BSプレミアムでフランスの自然の中をトレッキングする番組を見た。
NHKの女子アナが、フランス南部のヴェルドン渓谷を約1週間かけて旅するもの。ガイドには、地元の19歳の女子大生。彼女は日本のアニメオタクで、日本語がペラペラなのには恐れ入った。
そこで描かれるフランスの自然、とくに森の中を抜ける景色に見入ってしまった。全体に地中海気候ぽい乾燥した広葉樹林なのだが、明るくて、見通しもよい。こんな景観は日本ではほとんどないからうらやましくなる。
そこでは「フランスには、木漏れ日という言葉はない」なんて会話も交わされる。さまざまな光と影が描き出す光景を表わすフランス語はないのだそうだ。このれほど光にあふれ、印象派の絵画も生み出した国(地域)なのに?
もっとも、その中ではツゲの木が多く、それを木工品を作っている村が登場する。人口100人以下の村が点在しているのだ。
実は、少し前からフランスの林業が気になっている。フランスでは、どんな林業をやっているのだろう。広葉樹林業が盛んだと聞く。広葉樹だけで木材生産をしているわけではないだろうが、どのような産業構造で、森づくりから木材生産までのシステムはどうなっているのか。
伝え聞くのは、長伐期・天然更新・小規模皆伐&択伐施業。そして主体は燃料(薪)林業。さまざまなキーワードが気にかかる。
林業と林学と言えばドイツ、と誰もが思っているだろうが、実は林学の誕生はフランスだ。ドイツは最初フランスから学んで発達させた。
また、江戸幕府は土壇場で開国して西洋の科学を輸入したが、林学ではフランスの文献が多かった。だから明治政府が引き継いだ林学⇒林業政策は、フランスの林学理論だった。その後ドイツからの留学生が帰国し始めて、ドイツ式に転換していく。
そうした点も含めて、フランスの林業に興味を持ったのである。
そして、ドイツ式が行き詰まり? 広葉樹林業に眼を向けられてきた今、フランス式をもう一度見直してもいいと思う。

フランスの里山

ツゲ細工を行う女性。
どこかに文献ないかなあ。ただし、日本語で読めること(~_~;)。
いつも勉強させていただいてます。
さて、今回の記事を拝読致しまして、以前に読んだ論文を思い出しました。
▶︎大田伊久雄「フランスにおける森林・林業政策の現状と方向性」『林業經濟』 56(8), 1-17, 2003-11-20
林業を学ぶ中で、海外と言えばドイツ、というところが多分にありましたので、この論文を読んだ時は大変新鮮で「フランスの林業興味深い!」と印象的でした。
ciniiあたりでオープンアクセスで、もちろん日本語で・・・いかがでしょう?!^__^
投稿: | 2016/01/29 21:40
ありがとうございます。
大田氏には一度会ったことがあったかな? フランスの林業事情にも詳しいのですね。あっ、でも10年前か(^^;)。
まずは読んでみたいと思います。
投稿: 田中淳夫 | 2016/01/29 23:28
伐採に伐採を重ねて切り開いてきた、今でいうアマゾン開拓みたいな環境破壊で出来た国がフランスです。
フランスはガリアと呼ばれていた古代ローマの時代は大密林の土地でレバノン杉と並ぶ一大産地だったのはあまり知られてませんね。
こうした背景から森林や林業についての考察や探究がフランスで発達したのは不思議ではないと思います。
あとかつてかの有名なカエサルがガリア戦争で戦った森の民達の文化は今も継承されてるのかは気になりますね。
投稿: ぽぽ | 2016/02/24 19:04
ヨーロッパも有史前は森に覆われていたはずですからね。現在のドイツも含むフランク王国は、森の国、森の民だったわけで。
それが今はどうなっているか……いろいろな国の林業体系を検証する価値はあると思います。
投稿: 田中淳夫 | 2016/02/26 22:25
『広葉樹の国フランス 適地適木から自然林業へ』4月刊行です。ご期待ください!
投稿: 土井二郎 | 2024/02/16 15:45
ついにフランス林業の本が出ますか。
読ませてください(^_^)
投稿: 田中淳夫 | 2024/02/17 12:10