先週末、奈良県森林総合監理士会が設立された。
奈良県をエリアとする森林総合監理士(いわゆる日本型フォレスター)の有志が相互に連携して活動を深めようという趣旨の任意団体を設立したのである。つまりフォレスター資格者の集まりである。
有資格者自らが自主的に結成したものとしては、おそらく全国初だ(、という声あり)。
私のところに来た案内には、
「田中様は、この日本型フォレスターとも言われる森林総合監理士の資格について、かなり、否定的なご意見をお持ちであることは十分承知させていただいております」
とあった。ならば乗り込まないわけにはいくまい( ̄^ ̄)。
一応、説明しておくと、別に全否定したわけではない。この資格がつくられる前にはいろいろ私も考えたり話を聞いて疑問を持ったりして、それを口にしたが、スタート時点に発表した記事の結びには「……期待と不安を持って見守りたい」と記したのである。
が、その後、ほとんど触れることはなくなった。なぜなら、動きが伝わって来ないから。何か、森林総合監理士が新たな活動をしたとか、プロジェクトをなし遂げたとか、逆に失敗したような情報があれば、いろいろ考えられる。しかし、何の情報もないのでは、私としても興味を失わざるを得ない。
ただ資格取得は当初公務員に限られていたが、近年民間でも取れるようになったとは聞くが、具体的に誰が取った、それで民間は何を始めたとは伝わってこない。
だいたいスタート時点では「日本型フォレスター」と呼んでいたのが、政権交代後には「森林総合監理士」となり、背景事情の根幹であったはずの森林・林業再生プランもなにやら消えてしまい……。これでは力も抜けようもんだ。
現状は、今のところ全国に717人の資格者がいて、毎年250~300人の合格者が出ているそうだ。つまり来年当たりに1000人の大台に乗る可能性が高い。
だから各地で協議会やネットワークづくりは行われている。北海道や秋田、岩手、山形、四国、九州などにあるという。ただこれらは、行政組織の一角に加わったようなもので、森林総合監理士の資格集団とはいいにくい。実際それらの組織の動きは目立たない。
さて、奈良県の会は、会員7人。県職員6人に森林管理署員1人だ。有資格者のうち、実質的に奈良で活動するだろう人は、ほぼ網羅しているらしい。
この人数だが、設立総会は、式次第に乗っ取って来賓挨拶に始まり、議長選出、規約決議、会員の所信表明となかなか仰々しい(~_~;)。最初は飲み屋で開こうか、との声もあったそうだが、あえて仰々しく進行することで 本気度を示したということである。
ちなみに今回の会の設立目的は、議案書にあったような仰々しいものはともかく、「林業を志す後輩に、森林総合管理士ってかっこいいなと思ってもらえるようにするのが最終目的」だそうである。
さて。現在の林政にフォレスター的役割の必要性は以前から言われ続け、ようやくできた資格である。それなのにスタートしたときから機能しているのかいないのか……。700人を超えているのにどこで何をやっているやら。
そんな状況に忸怩たる思いを持つ者は少なくないようだ。
現に昨年10月に、岐阜県高山市で開かれた「フォレスターギャザリング」には、50人を越す人が全国から参加した。こちらは森林総合監理士ばかりではないが、フォレスター的役割をこなしたいと思いつつ、思うに任せない状況の人々の意見交換会だった(と思う)。
折しも林野庁は森林法を改正して、森林の所有者や面積などの情報を一元化した「林地台帳」の整備に向けて動き出している。これには各分野網羅的な知識が必要となる。しかし肝心の市町村にそれをこなせる人材は少ないだろう。そう考えると、フォレスター的な人物の出番なのである。
とはいえ、資格は役職ではなく、なんら活動を担保するものではない。日常的には別の業務がある。当の本人たちが主体的に動かないと資格は有名無実化してしまうだろう。
なお奈良県は、昨年よりスイス林業に範をとった林業研修を進めており、かの地のフォレスター学校との提携も議題に上がっている。今月末からスイスに視察に行くという。スイス型のフォレスターの在り方を学び、取り入れようというわけだ。その点からは、グッドタイミングかもしれない。
所信表明にあったような個々人の森に対する熱い思いを大いに発揮して、いっそ全国画一的な森林総合監理士ではなく、「奈良型フォレスター」と呼ばれるほどの独自性を出してほしい(^o^)。そうしたら奈良にフォレスター学校が設立できるかもしれないよ。
私は、「期待と不安を持って見守りたい」v(^0^)。
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