ドイツと言えば近代医学の源のようなイメージがあるが、実はさまざまなオルタナティブな医療があるらしい。民間療法だけでなく、国が認可したような医療の中にも存在する。その中でも有名なのは、クナイプ療法だろう。
クナイプ牧師が始めた自然療法の一種だが、世界中に普及していて、日本にもクナイプ療法協会があったはずだ。
森林療法が提唱されたとき、その原型をドイツのクナイプ療法に求める声があった。
なぜなら森林療法を提唱した上原巌氏(東京農大准教授)が実際にクナイプ療法が行われているウェーリスホーフェンを訪れて紹介したからだ。そこは森林を散策する保養地だったのである。
しかし、これは「美しき誤解」と言ってよいかと思う。
クナイプ療法自体は、水浴を中心とした水療法とでもいうべきもので、そこに運動や食べ物などの要素が少し加わる。たまたまウェーリスホーフェンが森林リゾート地帯なので、運動として森林散策が行われていた、というのが真相に近いだろう。クナイプ療法ならどこでも森林散策をするわけではないのである。(上原氏自身は、森林療法とクナイプ療法が同じだとは全然言っていないのだが、話の流れから勘違いを誘ったのではないか。)
だから森林療法⇒森林セラピーを始めるための視察にドイツのクナイプ療法地を訪れて、全然森林散策をやっていなかったりして、失望する人もいた。
ところがドイツには、もっと森林療法に近いオルタナティブな療法があるらしい。
なかでも、私が気になるのは気候・地形療法だ。
これは病気治療やリハビリのために自然豊かな土地に移転するもので、その点では転地療法の一種になるのだろうが、とくに森林の中を歩くことを重んじている。
元をたどれば19世紀半ばに、ミュンヘン大学の教授が提唱したとか、ライ プツィヒのある医師が、心血管系疾患の患者を治療する方法として提唱したのが最初だとか、諸説あるようだ。
自然の中で歩行運動を行うことによって健康・体力づくりと保養する。ある決められた速度で、上り 下がりのある歩道を歩く療法だ。
とくに勾配のある土地を、治療を目的で医師から処方された運動量で歩く。そのための地形療法士も存在するそうだ。そして、地形療法士を伴う場合は、健康保険が適用される。
そして自然豊かな土地に限る。ドイツでは、歩くとなれば森林内なのである。
加えて居住地と異なる気候(標高や地形も含む)の土地に行くことも重要とされている。バイエルン州のガルミッシュ・パルテンキルヒェンが有名だとか。
こちらの方が、クナイプ療法より森林散策が必須で森林療法に近い。森林セラピーのように妙な利権にネジ曲げられずに日本で広められないか……と思っていたら、なんと日本でもやっているところがあった。
山形県上山(かみのやま)市では、温泉と組み合わせた気候性地形療法として取り入れているそうだ。滞在型観光としてめざしているよう。全国では7つの自治体が取り組んでいるらしい。
ちょっと興味が湧いた。今後、どのように展開するか。どうか森林セラピー基地のようにならないように願う。
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