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2016/06/17

近代和紙はどこに

奈良国立博物館で、和紙展をしているので足を運んだ。
 
私は、昨年度和紙関係の仕事をしたこともあって、それなりに和紙には興味を持っているのだが、逆に言えば、もうたくさん、の気持ちもある。
それなのに今回なぜ出かけたかというと、副題の「近代和紙の誕生」に惹かれたのだ。
 
 
Img001_2
 
今、和紙と言ってすぐに頭に浮かび、また世間のイメージにあるのは伝統的な手漉き和紙だろう。
私は、こちらの世界には辟易しているのだが、実は調べている過程で「近代和紙」こそ、和紙の頂点であることに気づいたのだ。
 
近代和紙とは、明治以降に生まれたもの。大量生産が可能な木質パルプによる洋紙が入ってくる(そして国内でも生産が始まる)中で、和紙は負けずに技術を発展させ、紙の最高峰とも言える段階まで達したのだ。
 
それは単純に大判で漉いたり、機械漉きを行って大量生産できるようにしただけではない。
 
謄写版原紙やタイプライター原紙になる、チョー薄くて強靱な和紙を生み出したのだ。石綿を漉き込んだ「燃えない紙」も開発している。
そして国内外の博覧会に出展、高い評価を得るとともに海外輸出するようになる。日本の輸出産品の中で和紙というのは、意外と大きいのである。おかげで生産量も最大になるのだが……。
 
結局は洋紙の波に飲み込まれて姿を消していったのである。
 
 
まあ、そんなことから最後の徒花のように花開いた「近代和紙」には興味を持っていた。だから、この展覧会の開催には期待したわけだ。
 
 
……で、訪れた。
 
しかし、和紙展は一室だけであった。内容も……近代和紙を確立した土佐の吉井源太の功績を追うのはいいのだが、展示の貧弱なことよ。
 
だいたい、展示の過半が伝統和紙じゃないか。豊臣秀吉の朱印状なんか、なんで展示してるの? これ、近代和紙でもなんでもないでしょ。
さらに和紙の製作工程の説明も、完全に伝統和紙。手漉きの写真なんぞ見飽きた。どこが近代和紙と違うか説明しろ。
量産できたというのに、その資料もない。どれほと生産量が増したか、グラフくらいつくろうと思わなかったのか。輸出資料もないのか。
 
そして近代和紙の作り方もほとんど説明なし。でかい簀桁があるだけ。機械漉きの様子ぐらい展示しろよ。どのように薄いタイプライター原紙を漉けるようになったのか解説しろよ。単に職人の腕? それなら近代でもなんでもない。
 
また、どうせなら現代和紙として、木質パルプを加えた和紙づくりも紹介したらよいのに。
今出回っている和紙の多くは、パルプ入りである。
 
 
ちょっとタイトル倒れの和紙展であった。
 

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