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2016/09/14

インバウンドに期待する時代

たまたま目を通していた本に、国立公園の成立に関する記述があった。

明治末から大正年間のことである。
 
 
いろいろな経緯があって、目的をレクリエーションや地域振興に定めるか、景観や動植物保護に重点を置くかで論争があったりと、なかなか面白いのだが、いよいよ法制化に向けて進んだところ、関東大震災が発生。(大正12年)
 
そうなると政府も国立公園どころではなくなる。
 
……と思いきや、復興がテーマになって国立公園選定運動は勢いを増すのである。
 
その理由は経済である。
 
第一次世界大戦時は、日本は好景気に湧いたのだが、その後は一転不況に陥る。そこに震災が来たのだから国際収支は赤字で経済は苦境に陥っていたのだ。
 
そこで国際観光を振興して外国人観光客に外貨を落としてもらうのがもっとも手っとり早い手段だという声が高まったという。
そのためには国立公園を整備して、日本の景観を売り込もう、というわけだ。
 
もっとも反対意見も出たという。国民の風紀が堕ちる、というのだ。つまり毛唐……外国人が来て日本人の気概が害される、というわけだ。
 
結果的には、国際観光振興に傾き、国粋主義者として知られる安達謙蔵が内務大臣として
国立公園調査会が設置、昭和6年に国立公園法が成立する……。
 
 
なんだか、読んでいて今の時代にも当てはまるな、と苦笑してしまった。
 
長期にわたる不況。東日本大震災の被害と復興という課題。悪化する国際収支
ここはインバウンドで! と外国人観光客が落とす金 にする声が高まっている。その一方でヘイトスピーチが蔓延して外国人を嫌う風潮が広がる……。
 
今では国立公園ではなく、世界遺産に選定してもらおうと各地が名乗りを上げる。 ただし自然遺産よりは文化遺産が圧倒的に多くなってしまった。観光客の増加につながると期待しているのだ。大人数が押しかけることの弊害なんて気にしない、自然や文化財の保護という発想より地域振興、いやインバウンドの金狙いであることは明白だろう。
 
 
私は外国人が多く日本に来る(他者の視線が持ち込まれる)のはよいことだと思っているが、露骨なインバウンド収益は期待しない方がよいと思う。
 
もともと観光とは移り気なものだ。流行はすぐに変わり、維持するためには不断の努力がいる。常に新たな企画をつくり、世界へ発信し、受け入れる能力を磨く……そんな力のある地域は限られている。基本、観光(いわゆるもてなし)とはマンパワーが重要で、過疎で人材力の弱い地域が取り組んでも息切れするケースが多いのだ。
 
一発狙いの名物をつくって、数年間の盛り上がりの末に地域全体が落ち込んだケースは後を断たない。以前より悪くなった例も珍しくない。
 
 
ついでにいうと、戦前の国立公園に対する期待は、戦争の硝煙とともに消えていったのである。
 
 
 

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