TBS系のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』は昨日が最終回だった。
これ、ラブコメディという分類なのだろうが、私はどちらかというとラブ・マネジメントとして見ても面白かったように思う。だいたい二人の会話は、まるでロジカル・シンキング。夫婦は雇用-従業員関係で成り立つのか、共同経営者か、なんて議論しているのだもの。ちょっと理系ぽい。
ま、ドラマは面白くみたらよい。
その中で私のもっともお気に入りのセリフは、「やりがいの搾取」「好きの搾取」だ。
仕事として面白いから無料か低賃金で働いてくれ、好き同士で結婚したのだから家事はボランティアでしてくれ……という意味だ。
主人公森山みくりに、こんなセリフがあった。 「人の善意につけこんで労働力をタダで得ようとする。これは搾取です」
実は、私も「これって……」と憤懣やる方ないケースに遭遇した。
話は2年前、いや正確には2年8カ月前に遡る。
某出版社から原稿の依頼が来た。ある業界の事典的な本づくりの一部を執筆してほしいというものだ。編集を統括している某大学の教授が、私を指名したのだという。執筆陣も、私以外はほぼ研究者ではなかったか。
もちろん了承しましたよ。もともとその分野は、本を執筆している。ただ依頼があった時点でも随分年月が経つので、改めて情報を集めて分析しなくてはならない。呻吟しつつ、何日間もかけて書き上げた。送ったのは数カ月後である。なんだか、語句の統一表とか、契約書と説明書の量が多かった記憶がある。
その時は幾度か編集部とやり取りしたが、そのまま音沙汰がなくなった。その年末、どうなっているのか問い合わせた。
すると、ほかの執筆陣が遅れている……(私が原稿を納めた期日がデッドラインではなかったのか?)ので、ということだった。支払いは印税なので出版されないともらえないという。
さて、それから1年。まったく音沙汰がないので、私も堪忍袋が切れて、出版の有無に関係なく支払うよう督促した。
その時の返事は、いまだに執筆が遅れている……というものだ。ただ私が強硬なので、概算して先払いします、と返信してきた。
私が執筆した分量の全体の割合と、だいたいの定価・発行部数から計算すると……4000円(ここから源泉徴収などの税金を引くから受け取るのは3000円あまり。)
計算の仕方がおかしいのではないか、一桁間違っているのではないかと、私は疑ったほどだ。これが2年半待って受け取る対価なのか……。取材や資料収集のコストとか、執筆に要した時間を勘案したら、ほとんど対価はなしに等しい。
これって、何の搾取なの?やりがいの搾取? 好き……ではないな(;´д`)。権威ある「事典」の一角に執筆できたらハクがつくでしょ!的な搾取?
給与もらって研究して、余技で執筆している連中と同列に扱われたらタマラン。
依頼を受けたときに、受け取れる印税の概算を聞いておかなかった私がバカだったのか。本当に私に依頼したかったら、あらかじめ支払える金額を示して了解を得るべきではないのか。
引き受けるにしても、調べ直さず記憶だけで書けばよかった。あるいは昔の原稿を再利用するという手もあったな。
ともあれ、もう忘れたいので了承したよ。損金扱いしておこう。でも、ある意味、逃げる。恥ずかしいが、交渉に無駄な労力を使いたくない。この経験は、今後役に立つだろうか。ともあれ搾取された恨みは根深く残るのだよ。
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