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2016/05/26

「大林業」から「林業分割」へ

ちょっと思考メモ。

 
以前私は、「大林業」構想を展開したことがある。それは、『森林異変』にも記したのだが、林業を「木を植えて、育てて、伐採して……」という山の仕事と小さく見るから上手く経営できないのではないか、という理論だった。
 
林業とは、森づくり-木材生産-木材流通-一次加工(製材)-二次加工(建築、木工など)と全体を通して経営しないと、いつまで経っても経営が安定しないし、川下の利益を川上に還元できない。
だから全体をまとめた「大林業」を打ち立てる。昨今では六次産業化などとも言われているが、全体で利益を生んで適性分配するシステムをつくれないか……という発想だ。
 
 
だが、このところ、それとはまったく別のモデルを考え始めた。
むしろ林業を分割して考える。
 
まず森づくり業。植えて育てるまで。せいぜい伐採まで。
次に木材生産業。伐採から造材、搬出・流通、製材まで。
そして木材利用業。製材品を加工して建築や家具など最終商品に仕上げる。
最後に、木質リサイクル業。山に残された残材のほか、廃棄された木材製品をチップやボード、土壌、そして燃料としてリサイクルする。
 
これらは、一体として経営する点では「大林業」的だが、経営主体は違う。というか、一緒にはできない。なぜなら、人間の才能の問題だ。
 
森づくりが得意(好き、熱心)な篤林家は、伐採や造材、搬出が必ずしも上手いわけではなく、ましてや製材はわからない。わからないというのは技術としてできないというのではなく、売れ筋を調べて、臨機応変に造材したり、高く買い取ってくれる先を見つけて販売ルートを変える……ということが苦手だろう、という意味だ。
 
そこで木材生産のプロが別に必要なのではないか。
 
最終商品は、工務店(大工)による建築や職人による家具、グッズ類。それにリサイクル木材商品である。
この最終商品の生産者と山元(森づくり業)を結びつけるのが、木材生産業の役割とする。ここで適正な使い道を探って割り振りする木材の商社的な役割を果たすから、木材配分業とか木材調整業の方がいいか。
 
このように考えると、適性人材について考えやすくなる。
 
森づくりは好き(得意)だけど、伐採は苦手とか、伐採はできるけど、売れ筋探って造材寸法を考えるなんてわからん。逆に伐採とか搬出のようなガテン系の仕事は好きだけど、植林なんて仕事は辛気臭い……と思っている人もいるのではないか。建てた家の廃棄とリサイクルまで考えて森を育てる人もいないと思う。
 
もちろん一人(山主)が、全部できたらいいのだ。森づくりも伐採も造材も、その後の木材商品販売ルートもみんな把握して差配できるのなら、すべて一人で完結する。
しかし、そんなスーパー山主は極めて少数だろう。
 
やはり仕事の分担をしなければならない。その区分法を考えたのである。結果的に、川上の森づくりと川下の建築・木工業は職人的な世界であり、間に入る木材生産業はコーディネイトを担う。
 
 
Photo
 
たまたま今年の森林・林業白書にあったイメージ図。これは森づくり業と木材生産を分離せず、全部川上にまとめているが、木材産業の位置づけは私の発想と似ている。

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コメント

山ばかりで平地が少なく、そして雨が多い。木が育ちやすいというよりか植物が育ちやすい。
そんなところでは林業を産業とすることが一番に考えなければならないと思っています。
しかし、林業はもはや消えゆく産業です。
林業先進国とこの国とどこが違うといえば、それは国自体というしかありません。何度も失敗を繰り返す行政に反省はなく、ただ前年の焼き直しとその時のトレンドを盛り込むだけの繰り返し。もはや林業が基幹産業として機能することはこの国では永遠にないと思えます。国全体としての林業を考えることはもう意味はないと思われます。
今考えられることは一事業者がどう生き残り少しでも発展する道を模索することしかありません。
今回のブログの記事は何かむなしさを感じています。


林政のことはさておき(というか、国など当てにせず)、事業者が自らの生き残りを考える際、自分の能力を顧みてもっとも得意分野は何か、苦手分野は何かを把握すべきです。
そして利益を上げて、森づくりを継続できる経営に持っていく必要があります。
 
もっとも高く木材を売る造材を自分ができるというのならそれに取り組めばいいし、なければその分野のプロに期待すべきですね。

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