ニホンオオカミと言えば、ロマン漂う幻の動物である。
今も生息を信じている人もいるほどだが、一般には1905年に奈良県の現・東吉野村で捕獲された個体が最後とされている。
アメリカ人のマルコムらの一行が日本の動物調査に来て、東吉野村鷲家口で猟師の捕獲したニホンオオカミを8円50銭で買い求めた記録が最後だからだ。
その個体は、毛皮をロンドンの自然史博物館に納められている。
剥製というより毛皮の状態。
一方で、東吉野村は、ニホンオオカミ終焉の地というのが観光的には売り文句であり、銅像もつくってある。
ところが……なんと東吉野村の捕獲から5年後、福井県でニホンオオカミらしき個体が捕まえられていたらしい。
それを示す写真などの展示が、福井県立図書館で行われているそうだ。
そこで興味を持って調べてみると……
……といった記事が。
簡単に記すと、1910年8月3日、福井市の福井城内の松平試農場に、オオカミとよく似た動物が現れたところ、助手らが捕殺したというのだ。
ただ、当時は、同県内で巡回動物園から逃げていたチョウセンオオカミだろう、ということで納まったらしい。
しかし、最近になって詳しく検討すると、この動物の体重が約18・75キロとかなりこぶりで、、巡回動物園の職員が、逃げたオオカミではないと確認しているというのだ。
そこで残された写真から、
〈1〉尾の先端が切断されたように丸い
〈2〉前脚や後脚が体長に比べ相対的に短い
〈3〉体重が軽く、小型
――などの特徴からニホンオオカミと断定した。
なかなか面白い。が、同時期にチョウセンオオカミが逃げ出していたというのは偶然にしては出来すぎだし、体重が軽いのは飢えていたのかもしれないし(実際、写真を見ると、ガリガリだ)、果たして写真だけで脚の長さなどが十分に鑑定できるのか疑問だ。
鑑定したのが、今泉吉典氏(元国立科学博物館研究部長)であることも、ちょっと……(^o^)。
彼はニホンオオカミの研究で知られるんだけど、秩父や大分などで「ニホンオオカミが生きていた!」という情報が出る(長年、ニホンオオカミを探しているという人物によって報告。写真も撮っている)度に、「本物だ!」と鑑定していることを私は知っている(⌒ー⌒)。
しかし、その写真には首輪の痕みたいな毛の乱れがあるし、どうもシェパード的なイヌにしか見えないのである……。
それに今泉氏は、ニホンオオカミはタイリクオオカミとは違う独立した種だと唱えているが、どうもDNA解析では亜種だと落ち着いたらしい……。
それでも、この福井のオオカミは剥製にされたそうだから今も残っていたら重要な証拠となるのだが、1945年の福井空襲で焼失したという。
残念ですねえ。確実にニホンオオカミとなれば、絶滅時期が5年延びることになる。もっとも、「終焉の地」が変わるわけで、東吉野村としては由々しき事態だろう。
図書館の展示では11点の資料があるという。実際に見てみたいものである。
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