いまさらだが『君の名は。』を昨年見たとき、フツーに感動していい映画・アニメだな、と思った。ただ二度見に行こうとは思わなかったし、なにか既視感がつきまとった。
やはり男女の入れ代わりなどは『転校生』のアイデアそのままだし、彗星による大災害とかタイムスリップ的な厄難からの脱出などの話は、どこかで見たり読んだりしたストーリー。
で、連想したのは『もしドラ』(『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』)である。
『もしドラ』は、ドラッカーの『マネジメント』の考え方を世間に知らしめようと小説仕立てにした作品だが、実は物語としても面白かったし、楽しめた。もちろん小説としては文章力表権力ともにイマイチで、ストーリーだってベタで意外性もない。だが、読んでいると感情移入して読ませたのだ。そして、ドラッカーの魅力も十分に伝わった。だから著者の狙いは成功したのだ。
『君の名は。』も、ストーリーやアイデアは陳腐なのだ。では、代わりに伝えたものは何か?
さて、長い前ふりだが、実は『まずいラーメン屋はどこへ消えた?』(小学館101新書)から連想したのである。この本は、『もしドラ』の作者・岩崎夏海が記した本だから。
こちらは小説ではなく、ビジネスハウツウであり社会論でもある。サブタイトルが、「椅子取りゲーム社会」で生き残る方法 だ。
椅子取りゲーム社会とは、インターネットが普及して急速に進んだ情報化がもたらした競争社会と格差社会を表わしている。
これまでは、少々まずくても生き残れたラーメン屋も、今や瞬時に消え去る社会となった。しかも当初の勝者さえ取り分が減っていく(椅子が減っていく)社会構造となってきた。単に勝ち組負け組の2極分化ではなく、ピラミッド的な頂上にしか勝者のいない時代に入っていることを説明している。
そこで生き残るには、「競争に勝つ」と「イノベーション」しかないという。それをドラッカーから学んだことを伝える形で説明しているのだ。
ただ競争に勝つということは、より激しい競争に次から次へとさらされることであり、結果的に自らを滅ぼしかねない。
イノベーションとは、 技術革新というより新しい分野を見つけたり開くことを意味する。新しい分野はライバルがいないから競争も起こらない。こちらをめざすべきだ……というのが著者(とドラッカー)の主張である。ただし、それには長期的視野が必要だと。
おもわず自分自身に当てはめてしまう。そうなんだよ、私もイノベーションめざしているのだよ。今あるものを捨てて、新分野を試行錯誤している。すぐに結果は出ないが、今の自分のスタンスに安住していたら、将来は尻すぼみだから。でも、イノベーションの過程が長期になれば、軌道に乗る前にこけてしまいかねない……(>_<)。
……なんだか林業界にも当てはめたくなった。
短期的利益に目を奪われて今の立場にしがみつけばつくほど、将来尻すぼみは目に見えている。でも、長期的に物事を考えられない。
それではイカンと政府は、「競争」をしろと尻を叩くのだが、それで林地の集約化とか機械化とか力を入れていると、手間とコストが増すばかり。そして、どんどん材価が下がっていく。
結局、イノベーションがないのだな。新分野の用途を切り開かず、言われるままに誰もが参入できる合板とかバイオマス用とかの低単価分野に原木を売るだけだから。
ま、自分の道は自分で考えないとね。
さて林業はさておき(~_~;)、私は生き残れるか?
最近、「仕事がない」「求人がない」ではなくて、「どうやったら利益を上げられるか」なんだよな、と改めて気付きましたが当たり前ですよね
今はネットを上手く使えば、マーケティングさえしっかりしてれば、リーチ出来る時代だし
投稿: か | 2017/01/21 23:06
ネット時代というのは、善くも悪くも情報の平等化をもたらして、それがビジネスチャンスにもなる代わりに競争の激烈化も引き起こしています。さらに格差社会にもつながりかねない。
投稿: 田中淳夫 | 2017/01/22 22:31