そろそろ春の気配も深まって、ミツバチが飛ぶ頃だな、と思う。
生駒の養蜂家を訪ねると、すでにポリネーション(交配)のため、イチゴ農家などにハチの巣箱を貸し出しているそうだ。
もう少しで花が咲きだし、いよいよ採蜜が始まるはずだ。
さて秩父で聞き及んだ話の一つに、「第3のみつ」「第3のはちみつ」がある。
ミツバチによってえられる恵みのハチミツの第三の形態なんだそうだ。
正確には、国際規格で「ハチミツ」を次のように定義されている。
まず植物の花の蜜をミツバチが集めた「花はちみつ」。
次に植物の汁液を昆虫が吸って、それを排泄した形でえられる「甘露はちみつ」。アブラムシの出す蜜なんかを想像するとわかりやすいだろうか。
ところが、これらの定義に当てはまらない蜜、ハチミツを開発したというのだ。
それはミツバチに樹液や果物の果汁を吸わせて蜜として吐き出したものである。
もともとミツバチを飼っていると、花の蜜のない冬などは、粗製砂糖を与えて命をつなぎつつ、春に向けて数を増やすのが養蜂家の仕事である。
つまり樹液や果汁などの糖分を含むものもミツバチは好む。そしてミツバチの体内に入ったそれらの汁は、吐き出す際にはハチミツのような成分になるわけだ。しかし元が花蜜ではなく、排泄でもないわけで、国際規格のハチミツには当てはまらない。そこで「第3のみつ」なんだそうだ。
花蜜を集めさせるのと違って、ミツバチに果汁などを与えるのは簡単で量もたっぷりだ。生産そのものは簡単になるかもしれないし、量も増えるだろう。すでにカエデの樹液のほか、リンゴやバナナを与えているらしい。
ちなみに商品名は「秘蜜」だそうで……。
これはカエデの樹液にミツバチが集まるのにヒントを得て生み出したものだそうだが、その開発秘話?に関しては、
を読んでくれ。ようするに秩父農工科学高校と埼玉大学と、秩父百年の森の会……などが合同で取り組み,、そこにUターンしたマーケティングや販促のプロの女性が取り組んだものなのだ。
これを秩父の森では生産し始めている。
すでに商品にもなっているというが、私が買いに行ったところ、すでに扱っていなかった。そのため味わえなかったのだが、新商品開発としては画期的だろう。
もともと養蜂も、林業の一部なのである。中世のフランスには、「養蜂官」という役職があって、森からハチミツを採集するのが仕事だった。そのハチミツこそが、森の価値とされた。木材ではなかったのだ。
考えてみれば、養蜂は、古代より基本的にあまり技術的な進歩はないから、こうした新技術の開発の可能性はたくさんあるかもしれない。
実は、秩父の樹液生産組合で驚いたのは、こうした開発意欲である。
写真は、カエデの幹内の温度を計測しているものである。
手にしているのは、気温と土中温度と、樹内温度の計測結果をグラフにしたもの。これで、どんな季節のどんな条件の際にどんな樹液がよく出るのか……等々を調べているのだという。
テキトーに樹液を採取しているのではなかった。
もちろん、まだまだ軌道に乗るまでの行く手は厳しいだろうから、すぐにビジネスになるかどうかはわからない。ハチミツとの差別化も課題だ。それはカエデ樹液の商品群と同じだろう。しかし林業の多角化という点からは、一考に値する。
銀座はちみつが評判を呼んだように、ハチミツには人々を魅了する力がある。変わった蜜、というだけでなく、ドラマを売らないとね。
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