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2016/09/08

ドイツ林業はいつ全土に広がったか

今、書籍の企画書を作っている。

 
というと、早くも来週発行の『森は怪しいワンダーランド』の次の作品を準備している! と感激される?呆れられる? かもしれないが、実は私の本ではない。
 
某者から持ち込まれた企画だ。この出版不況の時代でも、本を出版したいという希望は存外強くて、私のところには幾つも企画が持ち込まれている。私の仕事になるわけでもなく、特にメリットもないのだが、つい引き受けてしまうのが私の甘いところ(~_~;)。
 
で、その一つの梗概というか、コンセプトが届いたので、それを出版企画になるようまとめ直しているところだ。……仲介料も出ないのに。。。ヒマでもないのに。。。私の本も買ってくれないのに。。。(愚痴ばっか)
 
 
が、面白いのだ。その内容がとてつもなく面白い。そしてタメになる。
 
テーマは、大雑把に言って「ドイツ人と森」なのだが、梗概を読むだけで勉強になる。その中の一部分を、ほんの少し、紹介しよう。ほんの少し、だよ。
 
 
まず、ドイツは北と南、同じ国ではない。一般に日本人はドイツと言えばプロイセンの世界を連想するが、それは北の世界だ。(そもそも、かつてのプロイセン領の大半は、現在のポーランドである。)
プロイセンは軍隊国家で林業組織もその一部。一方で南の国は、ラテン系に似た世界。
そして、ドイツ林学が誕生したのは南の国なのだ。
 
まずターラントで生れた。とりあえずターラント林学と呼ぶが、一斉造林・一斉伐採(主伐)を基本とした画一的林業理論である。一世風靡し世界に広がった(もちろん日本にも)が、これは林学としては過度期のものだった。
やがて、ミュンヘン大学で新しい林学が花咲いた。これをミュンヘン林学と呼ぶ。これこそ「本格的ドイツ林学」なのである。現在に続く近自然林業の礎となる。
 
面白いのは、ミュンヘン林学はスイスへと広がることだ。そしてスイス林業は、世界一と言われるほどに発展・実践に移される。北の国には広がらなかった。
 
もちろん例外はあって、北ドイツでもプロイセン人であるザーリッシュの森林美学や、メーラーの恒続林思想のようなミュンヘン林学の発展形は登場したりはするが……。根付くことはなく、いつしか消えてしまうのである。
 
 
現在、ドイツ林学に北も南もないが、北ドイツにミュンヘン林学=近自然林業が採用されるのは、なんと第2次世界大戦後らしい。メーラー後、断絶があるのだ。その溝を超えて再び採用されるには、いかなる事情があったのか……。   
 
 
ドイツの林学の系譜、ひいては森林史を追うと、人と森の思想史が浮かぶように感じた。
 
翻って、同じ戦後を歩んだ日本は、林学も林業も何も変えようとしなかった。明治以来100年以上「過度期の林業」「ドイツでは捨てられた林業」を守り続けているのはなぜだろう。森に真剣に向き合おうとしなかった心の問題かもしれない。      
 
 
さて、こんな本を出版したいと思う出版社はどこぞにないか。
今なら、斡旋するよ。早いもの勝ち。仲介料は取らないから(笑)。 

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