我が家の町のガソリン価格は、とうとう100円を切った。98円、99円のガソリンスタンドがいくつも登場している。
ガソリンがこれほど安くなったのは、世界的に原油価格が暴落しているからだ。数年前まで1ガロン100ドル前後に達していたのが、今や30ドルまで落ちている。そして、まだまだ下げ止まらない。アメリカのシェールオイルの登場や、中国経済の減速などで原油が市場にだぶついたことが理由とされている。
石油が安くなれば、日本経済に朗報だ、とつい最近まで言われていた。発電費、輸送費、暖房費、みんな安くなるからだ。石油の輸入費が日本の貿易収支を赤字にした元凶のようにも語られていた。しかし、今では原油の暴落が世界経済を悪化させて、それが日本の場合は株安・円高を引き起こしたと問題視する声が強まっている。
妙な話だが、簡単に言えば、産油国は世界中にオイルマネーを投資していたということだ。だが原油安は産油国の経済を傾かせ、投資していた金を引き揚げ始めた。それが世界経済を恐慌に落としている……と。
ならば産油国が団結して生産量を絞れば価格は上がるはず……だが、逆だ。価格が落ちたため収入が減った産油国は、量で減収分を穴埋めしようと増産しているのである。利益が半分になれば2倍生産して収入を維持する、という理屈だろうか。
加えて各国の内政事情も大きく影響する。ロシアなど史上最多の生産状態だ。
……さて、こんな状況を俯瞰して、「何か似ている」と感じたのは私だけだろうか。日本の木材事情と、である。
木材需要は減少し続ける中、政策的に伐採増を進めて、材価が暴落したら、より増産する。
将来の立派な森林より、明日の小さな利益を求めて、どんどん伐って、どんどん出す。すると市場でだぶつき、より価格は落ちて行く。
出てきた木材は、なんとか消費しなければならないから、燃やしてしまえとバイオマス発電を推進する。石炭石油などの発電と対抗させるため、木材は高く買い取る。その差額は、FITでユーザーの電気料金から取ればよいか。
幸い日本の林業界に、木材収入を投資に回す余裕はないから、ウッドマネーが日本経済を混乱させる要因にはならないが。。。(それが可能だったのは、戦後の一時期の吉野林業界だけだ。吉野マネーが証券界の投機筋に流れ込み、市場を振り回した。)
さて、行き着く先はどうなるだろうか。
私は、基本的に石油はもっと高くなれ、と思っている。その方が消費に慎重になって無駄が減る。それは地球環境にもよく作用するだろうし、科学技術も発展するだろう。そして産油国は、少量を高く売って利益を確保した方が資源を大切にするだろう。
同じことは、木材でも思っている。木材は高くなるべきだ。高付加価値の木材を少量売って利益を確保すべし。その方が森林も守られる。燃料にするため山から木を出すなんて馬鹿なこともしなくなるはず。ただし、材価が高いうちにもっと儲けようと増産したら馬鹿丸出しだけどね。
しかし、日本人(の林業家)だけでなく、世界中が目先の利益しか考えずに動くことを証明したからなあ。高付加価値少量戦略は、期待できないか。
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