ある事象について確認したくて、オーク・ヴィレッジ代表の稲本正の本を開いた。
以前、読んだときに、今私が探している内容について触れていた記憶があるからである。
とはいえ、あまりに昔の記憶なので、本がどこにあるのか(タイトルも覚えていない)、ようやく見つけた本もどこに載っているのか(そもそも、その本で間違いないのか)、なかなかわからない。
結局、見つからなかった。。。
まあ、どうしても必要なことではなかったのだが……ただし、その過程でちょっと面白い記述を発見した。今回は、そちらを紹介しよう。
まず本は「森からの発想 サイエンスとアートをむすぶもの」
その序章にあった一節だ。
一昨年来日した西ドイツの林政学者、フレーザー教授も
「ドイツの古い様式をずいぶんしっかりと守っていらっしゃる」
と苦笑気味であった。聞けば山を皆伐し、杉なら杉の単層林をつくるというのは、ドイツでは過去の林業になっているそうで、また単層林は急峻な山の多い日本では向きそうもないとのことだ。
すでにドイツの林業は方針を大転換していたのだ。皆伐とか単一樹種の一斉造林はやっていなかった。これこそ今なら合自然林業、近自然林業と呼ぶものである。
ここで注目してほしいのは、フレーザー教授は西ドイツからやってきたこと。西ドイツ? と言っても、若い者はピンと来ないかもしれない。
ちなみに、この本の出版は1988年9月。そして序章は、「Asahi Journal」1988年1月29日号に掲載されたものだというから、執筆はおそらく前年1987年の年末。
その時点で、一昨年来日したということは、1985年と考えてよいのではないか。仮に掲載年を慮っていたとしても1986年だろう。
この頃、まだドイツは東西冷戦の真っ盛りで、再統一していないから西ドイツ、東ドイツに分かれていたというわけだ。(ベルリンの壁崩壊は1989年、統一は1990年)。
1985年に来日したドイツの学者に、日本の林業は時代遅れ……というより、戦前のドイツ林業のモノマネをまだ続けている、と指摘されたんだなあ。
それから30年以上経っても、まだ続けている(笑)。いや、笑い事ではないのだけど。
それにしても古い本をひっくり返すと、まったく目的外の発見があるものだ。
※目的としていた情報は、その後ネットで検索しまくって、なんとか発見しましたよ。
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