昨夜は、NHKスペシャル「若沖」を楽しみにしていた。
若沖とは、江戸時代中期に現れた天才画家で……という手垢の染みた表現ではわからないような絵を書いた画家である。その動植物の凄まじさは、いまだに追いつく画家なし、とさえいえるほどなのだが……それはよい。
が、始まると、目が点に。なんじゃあ? このナレーション。棒読み? なんの感情も入らない子供染みた声とイントネーション。
愕然とした。誰だ、これは。誰の声じゃ。思わずスマホで検索。ん? ファッションモデル?20歳? いや女優でもあるらしいのだが、おそらく若沖について何の興味もないのか、そもそもナレーションの意味がわかっていないのか……新人アナでも、もう少しマシだろう。
ああ、思い出すと興奮、いや血が頭に上る(笑)。ま、その当たりはネットの上でも同評価のようで、阿鼻叫喚、すさまじい悲鳴と罵倒が錯綜しているから、検索してみるとよい(^^;)。これを読むだけで面白い。
おかげで音声消して字幕で見る始末で、あまり集中できなかったのだが、番組では超高感度カメラで撮影して分析している。それこそキャンバスの布の繊維までわかるぼと拡大したりレントゲン撮影で顔料や重ね塗りの技法を調査していた。それはそれで興味深い。
ただ番組後半で、若沖の描いた天井画が登場した。その多くは色が落ちているのだが、京都の某寺では奇跡的に残っていたという。観光客を受け入れず、ほとんど本堂が閉めっきりだったらしい。
木板の上に顔料で描かれた絵というのは、わりと消えにくいようだが。
それで思い出したのだ。この前、何気なく訪ねた奈良のお寺を。
奈良市の蓮長寺である。寺歴はそうとう古いが、本堂は火事で焼けて江戸時代初期の再建。その天井に、すごい絵が描かれていた。

この本堂は重要文化財。
本堂の外陣の天井に、長さ20メートルくらいの巨大絵が描かれている。どうやら天女が待っているようであるが、消えかけていてよく見えない。

ほんの一部
外陣だけでなく、なんでも内陣も脇陣にも、極彩色の天井画があるそう。しかし、この外陣は吹きさらしなのである。外気に直接触れる。雨風も吹き込むだろう。
だから色は落ちて剥げかかっているのだが、あえてそのままらしい。外気に触れることを前提に描いたのだから。
もったいない……と思うのは素人なんだろうか。
それはともかく、若沖は、改めて画集を眺めて満足しておこう。
コメント