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森と林業の本

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2016/07/21

「森が荒れる」とは

よく、「森が荒れる」という表現が登場する。私も頻繁に使っている(~_~;)。

 
とくに人工林は、放置すると「荒れる」「荒廃する」「劣化する」等々、さまざまに表現されるが、ようするに森林の状態が不健全だという意味だろう。
 
では、この森が「不健全」というのは、どんな状態を指すのだろうか。いや、その前に森が健全である、とはどんな状態か。
 
安易な言葉は、結果的に混乱を招いてしまう。
 
 
以前、出席したシンポジウムで、演者がその点を説明していた。もちろん研究者である。
 
●森が健全な状態。
・長寿の樹木が寿命をまっとうしている。
・多くの種類の樹木がまざって生育している。
・各樹種が、それぞれ上手く繁殖し、世代交代に成功している。
 
●森が不健全な状態。
・木が病気になって枯れる。
・何かの原因で種子が作れなくなっている。
・次世代の個体が育たない
・気候ほかの環境が変わって、木が調子よく生育できない。
 
 
このような条件を上げていた。細かく見ると、その言葉や表現はよろしくない(~_~;)とか思うところもあるが、まあ、大雑把に納得できる両状態だろう。
 
もっとも、ここに時間軸も入れなくてはならないから、定義付けは難しい。
一時的に病気が流行っても、種子ができなくても、稚樹が枯れても、長スパンで見れば、森林生態系としては折り込み済だったりする。現在は「森が不健全」でも、100年もすれば落ち着いた生態系になるんじゃない? と思ってしまう。
 
むしろ将来的に、森林が維持されているかどうかが、基準になるのではないか。このままだと森林そのものがなくなってしまう(途中の)状態が、もっとも不健全だろう。
 
 
結局、人間にとっての森林の状態が問われる。感覚的に美しいかそうでないか、有益かそうでないか。災害など、人間社会に悪影響を与えるかそうでないか。
 
008  
 
さて、どうだろう。
 

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コメント

日本のような気候条件で、森そのものが(開発以外の要因で)なくなるとは、どういうことだろう、と思うことはあります。長い目でみれば、「なくなる」ということは考えにくい、というのが正直なところ…。ご指摘のとおり、結局のところ、人間にとってどうか、ということだと思います。

植生の遷移で「極相」と呼ばれる最後に行きつく植生も、実は破壊されることを前提に存在しているんですね。ずっと同じ状態で安定し続けることは、自然界では有り得ない。
その一瞬を切り取ると、「森が荒れた」わけですが、実は遷移の一過程だと見ればいい。

おっしゃるとおりだと思います。この種の話題が、もっと盛り上がってほしいところ…。

まあ、この手の話題は哲学的になりますから、好まれません(笑)。

そのとおりでございます。

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