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森と林業の本

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2015/12/25

ふるさと納税とふるさと投資

今や「ふるさと納税」が大はやりだそうである。

もちろん、納税した先の特産物をもらえるからだろう。

 
私は、大嫌い!なので、絶対にふるさと納税することはないだろう。何がイヤって、これが各地の地域振興に役立つとは思えないうえ、ふるさとでもなく、とくに愛着のある地方でもない自治体に納税することは、税金の本義を狂わせる気がするのだ。
 
当初、単純に自分が納める住民税の一部を気に入った自治体に移す、というだけなら、さして気にならなかった。そういう手もありかな、と思っていた。が、今や納税してくれた人に御礼の品を出すのが当たり前になり、それを目当てにするようになっている。
 
考えてみれば、納税額は同じなのだから、それをどこの地域に振り分けても金額が膨れるわけではない。つまり納めるところがあれば、その分納税額が削られる自治体がある。これはゼロサムゲームである。
 
しかも、そこから御礼の品という名目で地元の名産品などが贈られるとなると、その分は目減りするわけだ(郵送料とともに)。地元の産品をつくっている業者は儲かるかもしれないが、それは地域づくりとは少し違う。行政に買い上げてもらうのは公共事業のようなものだ。波及効果が薄いだけでなく、本当の消費者に顔を向けた商品づくりではなくなる。ようは、自治体の担当者を口説けばよいことになる。
 
地域づくりでは、地域の生産量(額)・純収益を増やす方向に誘導しなければならない。ふるさと納税にそうした効果は薄い。住民でもなく、地域の純粋なファンでもない人から税金を多く集める自治体は、長い眼で見れば衰退するのではないか。
 
 
さて、一方であまり知られていないものに「ふるさと投資」がある。これは、地域創生につながる事業に小口で投資してもらうものだ。いわばクラウドファンディングの一種だろう。
 
これは、あくまで事業への投資だ。株式投資と同じく、その事業を動かす資金の提供であり、事業の結果に対する配当がある。決して納税とか寄付金のようにお金を出したまま、というのではない。
 
私は、こちらの方が健全だと思う。事業が成功すれば収益を産み、地域の生産額(量)を増やすわけで、地域起こしに寄与するはずだ。
 
ふるさと納税による見返りと投資に対する配当は、金を払う人からすれば同じようであっても、意味が違う。
調べてみると(セキュリテという会社がやっているみたい)、お酒とか地元の特産品の生産のほか、太陽光発電所づくりとか、新しい交通インフラづくり、そして新しい商品開発の資金などもある。
 
正直、私の眼からするとくだらないものもあり(^^;)、すべて推薦できるものではないが、ともあれ事業として利益を生み出すことを一義に置いていることからは納得できた。
 
ただ、さらによく見ると、(クラウドファンディング全般にも言えるが)まともな配当でないものも多い。記念品レベルのものを渡すだけという投資もあるようだ。これって、投資じゃない。単に寄付金を集めるのと同じになってしまう。悪どい人がやれば、持ち逃げもできる。(ウケのよい事業を提案してお金を集め、記念品だけ配って事業を行わずに逃げてもバレないかもしれない。)
 
本来は、生み出した利益の中から配当すべきなのだ。そして成功すれは配当は大きく、失敗したら配当はなくなる形式であるべきだろう。
配当は、何も金銭だけではなくてもよい。出資者の満足感に訴えるものもありえる。たとえば地域の山林や土地の利用権を何年間進呈とか、事業でつくるものの命名権を与える、記念碑に名を刻むぐらいのことがあってもよい。
出資側も、その事業が成功するか否かを吟味し、成功の暁には株主になるぐらいの気合を持つべきではないか。
 
 
改めて思うのは……「もっと、真面目に地域づくりしようよ」である。
知恵を絞って、本当に地元に利益を生み出すようなシステム設計にしないと、目先の金のバラマキでは、返って衰退を助長するだろう。

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コメント

「ふるさと投資」とは違った取り組みを検討中です。
「ふるさと投資」は都市部の人たちが地方の事業に対し金銭を投資するものですが、検討している「投資」は放置された林業地の利用権を投資してもらおうとするものです。
一集落に隣接する放置された林業地をすべて投資してもらうことで、何らかの方法で利益を生み出す手段を作り、配当は優れた林業地として生まれ変わることです。
林業地を一体として施業できることからコストを削減し、利用価値の乏しい間伐により生産される小径材から新たな付加価値を生み出し事業を持続可能なものとする。それを目標としています。
付加価値をどのように作り出すかは、こちらの努力で解決することですが、はたして林業地の所有者が投資するのかが課題として残ります。

なるほど、山主に手入れをしていない山林そのものを「投資」させるわけですか。もし賛同してもらえば面白いですね。
ただ、放棄しているとはいえ、勝手に丸刈りされて今より酷くなった、と言われないように、付加価値のつけ方に条件をつけて提示しないと信用されないと思います。
 
むしろ「ふるさと投資」に放棄山林を出展して、世間から金を集めることはできないでしょうか。その一部を山主に還元して、山をきれいにしたところを見せることで出資者に満足してもらう。(限定利用権を与える。)……そんな仕組みづくりも考えられます。

限定利用権を配当とする考えは持っています。
しかし、あくまでも元本を保てることができなければなりません。
国有林の事業のように元本割れをして無責任を決め込むようであってはだめですので、確実なものとならない限り、金銭の投資は求めません。
それでは規模の拡大は望めないことは当然承知していて、あくまでも一集落単位で取り組もうという事業です。
それでは信用されないので手を挙げるところがないかもしれません。そうであれば仕方のないことです。地元にやる気がないところでは何もできないと思っていますから。

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