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森と林業の本

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2016/09/16

吉野林業全書と獣害対策

近畿中国森林管理局が開催した「産官学共催セミナー国産早生樹林業によって何ができるのか」に顔を出してきた。

 
全体の状況とセンダンのほか、広島のコウヨウザンや北海道のシラカンバの事例報告など盛り沢山で、少々胸いっぱいなのだが、興味深い点がいくつもあり、勉強になった。
 
ただ、ここではまったく別の観点から。
 
京都大学大学院の高柳敦講師による「人工林とシカ被害対策」の話があった。これだけ、早生樹とは関係ないのであるが……。
 
そこでは、いかに昔から農林業は獣害に苦しんできて、さまざまな対策を取ってきたか、そして現在の対策が失敗するのはやり方が悪いから、という指摘があった。防護網一つとっても、張り方を誤ったら効果が出ないのだ。
 
そこで紹介されたのが、なんと吉野林業全書であった。明治時代も林業は獣害に悩まされてきたのだよ。
 
2
 
たしかに、指摘されたページにはこんな獣害対策図が載っている。
 
これが、完璧!らしい。
ウサギ害を中心に単木防御、つまり苗一本一本にシェルターを被せている。
加えてイノシシなどが下から入らないように柵があり、その柵を乗り越えないようにしている。そして皮剥ぎ対策も施している。
 
現在の防護の仕方の誤りも含めて、完全に示しているという。
 
1
 
こんな具合に指摘。
 
現場で、実際の被害を見つつそれに合った方法をきっちりこなす。これに優る防御はない。
吉野林業全書は、まさに現場の声を集めて編集されたことを示している。今更ながらに吉野林業全書は森づくりの教科書として優秀であると言えよう。
 
手間やコストや労力を惜しんで手抜きの防御をして、結果失敗して、「獣害を防げない」と嘆き、「オオカミを放て」とアホなことを言ってはいけないのである。
 
 
ちなみにシカが防御網の中に入るのは、飛び越えは意外と少なく、網の下からくぐり抜けるのが多いそうである。次は乗り越え。網に体重をかけて、よいしょと乗り越えるらしい(掛け声はないと思うが……)。この点を防ぐことが肝要なのだろう。
 
早生樹林業については、またの機会に(^o^)。
 

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土倉家の人々」カテゴリの記事

コメント

高柳先生教授になったんですか、知らなかった

あ、失礼。肩書を「教授」にしていますね。知らないです(~_~;)。
昨夜は酔っていたので……。

調べたら「講師」となっていましたので、直しました。

今日(9月17日)の産経新聞大阪版夕刊の1面トップに「生駒山地ナラ枯れ深刻」という記事が出ていました。こちらは病原性のナラ菌や高温少雨が原因とか。

おや、本当だ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160917-00000099-san-soci
 
でも、よく読むと27年度の話ですね。昨年の数字を今頃示した?今年の方がもっとひどいと思いますが。

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