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2016/07/23

早生樹と物理法則

早生樹の植林研究会の勉強会に参加したのだが……。

 
ここで取り上げている早生樹は、センダン。センダン科の落葉広葉樹だが、12年で直径30センチ、20年で46センチ……という驚異的生長を誇る。
 
そんなに早く生長するのなら、材はスカスカ? と想像してしまうのだが、意外と重いのだ。
しかも硬い。なんと、杢らしきものが浮いている。
 
5
 
これで17年生の材だ。年輪幅がすごい。
 
4
 
Photo
 
厚さはこんなもんです。
 
 
ま、このように見せられると、実に有望じゃないか、と思わせる。この強度なら、建材にも家具材にも使えるだろう。独特の木目から造作材としても期待できる。
 
まあ、現実はいろいろ課題があって、すぐに展開できるわけではないのだが、育林技術を磨けば、今後は広がるかもしれない。
 
 
現在注目されている早生樹は、ほかにコウヨウザンやチャンチンモドキ、シラカバ……と、地域ごとにいろいろ研究されている。
 
ここで早生樹って何だ、と思ってしまったのだ。
個々の課題はともかく、なぜ早く育つのか。
 
それもキリのように育った材質が軽くて柔らかく、ようするにスカスカなのならわかるが、早く生長したのに硬い、重いとは……。
 
ここで植物生理的に考えると複雑難解になる。光合成におけるカルビン回路の効率がどうの、C3植物とC4植物の違いがどうの、根の張り方がどうの、菌根菌がどうの……という話になってしまう。
 
そこで物理的に考えた。
 
同じ時間で他の植物より早く生長して、材質も同じかそれ以上になるには。エネルギー不変の法則とかを思い起こせばいい。
 
 
おそらく同じ物量を早く生産するには、、日光から多くの光エネルギーを摂取して、同じく大量の水と栄養分を吸い上げ、酸素発生と炭水化物生成に費やすか。
 
つまり十分な日当たりと水量を要求するだろう。当然、土の中の養分も大量に消費するだろう。効率よく幹を育てるには、人の手も頻繁に加えて、無駄な生長(たとえば枝とか花や実にエネルギーを使う)を抑える必要があるのではないか。具体的には施肥とか枝打ち、間伐など細かな作業を行った方がいい。
 
つまり山に植えて、育林施業は数年に1回……という頻度では上手く育たない気がする。 
生長が早いのだから頻繁にチェックして、必要な世話~施肥、草刈り、枝打ち(芽かき)、間伐など~をすべきだろう。
 
 
とすると、これは林業というより農業だろう。里近くで多年生作物の農園のごとく果樹のごとく育てるのがいいのではないか……。
 
そしてめざすは、高付加価値だ。早く育つから量で勝負、合板用やバイオマス用に供給、と考えがちだが、頻繁な育林作業を行うのなら高コストになる。それに引き合う価格にしなけれはならない。
 
……と、まあ、そこまで連想したのだが。果たして早生樹植林は、今後の日本の林業を変えるだろうか。
 

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