朝日新聞に月に一度の日曜日「GLOBE」というタブロイド版の別刷がある。新聞内月刊誌(紙)という位置づけ?で、全20ページの、全体として硬派な記事を載せている。
新聞本紙と抱き合わせないと、硬派雑誌は売れないからなあ……という雑感はともかく、9月4日の特集は「森の活かし方」だ。
表紙込みで6ページを割いていて、海外の話題も豊富。アメリカ、韓国、スペイン、ドイツ、コスタリカ、、そして日本と登場する。
実はこの特集に、私は企画段階から絡んでいて、日本の状況に関してはコメントを寄せている。
私の紹介が「『森林異変』などの著書がある……」と古い本になっているのは、単に字数の問題(笑)。『樹木葬という選択』は林業から少し離れるし、『森と日本人の1500年』では長すぎて納まらないというわけ。
林野庁のコメントは相変わらず「日本の森は宝の山」路線。それを活かすためには木を安く出すこと、だから道づくりと機械化で……とある。
道づくりや機械化(1台数千万円以上)には莫大なコストがかかるが、それをカバーする労働生産性って何よ、と思う。補助金で賄うのが前提ならば、産業としては●×○△■だわなあ(自粛)。それに燃料代やメンテ費用は、さすがに林業家負担だろうが、それと材価と突き合わせて、ちゃんとペイしている? 植林からのトータルで林業経営は成り立っている? これでも宝なの? ……なんて次々と浮かぶ。
とりあえず生産性より利益率、利潤総額で計算してくれ。林業はビジネスなのだから、重要なのは金だろ、金。
とまあ、毒づくのも飽きたので、別の思いを。
この「GLOBE」の企画・取材の進め方を見て、うらやましく思ったのだ。何がって、潤沢な取材費が。企画段階で全国を飛び歩き(生駒まで来たよ)、さらに世界各国を取材に回れる。期間も約2カ月かけている。
フリーの私には望むべくもない条件だ。
たとえば上記の記事は韓国の森林政策を紹介しているが、これ、私が取材に行きたかったネタだよ。
韓国の山林庁は、胎教から森のようちえん、森林療法、そして樹木葬までを「山林福祉」と名付けて、森林と国民の関わり方のグランドデザインを作っている。木材生産を重視していない点はどうかと思うが、少なくてもめざすべき方向性は読み取れる。
個別のネタは日本やドイツの事例を参考にしているのだが、「森の活かし方」全体像としては日本より進んでいるのではないか……そう感じて以前から関心があったのだ。
残念ながら私を取り巻く状況は、海外取材に行けないどころではない。最近は取材経費を出さない原稿依頼が増えているし、さらに原稿料自体の値下げが続く。以前の半分だったりする。マジに取材すれば、経費が原稿料を上回る状況が起きているのだ。
かといって、どこぞをヨイショして仕事を増やそうとも思わないし。。。。
頼みの綱の本も売れない時代。(出版界全体が売上を毎年5%ずつ落としている)
これで、どうやって食っているのか自分でも疑問だ(~_~;)。林野庁の主張を真似て「低コスト施業」にするか。。。(それって、取材の質を落とすということ?)
このままでは日本の森どころか、自分の老後のグランドデザインも見えない。やっぱり、金だ、金。
以上、愚痴はやっぱりお金にまつわるのでした。
韓国と言えば、
釜山、大邱市、浦項と車で走り回ったのを覚えています。
高速道路沿いの山はおしなべて若く、
クヌギの二次林だったような記憶があります。
あと、マツと・・・。
林業に間接的にではありますが、
関わっているものとして、
老後なんか全く考えられません。
死ぬまで働くべしかと。
投稿: マサ | 2016/09/06 20:00
朝鮮半島の山々は、もともと植生が貧弱だったようですが、戦前戦中に伐りすぎてはげ山だらけでした。だから二次林(雑木林)が多いでしょうね。でも、戦後は劇的に森林面積を増やしています。それも、森を見る目が日本と違うのかもしれません。
身体が動くうちは「老後」はないかも。でも、「死ぬまで働く」のは厳しいなあ(笑)。
投稿: 田中淳夫 | 2016/09/06 21:31