ナラ枯れ木の伐採をしたからというわけではないが、ナラ枯れの原因であるカシノナガキクイムシについて少し調べた。
すると、びっくり。なんとカシナガは農業を行うのだという。自らの食べ物を栽培して調達していたのだ。
農業を行う昆虫と言えば、アマゾンなど中南米の熱帯雨林に生息するハキリアリとか、巨大な巣の中でキノコを育てるキノコシロアリが知られている。
ハキリアリは、回りの草木の葉を切り取って巣穴に運び、それを培地にキノコを栽培する。キノコシロアりは、枯れた植物を食べて出した糞を積み上げて、そこにキノコを栽培する。
いずれもキノコを食べ物にするわけで、たまに自然のドキュメンタリー番組などにも紹介されているから知る人もいるのではないか。
私も、ほお、珍しい昆虫がいるんだなあ。、アリやシロアリは社会性昆虫として高等な部類に入ると栽培という文化を持つのだろうか……と感心していた。
が、なんと、アマゾンまで行かなくても身近に農業を行う昆虫がいたとは!
目の前に枯れたコナラの樹幹の中で、農業をしていたのか。意外と身近な存在だったのだ。
もっともカシナガが栽培するのはキノコというよりカビ類。ナラ類などの樹木に穿入するわけだが、その孔道の壁に菌を培養するらしい。
上記はカシナガの電子顕微鏡写真だが、その背中に開いてある孔に菌を載せて運ぶという。
ただしナラ枯れを引き起こすナラ菌は、培養する菌(総称アンブロシア菌)ではない。ナラ菌は、いわば農地に生える雑草のようにくっついてくるらしい(-.-)。
それが大繁殖して樹木を枯らすのだが……枯れたら食べる菌も増えて、カシナガにとっても有利なのかしらん。
ついでに触れると、キクイムシの仲間は一夫一婦性だそうだが、なかには(♀)が交尾しないまま♂を生む種もあるらしい。そして息子と交尾するというから近親交配である。
摩訶不思議な世界が、目の前のナラ枯れ木の中に広がっていたのね。憎きナラ枯れを引き起こすカシナガめ、と思っていた目が少し、ほんの少しだけ変わって来る。
そのオモシロさ、自然界の妙なシステムを知ることも必要だろう。ナラ枯れだって、実は森林生態系の一部として必要とされているのだから。
まあ、一般の人にオモシロさをわかってもらえるように伝えるのは至難の業であるが……。
キノコもカビも、真菌類はfungiですね
投稿: か | 2017/01/09 15:01
子嚢菌と担子菌の違い、ぐらいに考えておいてください。
投稿: 田中淳夫 | 2017/01/09 16:19