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森と林業の本

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2016/12/29

神様と動物行動学と林政

今、神様の本を読んでいる。宗教書ではなくて、宗教解説書。

 
なかなか面白い。たとえばキリスト教の教義を成立させたのは使徒パウロであり、キリストの思想というよりパウロの宗教だとか、19世紀にプロテスタントの合理集義、啓蒙主義が広がる中で、神のいる場所は天上ではなく心の中だ、と規定されたとか。
神が心の中にいるとしたことで、ロマン主義が登場する。ロマン主義が、自然崇拝に踏み出していくのだよ。ロマン主義が現在の森林に対する人の価値観をつくったとも言えなくもない。意外と最近ということになるし、不変でもない。
 
 
一方で、宗教は動物行動学と相性がよいとも感じる。
 
宗教は、人の行動原理を突き詰めて説明しようとするのだが、それは人間の行動学と近くなる。しかし人間の行動原理は、動物として、生命体として規定されるから、動物行動学とも言える。その根本原理は「遺伝子のなすがまま」である。ドーキンスの利己的遺伝子論が述べるように、自らの増殖が至上課題であり、そのために遺伝子の乗り物である生命体の行動を操るからだ。
 
私、学生時代は森林生態学を志したとことあるごとに記してきたが、出発点は動物行動学だった。野生のオランウータンはどんな行動をしているか、知能はどの程度か、というところから入っているからね。サル学にもはまった。
 
 
すると動物行動学は、人間の心理と政治を読み解くことに応用できることに気づく。
 
実は、私自身は組織に属し組織行動が苦手な人種であり、結果的に個人で活動している。しかし、組織のマネジメント論に対する興味が強い。ドラッカーを始め、結構な量の組織経営論を読みふけった。組織経営は、畢竟、人間の心理学であり行動学であると思う。そして経営は、人間社会全体では政治に行き着く。私は、政治に興味があるのだ。
どこで活かすんだ、と我ながら疑問だが、きっとそのうち、私が会社の社長に就任する日、政治家になる日も来るだろう(笑)。
よりよき社会を作りたければすぐれた政治的マネジメントが必要だが、マネジメントには心理学、行動学、そして宗教というか思想的規範が求められるのではないか。
 
 
そんなことを考えながら、マネジメントを森林や林業の世界に当てはめると、現状は「わかっちゃいるけど、止まらない」状態なんだな、と感じる。
 
一例として、今や林業界は「主伐の時代」に入っているが、その理由は「伐期の平準化」だそうだ。戦後、大量に植林した人工林によって林齢が偏っているのを正すのだそう。これは「正す」のが目的だから、正したら止めるのが基本だろう。(そもそも、正さなくてはいけないのかどうかも怪しいが。)
 
主伐は、言い換えると皆伐なわけだが、適切な時期が来たら止められるか。
 
無理だろう。皆伐のための組織や技術、設備、それに意識が固まった時点で止められないのだ。止めたら、目先の仕事を失う人が多く出るから、遠い将来の手法は選べなくなる。目先の政治に終始するのだ。過去の事例、いや現在の数々の事例でも、それを示している。
 
伐りすぎて、伐れなくなるまで続く。伐れなくなるから放棄する。幸い、消費側からすると木材の代わりとなる素材はいくらでもあるから木が伐れなくなっても気にしない。……かくして林業は壊滅するわけである。
 
本当は、そこまで先を読んで行動するのが人間の政治であり、マネジメントなのだが。あとは、神に祈るしかない。
 
最後にドラッカーの言葉。
 
033
 
 
 
さて、今年はここで打ち止めにする。頭の中にはいろいろ湧き出て来るのだが、年末年始はあえて脳内に留めて醗酵・腐敗させてみよう。
 

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