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2016/10/28

Yahoo!ニュース「幻の葛細工」……を書いた本当の理由

Yahoo!ニュースに『「幻の葛細工」が消えた意外な理由 』を執筆しました。

このところ書き継いだ滋賀県特集? CLTに甲賀杣、バンブーハウスにヨシドーム……トリは水口細工でした\(^o^)/。

 
まず誤読しないで欲しいのだが、私は手仕事を守れ、とか、伝統工芸は大切だ、と言いたいのではない。
正直、私は伝統工芸にそれほど興味はない(笑)。いくら伝統があっても、現代では使われないものを無理に守ろうと、税金を使うことに意義があるのか疑問だ。
 
だが水口細工は違うのだ。伝統の技術を受け継いだ細工物ではあるが、時代に合わせて商品開発をし、ほかの素材にはない魅力を活かしていたのだ。とくに明治以降は欧米にウケるデザインや用途を取り込んでいた。だから昭和になっても注文が来ていた。
 
実は記事では省略したが、水口細工の末期には、材料を葛からヒノキの経木に変更する荒技を行っている。葛から繊維を取り出すのは大変な手間で量の確保も難しい。その点、経木なら全国で生産されていた。大量注文に対応するために取った措置である。
 
その時点で、作風はガラリと変わる。それが原因で売れなくなった……のなら、まだわかりやすいのだが、実は経木細工に変貌してからも海外からの注文は来ていたという。
 
だから、水口細工が姿を消した理由は、純粋に職人が転職で逃げ出したからだろう。
 
 
もっとも、経木細工では競合産地があるから無理かもしれないし、そもそも時期的にプラスチックやビニール素材が出回ってきたから、どの道生き残れなかったかもしれない。
 
しかし、十分な報酬を受け取れば職人にも誇りが生れる。葛でなければ出ない魅力にこだわる工芸作家が登場して伝統を引き継ぐ可能性だってあった。
 
報酬とは、単なる生活の糧ではない。
 
現代日本の雇用事情、賃金事情にマジに憂いを持っている。もちろん、私の原稿料に関しても……(;´д`)。←、ココ、重要。
 
 
ちなみに、水口細工の復活については、以下のようなパンフレットがつくられている。
 
Photo
 
文章は私の執筆です(^o^)。
 
水口歴史民俗資料館には、このパンフのほか水口細工の実物も展示されている。
 

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