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森と林業の本

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2016/12/19

樹根の世界

NHK大河ドラマ「真田丸」、終わってしまいましたね……。

 
ドラマは終わったが、大阪の街では本物の真田丸の調査が行われていることを知っているだろうか。実は、大坂城の出丸だった真田丸は、正確な場所や形状などまだわからないことだらけ。ドラマ「真田丸」の影響か、この1年随分積極的に調査されてきたのである。
 
そこで使われるのが地中レーダー。
 
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さて前降りはこれぐらいで、地中レーダー。これを使うと、地面の下の樹木の根の在り処や形状なども読み取れるそうだ。そんな研究の「樹木の根を掘らずに視る」公開講演会が先日神戸で開かれた。
 
講演を聞いたところ、地中レーダーによる樹木根探査は、まだ道半ばであると感じたが、樹木の根に眼を向けると、面白い世界が広がっていることは非常に感じ取れた。
 
4  Photo
 
まず、当たり前のこととして、樹木の根の深さはどれくらいか。
実は大半が1メートル程度で、深くても3メートルまでのようである。なぜなら土壌がそれくらいの厚みしかないからだ。
ところが樹木の高さは、高木なら10メートルは普通で、30メートル以上の例も少なくない。言い換えると、地表高く伸びている樹木も、根は地面のすぐ下に広がっているわけだ。
 
よくスギは浅根性だからよく倒れるとか、広葉樹は深根性が多くて風害に遇いにくいとかいう人がいるが、どうも怪しい。そもそもスギはわりと真下に根を伸ばす。まあ植林する際に切ってしまうケースもあるが。
いずれにしろ、樹木全体からすると根の深みはいずれの樹種でもたいしたことなくて、倒れる可能性は根の深さではなくて、広がりに左右されるのではないか。いかに広く根を伸ばしているか。これが鍵だ。(深い根があれば、それなりに有利だろうが……。)
 
となると、隣の木との距離が重要となる。間伐していない林の場合、密生状態だから根の広がりは小さくなる、だから倒れやすい……。
もっとも一本の木ではそうでも、密生しているわけだから森林全体としては根が密に広がっていることになり、土壌安定効果が高まると見ることもできる。
 
 
それに根が特異的に無機成分を集積することも知られている。ある種の植物は亜鉛やカドミウムなど金属を選択して集めるというし、樹が土壌のph値を変えるとも聞いた。植物が能動的に土壌の性質に関与しているわけだ。
 
 
人が意識する樹木は、地表、とくに人の目の高さの幹と枝だろう。ちょっと上を向いても樹冠が目に入るのは高さ3メートルくらいまでがほとんどではないか。しかし、植物的に大切なのは、そんな目の高さの部分よりも繁殖部分であり、物質交換をしている部位ではないか。
 
近年は光合成をして、花を咲かせて実が成る樹冠の研究が盛んだったが、次は樹根かな。根は水や養分を吸い上げるだけでなく、さまざまな物質の排出もする。菌根菌との共生や寄生など地中生態系もあれば、腐食することで炭素の蓄積にも関わるわけだし。
 
3_4  地表に広がる根と
 
1_3  地中でも広がれない根。

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