
ただ結果として、日本は為す術がないのだ。日本の製紙業は、多くが北米産チップに依存しており、価格をどんどん上げられたり輸出を絞られることで、ギブアップしてしまう。森林メジャーは世界中に手を延ばしているから、他者と取引を始めても、ほかの国に植林しても、環境保護運動に押されて身動きとれなくなってしまう。古紙利用率を高めるなどの手も限界に達する。(当時、国産材資源は底をついていて、はなから期待されていなかったよう。)
 
結果的にチップでなく、パルプ輸入や紙自体を海外に依存するようになるが、新聞や雑誌・書籍も、紙を牛耳られることでマスコミ支配を確立するのだ。
……そんな話をずっと書きつらねている。
 
正直、40年近く前の世界情勢でもあり、どこまで実際の動きだったのか、どこまで想像が入っているのか、よくわからない。ただ、かつての製紙業界の内実は伝わってくる。
 
 
さて、現在と比べると、どうだろう。少なくても現在の日本の製紙業界は、ここまで森林メジャーに牛耳られていないようだ。それどころか紙の需要が落ちて困っているはず。アメリカも、森林を保有管理しているのはREITなどファンドになってきた。
 
またマスコミが紙に支配される時代は終わりつつあり、テレビなど電波さえも黄昏ており、今やインターネットを通した電子メディアが席巻している。石油の値段も、本書にあるように上がりぱなしではなく、現在は暴落している。
 
それでも紙の重要性はまだまだ高い。森林=木材・チップ=紙資源・燃料に結びつき、それは世界経済を裏で支えている(だから森林を通じて世界を支配できる)という論理は、一理あるだろう。昔から木材は戦略物資であったし、今も決して無視できるわけではない。 
 
 
それとは別に、アメリカの森林業者の言葉として、「木を植えるのは、自分のためではなく、子供のためでもなく、孫のため」というのは唸る。長期戦略を持っている強みと言えようか。日本にそこまで言える林業家はどれほどいるだろうか。
 
 
製紙業界の勉強の第一歩としては、この本、なかなか役に立つ。
 
※著者の守山剛氏とは、元通産官僚の佐藤剛男氏(後、衆議院議員・故人)であることがわかった。
 
 
 
 

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