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2016/08/06

方広寺大仏殿と善光寺如来

NHKの大河「真田丸」では、いよいよ秀吉が亡くなる回のようだが……。
その前に描かれていたのが名護屋城と伏見城建設と伏見大地震。
 
 
それで思いだしたのが、秀吉が築こうとした方広寺の大仏殿だ。
 
最初は信長を弔う天正寺として造営を始めたものの、その後場所を変えて、国家鎮護、王城鎮護のための「方広寺」として造営を進めた。(その後大政所が亡くなったので、豊臣家の菩提寺の役割も担う。方広は豊公の意味という説もある。) 実は伏見城築城と同時進行で、この大寺院建立計画が進んでいたのだ。
 
問題は、ここに奈良の東大寺より大きな大仏と大仏殿をつくろうとしたこと。ほかにも多くの建設計画があり、膨大な木材を必要とした。
 
そのための木材を全国から集めなければならない。それこそ畿内の紀伊半島、九州、四国、中国、信州、そして東北まで号令をかけて木材を集めさせた。各地の大名が競って?木材を運び出したのだ。
 
それが、その後の木材流通ルートの確立に大きな役割を果たす。とくに東北の秋田からは米代川を下り、日本海を南下して、瀬戸内、大阪湾、京都……という後の北前船の大輸送網の先鞭を付けた。
もちろん、各国の大名もそれを機に森林開発を進めることにもなる。林業は、木材搬出と輸送が要なのだから。
 
と考えれば、方広寺こそが日本の林業と木材流通の基礎を築いたとも言えるかもしれない。
 
 
ところが大仏開眼供養を予定されていた1カ月前に伏見大地震に襲われる。伏見城は倒壊し、方広寺も大仏殿はかろうじて残ったものの、建設中の大仏は崩壊してしまった。
そこで秀吉は、意外なことを言い出す。
「夢に善光寺の如来が一週間続けで現れた。善光寺如来が京の阿弥陀ヶ峰の麓に鎮座したいと告げた」。
 
そこで善光寺如来を方広寺の本尊にすることになったのだ。
しかし、大仏殿の巨大な空間に一尺五寸の善光寺如来を安置するのだよ。奇想天外な目論見ですなあ。
結局、秀吉が病に倒れ、その死の直前に善光寺如来は信州に帰されたとか。秀吉の病は「善光寺如来の祟り」と思われたからかもしれない。
 
ただ信州の善光寺というけれど、これまでも武田信玄と上杉謙信が奪い合い、また信長も動かそうとしている。だから当時の本尊は甲府にあったわけで、権力者が動かすこと自体は珍しくないのかもしれない。ちなみに後に家康も動かしている。
 
 
ともあれ、日本の林業と全国規模の木材流通ルートを生み出したのが方広寺大仏殿がきっかけだったというのは、オモシロイ。
 
ところで東大寺の大仏・大仏殿だが、この当時は、松永弾正が焼いてしまったために、大仏殿はなくて大仏も頭が落ちていた。応急に木製の仮の頭を乗せていたそうである。
そこに秀吉の大仏が計画どおりに完成していたら評判を呼んだだろう。そして今も存在したら、東大寺の大仏は、少し影が薄くなったかもしれない。奈良県民としては、そうならずによかったよかった(笑)。
 
もっとも、こうした木材の全国流通ルートが日本の山をはげ山にしていくという副作用も引き起こすのだが。 

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