先に街路樹サミットの開かれた会場は、立命館大学のいばらきフィーチャープラザだった。
まだオープンして2年のキャンパスでは、「育てる里山プロジェクト」があり、里山づくりが行われている。そのプロジェクト代表でもある田中力教授はサミットの演者の一人でもあったのだが、キャンパスづくりのコンセプトを考える過程で里山に行き着いたという。
ちょうど茨木市にある里山センター(里山関連の複数のNPOの拠点)に相談に行って、たまたま新名神高速道路の建設で破壊される里山から樹木をキャンパス内に移植する事業を進行させたという。教職員と学生に加えて、市民ボランティアや高校生も加わったとか。
エリアには雑木林ゾーン、アカマツゾーン、そして草山の3つがある。
正直、悪戦苦闘しているようで、活着はよくない。土は、建設残土に真砂を入れ、そこに樹木を山土ごと根鉢を植えたそうだが、現在、土壌改良などに取り組んでいる。
私の見た感想としては、ちょっとガーデニング的な植え方で、しかも遷移を前提とした樹種選定ではないのが気になった。
今は、堆肥づくりも行っている。
しかし、話を聞いてみると、最初は専門家抜きでやっていたようだ。土づくりになるだろうと落葉を集めてそのまま撒いたとか(~_~;)、ちょっ、ちょっと! とという経験談を語る。
立命館大学には生物系の研究者もいるだろうし、NPOにも植物に詳しい人はいなかったのだろうか。
さて、今年の春にはちゃんと芽吹きが見られるだろうか……。
私個人の予想としては、移植した木の中には枯れるものも多いだろうが、幾らかは生き残り、また新たな草木も生えてくるだろうから、数年頑張ればなんとかなると思う。ただ、想定している里山にはならないだろうなあ……。雑木林とアカマツ林に分ける必要もないように思う。
ただ、破壊される自然を、移植することで守るという考え方は、いわゆるミティゲーションである。ミティゲーションとは、アメリカ生まれの発想で、人間の活動による環境への悪影響を緩和、または補償する行為のことである。
いろいろ段階があって、環境破壊を
1)回避する
2)影響を最小化する
3)影響を受ける環境を修復して回復させたり復元する
4)保護やメンテナンスで影響を軽減したり除去する
5)代替の資源や環境を別の場所で行い、影響の代償措置をとる
と分類されている。日本ではとくに「代償」が強く意識されている。
つまり立命館の試みは、高速道路で破壊される里山環境をキャンパス内に移植する代償ミティゲーションに相当するのではないか。
……もっとも、当事者はそうした意識なしに取り組んでいるようであったが。。。また技術的にもミティゲーションとしては弱い(~_~;)。
せっかく大学が取り組むのだから、専門家の叡知を集めて実施すべきだった。
そうすれば基盤から土質を計算して積み上げ、移植する草木の種類も選べたはず。さらに根鉢だけでなく山の表土の移転も行えば、里山環境の復元に成功すると思うのだが。
まだ2年目だから、気長にすべきだろう。自然はそんな簡単に結論にたどりつけない。150年後を描いた明治神宮の森づくりのように頑張ってほしい。
キャンパス内に冬のサクラが咲いていた。
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