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2016/03/31

ロングテール本の憂鬱

ロングテール 」と呼ばれるビジネスモデルを知っているだろうか。

ものすごく乱暴に説明すれば、多種多様な商品を備えて長く売り続けることによって、一つ一つの販売量は小さくても全体として大きな売上につながる。時間軸を横にしたグラフにすると、長い尾に見える。……理論だ。
主にインターネット世界のビジネスモデルになっている。なぜならネット空間は、事実上無限に商品数を増やしても陳列できるからだ。(ウィキペディアにリンクしました)
 

ちなみに反対は、発売後直後は大量に売れて、すぐに尻すぼみになる一過性商品だろう。こちらのビジネスモデルとしては、発売初期に話題に乗って大量に売った後に、在庫は持たずに(売れ残った分は処分する)次の新商品に移る戦略となる。

私の執筆する書籍などは、ネットとは関係なくロングテールだと思っている。あまり流行に左右されないテーマを執筆しているからだ。また売れるのは、ロングテールの見本であるAmazonなどネット書店が多い。

その傾向がわかりやすいのは、私の書いたYahoo!ニュースの記事だろう。アクセス数は、アップ直後だけでなく意外と昔のものが上位に来ている。今でも1年前2年前に執筆した「吉野杉のおすぎを買った女」とか、「ゴルフ場の2015年問題」「カツオ節」などがランキングに登場するのだ。

その代わりと言ってはナンだが、いきなり爆発的に売れることは少ない。

だが、実際の出版業界は、インターネットの普及に反してロングテールを切り捨てる方向に動いているのではないか。版元は、出版した本を長く売ろうとしなくなってきた。多種類の本を出版して、1年2年で販売を中止する。本が残っていても絶版にしてしまう。在庫費用を惜しむのだ。いわばベストセラー狙い。手間隙かけたロングセラー、ロングテール狙いをしなくなったと感じる。

……そうした風潮の中では、私の本は極めて不利だ(;_;)。
もともと森林をテーマにした一般ノンフィクションの分野でベストセラーになることは厳しく、狙いはロングセラーであるが、販売期間がロングになる本ほど嫌がられる。しかも発行部数が削られると、中小の書店に配本されなくなる。時間が経つと、棚に並ばないどころか版元の倉庫からも消されるから、注文があっても出荷されない。
 
 
書店や取次会社の廃業ニュースが続いている。2015年の売上は、対前年比で5%減。10年余で、雑誌の市場は半減している。書籍も1点当たりの部数は落ちるばかり。時折少数のベストセラー本が底上げしている程度だ。書店数も、全国で4000店を割ったそうだ。2000年頃は1万3000店以上あったというから3分の1に……。
どうやら棚の少ない中小の書店が淘汰されているようだ。出版はロングテール商品であるのに、現場が対応できていないのではないか……。
 

この状況は、林業界とよく似ていることに気づいた。
 
木材需要は、総体として縮んでいるが、売れ筋は多様な商品アイテムが求められている。ところが日本の木材加工生産現場は、画一化が進む。より売れなくしているかのようだ。
 
一方で多様な商品に対応しているのが外材。構造材に内装、外装、家具、グッズ類までなんでもあります、というわけだ。しかも電話一本で受注して期日までに届けます。国産材みたいに柱しかありません、特注したら何か月もかかるよ、価格もいくらになるかわかりません……などとグダグダ言わない。手形も切れる。
 
……なんだかクリックするだけで、10年前に出版された本も翌日には送料無料で宅配します、支払いはクレジットの自動引き落としね、というAmazonと似ているではないか。黙っていても画面でうるさいほど営業かけてくるし(^^;)。
 
外材=Amazon論、国産材と日本の出版界が衰退する理由。どうかな。
 
 
問題は、外材の産地は海外であり、世界中から望む質の木材を集めることができるのに対して、私の本はやっぱり国産なのである……。
生産元がロングセラー狙いの生産(出版)をしてくれず、また在庫をなくしてしまったら、せっかくのロングテールを実現しているネット書店も機能しないのだ。
 
 
さて、明日から2016年度。いかなる戦略を持って生きていくかなあ。

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コメント

英語/日本語以外で本を書く、もしくは翻訳する/してもらう。
台湾で「台湾の電力を初めて作った人」の本が売れるのでは?

海外市場。私のこれまでの本は、基本「日本の森」を対象にしてきたからなあ。ちょっと対象を広げようか。
たしかに土倉龍次郎の本は、台湾向きかも。創成期の台湾社会を描くには向いている。

ほかに「樹木葬」は世界に通用しないか?

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