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森と林業の本

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2016/02/13

シーボルトとバードの「この国のかたち」

NHKスペシャルの「司馬遼太郎思索紀行 この国のかたち」を見ていた。

 
レポーター香川照之が長崎の出島(復原)を歩いていた。あれ、このシーン、私は見たぞ。生で。そうか、この番組の撮影だったんだ。
 
先日長崎を訪れた際、時間をつくって復原中の出島を見学したのだが、そこにテレビ局の撮影隊が入っていた。何かと面倒で、私が自由に見て歩けなくなってムカついていたのだが、そこに現れたのが香川照之であった。何かしゃべりながら通りを歩くシーンが撮影されていた。
私は、大人しく、2階の階段の陰から見ていたのだが(隠し撮りしたい誘惑に耐えた)、そのシーンがテレビで流れていたのであった。
 
2  出島の中のミニ出島。
その後のドラマ「逃げる女」も見たが、これもロケは、大半が長崎のよう。ちょっと長崎を振り返りたくなった。
 
 
私が出島を歩いていた時、頭の中にあったのはシーボルトである。フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト。出島のオランダ商館の医師として来日し、鳴滝塾を開いて多くの知識を日本人に伝えたことで有名だ。が、彼の正体は、スパイだった。……と言って語弊があるなら、諜報員とか日本の情報調査員。もっと端的に言えば日本探検家だった。
 
それこそ莫大な日本の資料を持ち出しているのである。彼が日本人に与えた以上に日本の情報を収集していた。それも、よく知られる動植物とか民俗的なものだけではない。シーボルト事件の発端となったのは日本地図だが、実は各地の軍事上の要地を実測している。関門海峡の水深まで計測していた。驚くのは、江戸城の設計図まで持ち出している! 
もちろん彼自身は、そんなに自由に国内を動けないから、日本人学者たちを手下として情報収集に勉めた。
 
シーボルトとは何者なのか? そして情報を提供した学者(政府の要人も含む)は、何を考えていたのか。
まさに私は、出島で「この国のかたち」を考えていたのだ。
 
 
そして先日もう一つ知った仰天情報。明治初年に日本を訪れたイサベラ・バード。彼女は当時の東北地方を旅して「日本奥地紀行」を記したことで知られる。ただ一般的には普通の女性の旅行者として紹介されてきた。
 
だが、違うのだ。彼女も日本をスパイしていた。スパイが語弊があるなら、諜報員とか情報調査員とか……日本探検家だったのだ。
 
そもそも彼女は単なる旅行者なんぞではない。すでにオーストラリア、ハワイ王国、ロッキー山脈など世界各地を歩いて詳細な記録を発表していたからジャーナリストとかルポライターと呼んでもよい。日本の後には、朝鮮や、マライ、ペルシャ……と秘境ばかりを探訪している。そして地誌や民族・民俗を調べて記録した。
 
問題の日本訪問は、イギリスのパークス公使の依頼によって訪れており、その旅の行程は、イギリス政府も関わって詳細に準備していたというのだ。 さらに日本政府要人・外務省もかかわり、積極的に許可を出している。
 
しかも驚いたのは、バードの目的地は、東北というより北海道であったし、その旅が終了後、すぐに関西から伊勢神宮まで訪ねている。伊勢神宮では正殿まで入っている! 日本人でも滅多に入れない場所である。
また奈良も足を踏み入れており、三輪大社や長谷寺も訪れた。どうやら神道を調べていたのである。
 
京都では新島襄と八重と会っていた。ここではキリスト教の布教について議論したようである。
 
 
シーボルトとバード。二人とも日本に西欧の知識を授けてくれたり、当時の風俗民俗の記録を取っていたことから「恩人」扱いされている。だが、彼らは与えるだけでなく、日本を調査していた。日本を探検していたのだ。
それに日本人も積極的に情報提供していたとは。当時の日本人には、知りたいという思いと、知ってくれという思いが交錯していたのだろうか。
 
そんなところから「この国のかたち」に思いを馳せてしまったのだ。
 
ついでに記すと、バードの北海道調査を手伝い、事前に現地の手配までしてくれた人の中に、オーストリア公使館のハインリッヒ・フォン・シーボルトがいる。彼こそ、フィリップ・シーボルトの次男(小シーボルト)である。シーボルトとバードが交わっていたのだ。
 
歴史とは、ときに偶然を装って粋なことをしてくれる。
 
 
 
……ところで、本日、なんとチョコレートが届きました!
 
048
 
皿うどんチョコレート……(@_@)。。。長崎、恐るべし。
 
 
 

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コメント

今でもスパイ衛星と地球観測衛星は基本的に同じですよね

日本の観測衛星も、実はスパイ機能を持っている、かもですね。

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