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森と林業と動物の本

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2017年3月

2017/03/31

Yahoo!ニュース「堤防の菜の花は遺伝子組み換え」書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「堤防の菜の花は、遺伝子組み換え植物かも 」を書きました。

 
春になったらいつもサクラの記事を書いているから、今度は菜の花に\(^o^)/。
 
ま、風物詩的に、なぜ河川敷や低法には菜の花が咲いているのだろう、と疑問を持ったのがスタートなのだが、調べていくと外来種問題どころか遺伝子組み換え問題まで出てきてしまったよ。
 
本当は、堤防の菜の花を摘んで食べても大丈夫か……なんてことを論じようと思ったのだけどなあ(笑)。 
 
 
 
ちなみに、私は必ずしも遺伝子組み替え植物が全面的に悪いと思っていない。扱い方・管理の仕方次第であるし、またどんな特性を生み出すかも考えるべきだ。もしかして、環境を改善するような機能を持つように遺伝子を改変する場合、一概に反対できるだろうか。
 
自然界でも、異種間の遺伝子移動が報告されている。何も人間だけではないのだ。
 
 
ただ野生化した植物まで遺伝子組み換えが拡散すると、今後何が起こるかとても読めない。意図したこととはまったく違う反応が起きることだって考えられる。その点からは、やはり怖い代物だ。
 
 

2017/03/30

移動古本屋

移動古本屋が登場した。

 
その名もMAGARI books。 各地に間借りしつつ店舗を開くから。
 
今回の場所は、私の応接間・生駒山中のラッキーガーデン。
 
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見てのとおりの、一つの棚だけ。(腰掛けているのが店主。)
こちら側は雑誌が並ぶ。バックナンバーだが未使用である。裏側が、書籍。自らの好みと勘に基づく品揃えだ。
 
店主・酒井クンは、スタンダードブックストアで働いていたが、今月をもって退職して、このような移動本屋を開いていくという。
いろいろ思うところはあったのだろう。が、こうした書店づくりもオルタナティブな道かもしれない。
 
現在、書店の凋落はすさまじい。もともと本の売上は、毎年10%ずつ下がっていくと言われる中で、さらにAmazonを始めとするネット書店の台頭で店舗を維持するのは大変だ。
 
スタンダードブックストアやヴィレッジヴァンガードなど、書店なのに雑貨を置くような別の道を探る動きは起きているが、実は雑貨の方が売れ行き好調で、肝心の本は伸び悩んでいる。このままだと、新趣向の書店は雑貨店になってしまう。
 
私のような執筆者としても、書店の衰退は死活問題だ。
 
ぜひ、あの手この手の展開を試すしかないだろう。
 
 
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考えたら、ラッキーガーデンも、レストラン・カフェなのに羊牧場……という点では、同じ業態なのかも(笑)。

2017/03/29

「樹木が土壌を変える」論文

昨年末に、土壌ジャーナリスト最後のスクープ! として「樹木が土壌を変える 」という記事を書いた。

 
そこでも触れたが、それに関する論文が発表されて手に入れたので紹介しよう。
具体的には、「樹木医学研究」第21巻第1号に掲載された「生物検定を用いて明らかにした樹幹周辺土壌の樹種特性」(伊藤幹二・伊藤操子)である。
 
党の本人のいうには、「まず入口の現象を見える化したもの」だそうで、次は森林学会に本格的な論文を発表予定だそうである。
 
ここでは、樹種によって周辺土壌の特性が変わることを示すとともに、その理由として樹幹流に注目している。樹幹を流れる水は、内皮に触れて成分を変化させ(物質交換し)、土壌を自分の都合のよい状態に能動的に変えていくというものだ。
 
これまで植物は毛細根と葉(の気孔)でしか物質交換をしないと思われていたが、近年はもっと広く環境に関与していることがわかってきた。ある意味、全身で環境と能動的に向き合っているのだ。
なんか、「人間も皮膚呼吸しているでしょ」と言われたような気がする(~_~;)。
 
 まずは要旨。
 
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全部掲載するわけにもいかないので、「はじめに」を。
 
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そして考察の一部分。
 
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さて、学界では、どんな反応が出るのだろうか。

2017/03/28

Yahoo!ニュース月間MVAに選定!

Yahoo!ニュースには、月間MVAとMVCがある。
 
MVAとは、Most Valuable Article のこと。ようするにアクセス数とは関係なく、優秀記事という観点で選ばれる記事である。MVCは、Most Valuable Comment。優秀なコメントの賞だ。
この2月のMVAに私の記事が選ばれた。
 
 
 
月間に数百本の記事がアップされている中から選ばれた5本のうちの1本なのだから、それなりに誇りたい。ちなみに私は2度目。
 
選定コメントを求められて、その場で書いたのだが、つい「~である調」にしたところ、他の方々はみんな「~ですます調」であった。これは外した、と思ったね(笑)。
 
 
Yahoo!ニュースは、最初のうちこそ、金にならないもののどうせ無料のブログ記事を書き散らしているんだし、ブログとは違う読者層だから世間の反応をうかがうのにはよいか……という安易な気持ちで始めた(笑)。
しかし、どんどん進化していて、アクセス数だけでなくこうした賞を設けるなど執筆者支援の方策が次々と打ち出されている。一部に取材経費も出してくれるようになった。私は、まだ申請したことはないが……。
 
ネット記事というのは、まだまだうさん臭く思われる部分もあるが、その中で良質なジャーナリズムを築こうという意気を感じる。
やっぱり有難いね。

2017/03/27

藤森隆郎氏の驚愕(インパクト)

昨日は、「あすの奈良の森を考える」学習会で、藤森隆郎氏の講演があった。

 
そこでは数々の驚愕の発言・出来事があった。
と言っても、ここでは講演内容は紹介しない。あえて言えば、タイトルが「森林・林業で後進に伝えたいこと」であり、先生の著書「林業がつくる日本の森林」のエッセンスだと思えばよい。講演内容を知りたい人は、この本を読むことだ。
私はすでに読んでいたので、話されたことに納得しつつも驚くことはなかった。
 
それでも一つ驚かされたことを取り上げると、現在の林学研究現場が論文を作成することだけに偏重して成果を現場に還元しない要因である。
 
それは、現場に研究成果を還元しようにも、それを理解する技能・技術者がいない、ことだという。だから、学内・研究所内の地位を上げることばかりに目が行ってしまう……と。現場が活かしてくれたら、研究者は現場に出るだろう……。これこそ、昔から言われている林学と林業の乖離ではないか? その原因の一端を指摘された。。。
 
では、なぜ現場の技術者がいなくなったのか。その一つに戦争で農林業者が徴兵で根こそぎ引き抜かれたことや、戦後の画一的林政で個々の技術者の能力を排除してしまったこと、などを上げた。
 
ま、ここから現在の林政批判が強烈に展開されるのだ……(^o^)。これこそが「後進に伝えたいこと」であるかのように。
それは心地よいほど、我が意を得たり、であったv(^0^)。
 
 
2番目の驚愕(セカンド インパクト)。
 
終わってから質疑応答の時間となったが、当初手が挙がらなかったら、「これが問題」と、滔々と日本人の気質を批判されたこと(~_~;)。
そうなんだよ、単に手を挙げにくいというより、何を質問すべきか頭を整理するのに手間取るのだよ。それが、もしかして貴重なチャンスを逃しているのかもしれない。
 
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質問が出るのを待つ微妙な時間。この後、幾人か質問が出ました。
 
 
3番目の驚愕(サード インパクト)。
 
懇親会の際、私は藤森先生の前の席だったのだが、全体で盛り上がって賑やかになっている際、藤森氏が携帯電話で話し始めた。
 
で、終わってから驚愕の情報を教えてくれた。
 
「今、妻から電話があったんですが……稀勢の里が優勝したそうですよ。結びの一番と優勝決定戦の両方を制して」
 
ええええ!!! と周辺に驚愕が走った。休場してもおかしくない怪我をした横綱稀勢の里が? ひとしきり相撲談義に花が咲いたのであった。 あの時、会場の空気が一瞬変わりましたね。
 
 
さて、この場から森林業界に何か新たな動きは生れるだろうか。

2017/03/26

Yahoo!ニュース「桜を嫌った?明治の日本人」書いた理由

Yahoo!ニュースに「桜を嫌った?明治の日本人 」を執筆しました。

 
ま、書いた通り、サクラのシーズンになると思い出す、サクラに狂奔する日本人。私はサクラを嫌いなわけではないが、あまり周りが騒ぐと興ざめする。
 
そこに志賀重昂を思い出したわけだ。明治時代とは、実に多くの興味深い人物を排出するが、志賀もその一人。
こんな意見を持つのも悪くない。
 
もっとも、誤解のないように記しておくが、明治時代も大多数の庶民はサクラが好きだったのだよ。花見も盛んだった。
ただし、当時はヤマザクラなど在来種のサクラの花を愛でた。1本の木でも1カ月くらい咲いていたそうだ。いろいろなサクラの花が長く咲き続ける……そんな楽しみ方もあるよなあ。私も、そんな花見をしたい。
 
 

2017/03/25

竹藪に……

散歩中、小道を進むと、片側が竹藪。。。

 
竹林とは呼べないブッシュ状態なのだが……。ちょっと奥が気になる。
 
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じっと奥を覗くと。
 
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小屋がありました(笑)。
 
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でも、完膚無きまでにタケが家をぶち抜いている。
 
ここまで放置したら、どうにもなりません。
 
 
で、思い出したのだが、先日NTTの下請けが我が家を訪ねてきた。なんでも、森の中を電話線の通っているところで線に触れている木を伐っているそうなのだが、その地所の一つとして私のところを訪ねてきたのだった。で、電話線のしたの竹を伐りたいというのだが……。
 
地番図を持ってきたので確認すると、タナカ山林ではなく、その隣であった。残念。私の土地なら心置きなく伐らせてあげたのに。なんなら、うちのナラ枯れ木を伐ってくれないか……。
 
なんて話をした。実際、下請け(と言っても造園会社)は現地確認だけでなくその地主との交渉もしなくてはならないので大変らしい。今回も交渉は苦手らしく、この手のことに詳しい人と組んで仕事をしているそうだが、地主を見つけるだけでも大変なのだそう。
 
そして、肝心の伐りたい竹藪の地主は行方不明だそうで……。
 
私も関心あるので、伐ることになったら連絡くれるように頼んだ。立ち会うから。なんなら、こっそり伐らせてやるから(^^;)\(-_-メ;)。

2017/03/24

奈良の木造率

公共建築物等木材利用促進法が登場して、国が整備する公共建築物の木造化が上がったそうだ。平成27年度調査によると、対象となった110施設の木造化率は54.5%で、5割を突破した。前年度が32.0%だから、結構な増加率である。
また公共建築物の木造率(床面積ベース)では、全国1位が秋田県(36.9%)、2位は岩手県(33.5%)。木造・木質化した公共建築物の件数のトップは、北海道の180件……とも報道されている。
 
ま、それだどうした、公共施設の定義だの考え出すと怪しげでもあるが、ふと木造建築物と言えば寺社があるから奈良県はどうだろう、と思った。
 
で、思い出したのが、先日訪れた春日大社の参道トイレ。
 
Photo
木造ではないが、屋根の骨組を見えるようにして、なかなかオシャレである。これだけで木材が強調されて気分的な木質率は高くはないか?
 
そういや東大寺のトイレも木質格子でカバーしていたっけ。全体に観光地のトイレは木質率が高い気がする。
 
 
ついでに鹿せんべい売り屋台も……。
 
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売り場は、単にパラソル立てているだけの場合も多いが、こんな木造屋台で売っているところもあるのだよ。
 
こんな街角木質率も計ってほしいな(笑)。奈良県はきっと高いと思う。
 

2017/03/23

森のアーチ

森の中で見つけたアーチ。

 
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ちょうど山道をまたぐようにかかっている。梢を地面に付けているが、さすがに根は出ていなかった。おそらく風雨で傾いた木が、傾いたまま生長したのだろうけど。
 
こんな自然の造形? もたまにはいい。

2017/03/22

お尋ね~事故による伐採賠償額

林業現場の皆さんへ、ちょっとご意見・お尋ね。

 
 
私の友人が、ドローンを飛ばしていて、木立に引っ掛けてしまった。それを回収するのには、どうしてもその木を伐採しないと無理。そこで地権者の了解を得て伐採してもらったのだが、さて、地権者には立木代と慰謝料でいくらぐらい払えばいいか。
 
伐採した木はこんなもの。
 
Dscn8688  Dscn8686
 
伐ったのは、樹齢60年生のスギ。その横の細い木も一緒に伐った。
 
写真を見ればわかるとおり、わりと目はよいが、元玉部分はかなり曲がりが見える。幹の長さは10メートルぐらいだったという。搬出はしていない。
 
なお地域は九州で、地権者は林業家ではない。伐採したのは地権者とは別で、そちらの方への代金は別途支払っている。
 
 
さて賠償としてどれほどの額が適当だろうか。原木代だけを考えたらしれているのは、このブログの読者ならおわかりだろうが、事故ったことへの慰謝料も含めるべきだろう。菓子折りつけてお詫びを言いに行く分はおいといて(^o^)。
 
山主から林業家、一般市民、それぞれの立場の賢明なる皆さんのご意見をお聞かせねがいたい。地方によっては、こうしたケースにおける独特の手続きや慣習があるのかもしれないが、それも教えていただけると幸いだ。
 

2017/03/21

鳥獣被害は「減った」

シカにイノシシ、サル、カラス……と鳥獣被害が話題になっているときに、農水省から2015年度の農作物被害額が発表になった。

 
その結果は……被害金額は176億円。前年度から15億円減(対前年7,8%減)。被害面積は8万1000ヘクタールで前年度より300ヘクタール減。被害量は50万トンで前年度より4万6000トン減(対前年8%減)……。
 
なんだ、騒がれているから年々増大かと思いきや減少傾向にあった。
被害金額については、シカが60億円と6億円減少(対前年9%減)、イノシシが51億円で3億円減少(対前年6%減)、サルが11億円で2億円減少(対前年16%減)。やはりシカとイノシシが圧倒的に多いが、鳥類もカラスとその他を合わせると、30数億円になる。
 
これはあくまで農作物被害なので、林業のほか一般家庭の被害(たとえば家庭菜園)は入っていない。実態は5倍ぐらいあると聞くが、とりあえず全体的には減少しているのだろう。
 
その点は、グラフを見るとわかりやすい。
 
Photo (農水省)
 
 
なぜ減ったのか。分析によると、まずは市町村の対策、つまり防御と駆除が進んでいることだろう。なんだかんだと言っても、駆除数は毎年増えている。柵も設置が進んでいる。
 
ただ「餌となるドングリが豊作だった」(鳥獣対策室)という声が出ているようだ。
これには首をかしげる。そこには「野生鳥獣は野山のドングリなど天然ものの餌が好きで、それが足りないから里に下りてきて農作物を狙う」という発想があるように思う。また「わざわざ危険な里の農作物を狙うのは大変」だから本来なら忌避する、と思い込んでいるのではないか。
 
これは私の勘だが、むしろ野生鳥獣は農作物が好きで、里で餌を得る方が簡単……だからやってくるのだと思っている。
 
なぜなら品種改良された野菜は美味しいし、栄養価も高い。量もまとめてある。取るのも簡単だ。柵をしているとか、ハンターが狙っているというのも、まだまだ局所的。人間に姿を見られても、今では追われない。逆に人が逃げる。
そもそも餌となるのは、人が収穫する農作物以外にもたくさんある。農業廃棄物や畦道に生える草などは、いくら食べても人間は怒らない。それどころか、廃棄物を喜んで提供してくれる人が少なくない。
 
これまで里に食事に行くことを知らなかった鳥獣が、いったんそれを覚えたら止められない止まらない、ではないか。「あそこのファミレス、美味いねん」的な(笑)。
 
この私の説には、明確な裏付けはないので今後の研究を待ちたい(^o^)。
 
 
ともあれ、被害は多少減ったのは事実だ。人間側のガードがきつくなったこともあるだろう。
しかし、被害届けを出さなくなった可能性もある。諦めてしまったり、老後の楽しみ農園だったりすると。また農業廃棄物を食べても届けないし、農道・林道の草刈りをしてくれてありがとう、と思う人もいるだろう。それが鳥獣を呼び込んでいるのに。
 
実態はなかなかわからない。
 

2017/03/20

「林業で儲ける」2つの方向を考える

日経ビジネスオンラインに『「もうからない林業」でしたたかに稼ぐ人たちという記事が出た。

 
ここに登場するのは、岐阜県山県市の極東森林開発(中原丈夫社長)と、和歌山県田辺市にある山長商店(榎本崇秀社長)。なるほど、この人たちを選んだか、と思う。彼らは、なぜ林業で儲けられるのか。
 
極東森林開発の売り物は、注文から3日間の「短納期」と「ジャストインタイム」だ。さらに1本単位での注文も受ける「多品種・小ロット」の商品構成。
山長商店は、自社森林から製材、プレカットまで行い、住宅メーカーは1カ所ですべての木材が、最終製品として揃えられること。しかも「紀州材」ブランドの無垢材で1本ごとに伐採から加工履歴までトレーサビリティを付けている。(……以上、記事による。)
 
 
これはこれで(林業界では)すごいことなのだが、記事にはこんな言葉が登場する。
 
「林業家は自分たちのペースで樹木を切る。『そろそろあの斜面を切るか』という具合だ。そして切り出した丸太を市場に持ち込む。仮に『1カ月以内にこの太さのスギが100本、ヒノキが100本ほしい』などと要望があっても『まあ、切ってみないとなんともいえないけど、1カ月したら連絡するよ』という具合。そして実際には必要な丸太が揃っておらず『ある程度まとまるのはまた1カ月後だからそのころ来てくれ』という始末。これでは高く売れないのは当たり前だ」(中原社長)
 
ようするに、儲からないという林業家は、ビジネスの体を成していないから、と暗に臭わせている(笑)。
 
実は、ほかにも「儲けている林業家」は私も何人も知っている。相対取引で「市場の2割増価格で売っている」とか、造材が優秀でブランド的に市場価格より高くなる林業家のケースも聞いた。
さらに「山買いで儲けている」人の話もある。「うちの山は、全然金になる木がない」という山主から、安値で山を買い取るのだが、荒れたように見える山も、しっかり歩いて調べると、それなりによい木があるのだそうだ。元山主も知らなかった銘木を見つけたら、それを出して売るだけで元が取れる。残りを十把一絡げで売っても十分利益が出る……のだそうだ。
 
 
これらの例がやっているのは、マーケティングのマネジメントだ。マーケティング、つまり市場(顧客)が欲しがっているものを見つけ出して提供することである。これまで潜在的に国産材商品を欲しがっている客がいるのに、求められる形で供給しないから売れなかった。
 
マーケティングなんて、今やビジネス界では当たり前のようにいう言葉だが、それを林業界ではやっていなかったわけで、きっちりやれば儲かるわけだ。
 
ただ私は、林業界にはもう一つのブレイクが必要だと感じている。マーケティンクだけでは限界があるように思うのだ。なぜなら住宅着工件数が激減して、木材需要が縮む一方なのに、小さくなるパイの中で取り合うだけになるから。もともと生き残る業者は限られる。
 
では何が必要か。それを流行りの言葉で言えばイノベーションだろう。
 
マーケティングがすでにある(潜在的)需要を見つけ出して提供することなら、これまでになかった新たな需要をつくることがイノベーション。平たく言えば、新商品・新ビジネスを生み出すこと。
 
では、何が木材の新商品でありイノベーションになるか。木材(とくにスギやヒノキ)を使っていなかった分野への進出や、逆に商品になると思わなかった林産物を世に出すこと。
 
たとえば現在進められているCLTやバイオマス発電燃料は、一応イノベーションの部類だろうが、原木の価格が安くないと成立しないとか、安定供給不安という問題点を抱えている。もっと山側にプラスになる新商品はないか。
 
もちろん難しい。おいそれと見つかるはずがない。それでも私なりに考えたりする。
 
それをこのブログで垂れ流すつもりもない(~_~;)。だいたい誰にでもできるわけないだろう。それでもイノベーションを起こさないと先がないように思う。
 
 
 

2017/03/19

羊だって山羊だって……

気がつけば、3連休だったのね。
 
曜日の感覚が途絶えて久しいが、ちょっと車で出かけると大渋滞。陽気も手伝って、行楽シーズンのようだ。でも、私には関係ない(-.-)。。。
 
 
さて、このところ鹿の投稿が続いたが、奈良には鹿しかいない、わけではない。
 
羊だっている。
 
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山羊だって。。。
 
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ちなみに後ろの焚き火は、焚き火カフェ。焚き火を囲んでお茶する場だ。
 
私は、行楽に出たのではなく、これが日常なのである。

2017/03/18

Yahoo!ニュース「奈良の鹿伝説」……を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「「奈良の鹿伝説」を検証する」を書きました。

 
書いた理由は、このところ奈良公園周辺を訪れることが多くて、その度に鹿を観察していたから。正確にいうと、鹿と観光客がどんなことしているか、を見て歩いた。
 
今は3月なので観光シーズン到来だが、そもそも1月2月なんて、奈良はほとんど観光客がいなかった。寒いから。
ところが、ここ数年は外国人観光客が激増しており、いつ訪れても人だらけだ。しかも外国人の行動は、日本人観光客にはないものがあって、見ていてこちらも面白い。
 
 
ま、その「観光客の観察」の余祿としての奈良の鹿伝説の検証なのであった(笑)。
 
その一端を披露すると……。
 
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2017/03/17

Appleは大森林主だった

こんなニュースが目に入った。

 
 
アップルって、あのコンピュータのアップル?
 
Appleが環境保護団体と協力し、米メイン州とノースカロライナ州の森林を2015年に購入した土地で、昨年13,000トン以上の木材が計画的に伐採されたことが分かりました。
 
Appleの所有する、36,000エーカー(約146平方km)のサンフランシスコ市に匹敵する規模の広大な森林は、もともと宅地開発による消滅の危機に瀕していた土地で、2015年に環境保全と同社の資材調達先を兼ねて購入されたという経緯があります。
 
146平方キロメートルというと、1万4600ヘクタール。日本なら屈指の大山主だ。近い面積の自治体を探すと、川崎市が142,7平方キロメートルだった。
 
Triangle Business Journalが行った調査の結果、2016年にこれらの森林から13,000トンもの木材がAppleによって調達されたことが分かりました。これは2015年にAppleが製品のパッケージに用いた木材の30%に匹敵する量です。また、木材調達以外の面でも、伐採や植林などに従事する職員30人以上の雇用に寄与したとのことです。
 
1万3000トンの木材とは、ざっと2万16700立米。これが1年間の生産量なんだから、やはり桁違い。ちなみに神奈川県の年間木材生産量がざっと1万6000立米程度。  
アップルの製品パッケージに用いた木材の30%に匹敵とあるが、直接自社森林からの生産材を使ったのではなく、計算上だと思う。
 
いずれにしろ、木材生産でアップルが利益を上げたわけではないだろう。かといって、CSRだとか寄付だとかで金をばらまいたわけでもない。宅地開発で消滅しかけた森林を守って持続的な木材生産を行い、本来必要だったパッケージ用に活かしたのだったら、環境貢献に効果はあったのではないか。ある種のプロボノ(本業を活かしたボランティア・社会貢献)だ。もちろん会社のイメージアップ、宣伝効果もあったに違いない。
 
 
残念ながら、日本ではこうした動きをする企業の話はあまり聞こえてこない。近年ではトヨタやサントリーが森林を購入したり管理契約を結んだが……。
ただ、企業に責任があるとするのもちょっと違和感がある。これは森林を購入する企業がないというより、売り手の山主がいないからではないか。山主の多くは林業は「儲からない」と言いつつ手放そうとしないから。
 
一時騒がれた「外資が日本の森を……!」というのも、ほぼガセネタで終わったのは、実は外資であろうと国内資本であろうと、肝心の買える山がなかなか見当たらない点もある。
仮に購入しても取引単位が数ヘクタールでは話にならないだろう。少なくても数百ヘクタール単位で森林所有が流動化しないと、環境に寄与しない。経済的にも、やる気と資金に余裕のある企業が森林を所有して改革に取り組む方が林業が活性化する。
 
 
アップルも外資だが、日本の山を買わないか? 

2017/03/16

戦中の「伐ったら植える」

日本の山が、日中~太平洋戦争において大伐採されたことは、折に触れて記してきた。

 
それを拙著『森と日本人の1500年』には、次のように記した。
 
1940年 「国有林産物増産方針」
1941年 「国有林臨時植伐案」
1944年 「決戦収穫案」
 
ようするに軍需物資として国有林を伐採して木材を得ようという政策だ。かくして、日本の戦後は、はげ山からスタートせざるを得なかった。そして大造林が実施されるのだが……。
 
この度、たまたま読んでいた資料で、付け加える法律がつくられていたことを知る。
 
1945年 「戦時森林資源造成法」。
 
伐採跡地が放置されたままでは、銃後の国土保全が危ういとする意見が強く、しっかり跡地に植える法案が提出されたそうである。これは、そして4月2日の通常国会で可決している。戦争もいよいよ末期、本土決戦を覚悟する土壇場に成立したのだ。
 
実際にどれほど実行されたのかはわからない。終戦後は、反故にされた可能性も高い。しかし、林政担当者には「伐ったら植える」精神が非常時でも根付いていたのだろう。当然、政治家、軍部にさえ。
 
 
現在、日本各地で皆伐施業が広がっているが、果たして林業関係者に「伐ったら植える」思いは、どれほど残っているのだろうか。
 
「総量としては、日本の森林蓄積は増えている」から、この程度伐っても「森林は減らない」という言葉(言い訳?)ばかりが目立つのだが……。
 

2017/03/15

一歩先を行く?農業政策

林業界を観察していると、激変する周辺環境とは別に、な~んにも変わらない日本の林業現場という印象がある。
 
林政も、民主党から自民党に変わって以降、目立った変更がない。単に旧に復しただけだ。が、変わらずに続けられるとは思えない。では、何がどう変わるのか……。
 
そんなときは農業事情を見ると、少しヒントになる気がする。農業の方が、ちょっとだけ、林業より先を行っているからかもしれない。やはり農業の方が産業規模が大きいし、人口も多い、林業よりは……。世間の関心も強いし、圧力団体もある。で、政府も林業よりは農業の方に注力する。
 
 
そんなつもりで農業ニュースに目を通すと、こんな動きがあった。
 
静岡県は、所有者が不明の耕作地の利用権を農地中間管理機構に設定する知事裁定を全国で初めて行なう、というのだ。
 
これ、前提を知らないと何のことかと思うのだが、実は2014年の改正農地法で、所有者不明の農地については、知事の裁定で利用権を農地中間管理機構移転させることができるようになっている。
この機構とは、通称・農地集積バンクというが、都道府県に各1つ設けられている。何をするかと思えば
①地域内の分散し錯綜した農地利用を整理し担い手ごとに集約化する必要がある場合や、 耕作放棄地等について、農地中間管理機構が借り受け
② 必要な場合には、基盤整備等の条件整備を行い、 担い手(法人経営・大規模家族経営・集落営農・企業)がまとまりのある形で農地を利用 できるよう配慮して、貸付け
③ 当該農地について農地としての管理
④ その業務の一部を市町村等に委託し、農地中間管理機構を中心とする関係者の総力で農地集積・耕作放棄地解消を推進 
 
簡単に言えば、公の信用で、所有権はさておき所有者が不明の農地を実質的に取り上げ、他者に貸し出すということだ。
上記の静岡県の例で言えば、東伊豆の889平方メートルが、所有者も相続人も死亡し、少なくても10年以上放棄されている。そこに適用するという。すでに近隣農家の借りたい希望が出ているから、比較的スムーズに進みそうだ。
 
 
この手法、そのうち林地にも応用されるのではないか。
たとえば所有者が不明、あるいは所有者の同意を得て山林を一括して利用権を取り上げ、集約化して経営を別の林家に任せる、ということは有り得るだろう。どうせなら集約化した林地の境界線の不明確な部分も一括裁定してほしいが……。
 
日本の森林を奪うのは、外資なんぞではなく、宙に浮いた所有権であることは、そろそろ政治家も官僚もわかってきたのではないか。
 
 
もう一つ。
政府は閣議で国家戦略特区法の改正案を決定した。その中を見ると、農業分野(ほか観光、サービス)で就労する外国人の在留要件を緩和する項目がある。今国会で成立するだろう。いよいよ外国人が日本で農業をやる時代が来るかもしれない。
 
当然、林業にも広がるかもしれない。外国の林業技術者を雇用する時代が……。

2017/03/14

平和記念博覧会の「ご神木」

大阪は、2025年の万博誘致に燃えている(大阪の行政関係者だけ)。だが、今のところテーマさえも迷走していて、あんまりパッとしない。

 

ところで、戦前は内国勧業博覧会が開かれていた。さまざまな産業界が出展して、文字通り勧業と普及をめざす。現在のお祭騒ぎ一辺倒の博覧会と違って、明確に産業振興が目的だ。当時欧米で開かれていた万国博覧会に刺激を受けて始まったのである。

 
私は土倉庄三郎が出展したことから明治23年の第3回内国博 (上野)について調べたことがあるが、明治36年の第5回内国勧業博覧会も注目したい。こちらは大阪で開かれた。
 
その場所となったのが、現在の通天閣のある新世界だ。実は、この5回目を最後に内国博は終わってしまうのだが、規模は最大であった。
この5回目には、林業館 が設けられた。これまで農業や園芸と一緒の展示館だったのが、ついに独立したのだ。しかも館外には林業別館も設けられたという。
 
 
これが発展する形で、大正11年に上野公園で平和記念東京博覧会 が開かれた。平和とは第1次世界大戦が終わったことを祝う意味もある。ここに林業館も設けられた。
 
出展数は全国から4866点にものぼった。ただ、内容は各地の林産物や製材標本、森林・林政調査、技術見本……などで面白みはなかったという。ただ狩猟関係の展示もあったらしい。
 
 
だが、一人気を吐いたのが、帝国森林会が出展したご神木」だった。
 
説明によると、高さ約8メートルのスギの大木(模造)に注連縄が張られ、表面には無数の千社札が貼られていたそうだ。直径は記されていないが、写真家らするとざっと2メートルはあった。そして枝が2本あった。
またご神木の頂部には、林業の格言を書いた巻物を手にした天狗がいた。この天狗、なんと電気仕掛けで手や頭を動いた。さらに、枝の部分には8羽のハトが留まっていた。
 
そして、その樹幹の内部には自動的に回転するガラス板に彩色された各種の林業写真があって、周囲の16か所の穴から覗くのだ。覗きカラクリである。
さらに博覧会内では、林業映画が上映されていた。
 
これは人気抜群だったようだ。不可思議で面白くて、最新林業事情の勉強にもなる。
 
 
今も全国に森林関係の展示館はたくさんあるが、あまり「見せる」要素は少ない。森林内の動植物を再現したジオラマだったり、映像だったり。真面目だが、それほと印象に残らないのではないか。
こんな洒落のめした展示を心がけてもらいたいものである。
 
さて大阪の万博構想はどうなるか。私は、どうせ落選すると思ってる(笑)。
 

2017/03/13

木造洋館~奈良基督教会

スギバイオリンつながりで、奈良の木造建築を。

 
近鉄奈良駅からすぐの繁華街の一つ、東向い商店街の中程に日本聖公会奈良基督教会がある。明治30年に建てられた礼拝堂は、国の重要文化財に指定されている。
日本建築家教会の奈良地域会が選んだ近代化遺産にもなっており、実に風情のある木造洋館で和風と洋風が混じり合った建築だ。
敷地内に親愛幼稚園があるから、平日は誰でも簡単に入れるわけではないが、日曜日は礼拝日であり公開しているので覗いてみた。
 
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祭壇は、一瞬、神道的な趣を感じたのだが、しっかり十字架が置かれていた。
 
またパイプオルガンも備えている。
 
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天井がまた素敵。
 
ちなみに奈良では、聖公会とは英国国教会系の宗派だが、ほかにも高田基督教会や八木基督教会も木造の教会だ。
また桜井聖保羅教会も美しいコロニアル洋式を残す木造洋館の教会。
 
いずれも奈良の近代化遺産だ。奈良は古代史ばかりに注目が集まるが、明治時代の奈良も面白いよ。

2017/03/12

吉野杉のバイオリン

今日は、コンサートに行ってきた。

 
と言っても、奈良県立ジュニアオーケストラの定期演奏会に付属した? スギバイオリン完成披露演奏会なのだが。
 
ジュニアオーケストラは、幼稚園児から小学生、中学生、高校生まで(一部大学生)で結成されたオーケストラということで、これはこれで珍しくて面白げなのだが、やはり気になるのはスギバイオリンである。
 
これは、吉野杉によってつくられたバイオリンのことだ。
 
知事の肝入りで製作されたというのだが……。内幕を探ってみると、
 
知事「奈良の木を売るのに建材ばかりではなく、何か別の木工品の可能性はないのか。たとえば楽器とか……」
「わかりました。バイオリンを作りましょう!」
 
ということになったらしい。なぜなら知事はバイオリン弾きだから\(^o^)/。
 
しかし、バイオリンとはもっとも難しい楽器と言われるのに……いまだにその音色がどのように発せられるのか科学的には謎だという。
 
だから、いざ製作しようとなると大変。そもそもスギでバイオリンをつくってくれる職人がいない。みんな「つくってヘンな音しか出なかったり、何年か後に壊れたら、製作者が笑い物になる」と嫌がったから。また実際に「絶対、スギではまともな音は出ない!」と言われたそう。 それでもイタリアのバイオリン製作学校の学位を持つ鈴木郁子氏が引き受けてくれた。
 
結局、一般にはスプルース材を使う表の響板やバスパー、魂柱(それがどこを指すかは略。私もよう知らんし)に使うことになったそう。
 
材料は、30年前に伐られた270年生の吉野杉が使われた。一般にスギ材は音の伝わり方が遅くて音響部品には向いていないが、吉野杉の密な年輪なら可能ではないか、というわけだ。
 
かくして完成したら、意外や、よい音が出たのである。私は素人だが、それでも伸びやかで柔らかい音色に聞こえた。
 
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完成披露には知事も出席。
 
052 対談相手はコンマスの梅沢和人氏。
 
会場(奈良県文化会館)では、オケのコンサートとは思えない展示が(笑)。
 
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ただ、私が注目したのは、会場の壁。
 
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よく見てほしい。壁板は、全部吉野杉だよ。おそらくツキ板を張ったのだろうが、膨大な面積だ。その反響がよいのかどうか私には判断できないが、私はその木目に目を奪われたのである(笑)。
 
 
壁板はともかく、バイオリンをつくって吉野杉の需要が伸びるものではないだろうが、究極の木工品である楽器に使える素材だと示すのは、やはり価値があるかも。
ちなみにバイオリンの裏板や側板、ネック、指板などはメープルや黒檀といった広葉樹材を使う。そこにはケボニー化させたスギ材を使って完全なスギバイオリンを生み出すのも夢じゃないかもね。 

2017/03/11

Yahoo!ニュース「花粉症対策には……」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「花粉症対策には、道路の舗装を剥がすべし! 」を書きました。

 
この記事は、最初は「道路の舗装はいらない」という論争が関東大震災の復興時にあったことを知り、そこから連想したもの。花粉症の季節だし、震災復興とは今日(3・11)という日につながるし……というわけ。
 
 
ただし、ネット住民は最後まで記事を読まない、それどころかタイトルだけで反応する人も多いから、おバカな反応も起きるかもね、と覚悟の上。
 
案の定、マジに捉えてコメントを書く人もいるよう(~_~;)。ちゃんと私自身が暴論だと書いてるじゃないか。
 
何より、この記事で言いたいのは最後の2行。
 
何はともあれ、花粉症対策と称して「スギを伐れ」と山村ばかりに責任を押しつけるのではなく、都会なりに花粉の再飛散を抑える手立てを考えてほしい。
 
 
これは冒頭に記した(スギを)「全部伐ってしまえ」という世間に多い声に対する私なりのアンサーなのだ。
花粉症といえば、山村側に原因を求めて対策に伐採を持ち出すが、都会人に症状が多く出るのなら都会でも行なえる対策を考えてもいいだろう。
 
もっとも山村にも、花粉症対策補助金で潤っている林業関係者がいるけどね(;´д`)。

2017/03/10

怪しい街路樹

大阪の人形の町、と言えば松屋町。いっぱんにはマッチャマチと発音する。

 
そこで見かけた街路樹。ちょっとヘン。。。。
 
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この木何の木? 気になる木。
 
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怪しいのは、駐輪禁止という看板の前にわざとか?自転車が止めてあることだが……。
 
この木の葉を拡大すると、
 
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これはゴムの木だ! 正しくはインドゴムノキである。クワ科で、かつてはゴムの樹液を採ったが、今は園芸品種が作られ観葉植物となっている。葉の先を折ると、白い樹液が滲み出てくる。子供の頃、よくその樹液を採って遊んだものである。(ちなみに天然ゴムを生産するのはトウダイグサ科のパラゴムノキで、別種。)
 
珍しい木を街路樹にしているなあ。。。
 
 
いやいやいやいや。ゴムノキを街路樹なんかにしないでしょ! 基本的に暖かい地域の植物だから本州では鉢植えが多く屋内で育てるものだ。行政が街路にインドゴムノキを植えるわけない。
 
 
で、よく見ると、この街路樹のスペースには、鉢が置かれてあり、なかには小さなゴムノキがあった。ははん。近所の人が、ゴムノキの鉢植えを街路樹の植樹枡に植えたな……。
 
年月が経ち、すっかりゴムノキは成長して一般の街路樹に負けない大きさになってしまった、というわけではないか。。多分、元からの街路樹は枯れてしまったのだろう。その後にこっそり植えて樹種を入れ換えてしまったのだろう。
 
ゴムノキそのものは、上手く育つと樹高30メートルもの大木になるそう(東南アジア)だから、4、5メートルくらいならとくに驚くほどではないのかもしれない。
 
しかし。。。街路樹には似合わねえなあ。。。

2017/03/09

アマゾンは人工林だった

イギリスBBCで、次のような記事があったようだ。(3月3日)
 
 
南米アマゾンの密林で、欧州から人々が到着する前に、先住民たちが膨大な数の木を植えていた可能性があることが、このほど発表された研究で明らかになった。
 研究は、当時の植樹が現在の植生の構成に大きな影響を及ぼしている、と指摘している。研究者らによると、古代の居住地に近い地域では、食料や建物に使われた樹木の種類がほかの地域よりも大幅に多いことが分かった。 ……
 
 
アマゾンの1000カ所で植生を調べ、古代の居住地があった場所とそうでないところを比較したところ、ブラジル・ナッツやカシューナッツ、アサイー、ゴムを生産する85種の樹木が多数を占めるケースが、野生の樹木が多数を占める場合よりも5倍になっていることがわかった。
これは先住民が、自ら利用する樹種を植えるなり保護して、植生を改変したからではないか、というわけだ。
 
元ネタはアメリカの「サイエンス」に掲載された、オランダ・ライデンのナチュラリス生物多様性センターのハンス・テア・ステーゲ博士のチームによる研究らしい。2013年の発表とのことである。
 
最新研究結果ということになるが、私自身はこのような情報をもっと昔から目にしていたので、それをより科学的に証明したことだ、と理解している。
 
たとえばブラジルのゲルジ博物館の研究などは、今から30年くらい前だ。シングー川流域に住むカヤポ族がつくる人工林アペテの研究である。そこからアマゾンの森の3分の1から3分の2は先住民のつくった人工林だとしている。
 
この点は、1999年に発行した拙著『伐って燃やせば「森は守れる 」』にも記した。(2011年出版の『日本人が知っておきたい森林の新常識 』にも掲載した。)
 
 
今風の人工林という言葉に抵抗がある(プランテーションと区別したい)のなら、アマゾンは里山であった、と言ってもよいかもしれない。 
ペルーアマゾンには、古代に作られた巨大な農耕跡と人工的な湖が多数見つかっていて、アマゾン文明の存在を指摘する意見も在る。
 
人類が、地球の生態系に大きく関与しているのは、アマゾン以外でも間違いない。これは何も自然を破壊したのではなく、自然と寄り添うように進化したのだろう。
 
これこそ、自然と人類の共進化なんだろうなあ。
 

2017/03/08

人が食えるシカ肉とは

狩猟や有害駆除されたシカを専門に解体する施設を見学してきた。

 

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到着すると、罠にかかったシカが専門の解体場に持ち込まれていた。その一部始終を見たし、撮影もしたが、ここで披露したらグロい印象を持つ人もいるだろうから、止めておく。
 
簡単に段取りを紹介すると、1頭解体するのにかかる時間は10分あまりで、それを数日間冷蔵庫で熟成させる。
 
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布を巻いてあるのは、表面が乾燥しないよう。
 
そして、部位ごとに肉を切り分けるのだが、驚くほど人が食す部分は少ない。そもそも肉はシカノ体重の3割程度だが、美味しくいただくモモやヒレなどは、さらにその3割ぐらいか。
 
で、切り分けた肉は……。
 
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これはモモやウデの部分だと思うが、赤身で美味しそうじゃないか。。。。
 
が、これはドッグフードの原料行きなんだそうである。人には食えたものじゃない、と。この肉も、オレンジ色だという。(人によっては、気づかず「これがシカ肉」と食べるそうだが……。)
なぜかというと、「焼けている」とか「ムレ肉」というそうだが、処置が悪くて味が落ちてしまっているそうだ。   
罠にかかっていても、数日放置したり、暴れたり、トドメを上手くさしていなかったり、あるいは死んでから時間が経っていたり。さまざまな理由で肉の味は落ちてしまう。すると市場に出せないそうだ。 
シカ肉をジビエと持て囃すのはいいが、その供給がいかに大変なことか。
 
ちなみに、私は本当に美味しいシカ肉を購入させていただきました。
 

2017/03/07

謎の防災ヘリ

昨日、我が家の上空をヘリコプターが飛び回った。

 
冗談でなく、旋回を続けること、おそらく30分以上。しかも低空、いや超低空なのである。
正確には、我が家というより我が住宅街と、それに隣接した雑木林の辺りである。
何事か、と思わせる。
 
Dscn0249
 
ベランダから撮影。隣の家に触れないかと心配するほど。
何か事件か?
 
目的が不明。当初は訓練かと思ったのだが、それにしては滞空時間が流す伐るし、何よりも人家の上空を低空飛行しないだろう。
 
ヘリから何か測定しているのか? 
 
アップしてみると、奈良県の防災ヘリであることがわかったが(名称・やまと)、では山火事でも発生したのか。
……そんな気配もない。煙も見えないし、そもそも消防車が来ていない。だいたいヘリで消化するような場所ではない。
 
 
Dscn0250
 
とうとう、樹木の間に下りていく。危険すぎる高度。住宅街から数十メートルの場所だ。そこには溜池があり、谷になっているのだが……。
 
では、人命救助?
 
ここで人が溺れたとか、ハイカーなどが骨折して動けないとか?
 
いやいや、住宅街の縁から数十メートル、一応道もあるし、ヘリを使うくらいなら人手で担いで運び出せるような場所なのである。 
だいたい旋回する必要ないではないか。超低空まで下りたものの着陸した様子はなく、また何かを吊り上げたようにも見えない。
 
私はこのとき、仕事部屋で珍しく資料本の読み込みをしており、この騒音ですっかり集中力を失った。人騒がせであった。
 
思わず地元ニュースで報道はないかと探すが、何もなく。
ただ、長野県の鉢伏山にヘリコプターが墜落したニュースが……。
 
それと比べたら、墜ちなかっただけよかったのか。。。

2017/03/06

見えない道に導かれ……

タイトル、ちょっと宗教的(^o^)。

 
 
久しぶりに生駒山に登る気になった。運動不足解消という喫緊の課題もあったのだが、この冬はあまり森に分け入っていないと感じたのである。森は歩いている,ただし道から外れていない……。
 
だから、今回のテーマは、もちろん道なき道を登る。
思えば、2年前に遭難ツアーを催して道なき道を登ったのだが、参加された廣友さんは、その後急死されたのだったなあ。。。
 
 
 
今回の狙いは宝山寺の近くの小さな渓流であった。宝山寺は生駒山の中腹にあるが、その周辺には意外と川がある。小さな流れではあるが、枯れることなく水が湧いているのだ。中腹以上は傾斜が急で溜池もないし、どこから湧いているのか気になっていた。
 
そこで、水の流れを追いながら、山頂をめざすのが、今回のミッション。
 
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まず分け入ったところ。渓流そのものを歩くと濡れるし、歩きづらいから少し距離を置いて、比較的分け入りやすいところを選んだのだが、なんということか、ビニールテープの印が。
先客がいるのか。もしかして、土地の境界線を測量でもした?
 
が、こんなテープに惑わされることなく、私は私の勘において、進む方向を決めるのである。
 
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あれ。またテープが。私は私の判断で歩くルートを選んだのに、テープの先客と同じ方向を選んでしまったか。
 
冬だから落葉樹の葉がないことに加えて、常緑樹が多くなって林床が開いているので、歩きやすい。それでも私は私の判断で斜度や地形、茂み具合まで読んで選んだつもりなのに、先客と同じ……。
 
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あれ。。。またテープに出会ってしまった。さては、このテープの主も川の源流を目指したのか? 谷を歩くと否応でも同じルートになってしまう。
それなら、こちらは川から離れて尾根をめざして進もう。他人の進んだ後を進むのはいやだ。
 
020
 
うわっ。もう出会わないつもりのテープがまた現れた。
決して足跡も道もないのに、私が森の茂みを眺めて進むべき方向を選ぶとき、見えない道を感じてしまうのだろうか……。
そういや、私は獣道が見える。 茂みの中に、主にイノシシが通った部分がわかるのだが、人が茂みをかき分けた跡も無意識に見つけて「通りやすい」ルートと認識して選んでしまうのか。 
まるで見えない道に導かれるように。
 
 
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おっと。そんなこと考えつつ、まるでテープの跡を追うように進むと、渓流の源流部を発見してしまったよ。広い尾根の中の幾分の窪みから水は湧いているようだ。ここは、もう山頂に近いはずだが……。
 
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とうとう、山頂(の尾根筋の道)に出た! と思ったら、なんと鉄条網つきフェンス(泣)。
こ、これは乗り越えられん。
しょうがないので、フェンスを遠巻きに進むと、またテープが。。。このテープ主も道に出るために彷徨したのか? 
ここまで来たら、私も大人しくテープのある方向へ進んだ。そして、ついに道路に出られたのである。
 
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生駒山上に並ぶ鉄塔群。これらはみんなスカイツリーより高いということを知っているだろうか? 
 
そして、ああ、憧れの飛行塔。日本でもっとも古い遊園施設である。もはや文化財だ。
 
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遊園地は現在休園中だが、16日から開園しますよ。。誰か乗りませんか、一緒に(^o^)。
 

2017/03/05

日経新聞の林業記事が核心を

このところ、日経新聞の林業記事が核心に近づいている。

 
いや、私がそう読み取っただけかもしれないが……。
 
まずは、2月28日配信のこの記事。

林業担い手「不足」9割、人材の確保急務 本社調査

 
前半は、林業で人手不足が深刻という調査結果を示している。
 
林業に従事する人が不足しているかどうかを森林組合に聞いた。「不足している」は43%、「やや不足している」も41%あった。9%は「不足して経営に影響が出ている」と答えた。
とくにどうこう言わない。問題は、その背景というか理由だ。
 
 
人手不足の解消に必要なこと(複数回答)を森林組合と住宅メーカーに聞くと「賃金・待遇の改善」がそれぞれ90%、74%に達した。
 
林業の担い手を確保する上で大きな課題の一つが所得の低さだ。林野庁のアンケート調査結果によると、2013年度の林業従事者の1人当たり平均所得は305万円。全産業平均の414万円を26%下回る。
 
そう、所得の低さが人手不足の要因なのに、それに目をつぶって「需要の拡大」を叫ぶのは馬鹿げている。
そして、所得が上がらない理由は、第一に原木価格の下落だろう。私はそれだけでなく、ニーズとマッチしていない点や、頭から従業員の所得を上げようと思わない経営者が少なくない問題もあると思うが。
 
その点は、
背景には木材需要の減少による丸太の値下がりがある。調査で森林組合に林業の課題(複数回答)を尋ねたところ「丸太の販売価格の低さ」(78%)が「従事者の不足」(57%)や「国産材需要の少なさ」(43%)を上回りトップだった。
 
 
日経新聞の記者さん、この問題をもっとクローズアップしてはどうか。私なら「人手不足」より、この点を記事のメインに据えるが。
 
 
一方、3月2日付けには、こんな記事が掲載された。

 

これは、また別の意味で面白い。記事のメインは、新建材、つまりCLTだ。岡山県真庭市を中心にCLTの建築が続々と増えていることに触れている。そして、これが木材需要の大きな波であるとしているようだ。
 
木材の住宅需要が減少しているので、非住宅建築物(公共施設、商業施設)に木材を使うことを期待し、そこではCLTが有望だから、CLTが木材需要を伸ばすのではとする。
 
関係者が望みをかけるのが大型施設だ。林業調査で森林組合と住宅メーカーに期待する建築分野(複数回答)を聞くと、84%が公共施設、52%が商業施設を挙げた。
 
028  CLTによる社屋建設。
 
 
そしてバイオマス発電にも触れる。
 
木質バイオマス発電もその一つ。調査では87%が期待すると答えた。
 
 
このように、新たな木材需要が林業再生に結びつくだろうと描くのだ。 
だが、もっとも注目すべき点は、次なのではないか。
 
ただ新たな用途を開拓しても、難題が残る。CLTや木質バイオマス発電は、主に角材に適さない曲がった木を使う。収入の柱となる高品質丸太の需要にはつながらない。山陰の森林組合は「低単価の需要拡大は意味がない」と言い切る。
一方、住宅メーカーの61%は林業の課題(複数回答)に「高コスト」を挙げた。売る側と使う側の意識の開きも大きい。
 
 
記事の付け足しのように記しているが、CLTやバイオマス発電では、利益率の高い高品質丸太(A材のこと)が売れるわけではないというのだから、記事の根幹はここにある。  
 
 
私は、CLTが悪いというのではない。それなりに魅力的な建材であることは繰り返し記してきた。ただ、本当に国産材を使って作るのか、輸入CLTに席巻されるのではないか、という疑問に加えて、いくら国産材のCLTが売れたとしても、それは林業家の収入増にはつながらないということだ。
同じく、バイオマス発電も、廃材を利用する点に関しては大いに推進すべきだと思う。願わくば発電だけでなく熱利用もしてほしいが。
 
しかし、山に金が還元されないかぎり、林業現場の人手不足は続くし、日本の山は荒れ続けるのである。
 
日経の両記事は、林業問題の核心に触れたのだけど、記事としてはクローズアップしていない。本気で問題だと気づいているのかなあ。
 

2017/03/04

改めて、バイオマス発電所

この前、吉野から車を走らせていたらいきなりバイオマス発電所の前に出たので、あわてて停まってパチリ。

 
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奈良県唯一のバイオマス発電所である。
 
その隣には、燃材のストックヤードもあった。それらを覗いて写真を撮っていると、所員が出てきて注意された。勝手に車を止めてはいけない、敷地内に入ってはいけない、というのだが、警戒しているのか? 
もっとも、私は「工場萌え」のファンのふりをして撮っていたが(⌒ー⌒)。
 
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燃料が、写真のような木屑に近いものばかりだといいのだが……。丸太も積み上げている。どこから集めているのか気になる。
 
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なんと、奈良県には新たにもう一つバイオマス発電所の計画があるそうだ。今でさえ燃料集めるのに四苦八苦の有り様なのに、どうする気だ?  認可されるのだろうか。。。。
 
 
そんな時に読んだのが、このブログ。
 
 
ドイツ在住の村上敦さんのブログで、「日本で持続的に利用可能な木質バイオマスの量は?」という題目でアップしている。
 
このブログは、ドイツやオーストリアの環境政策や森林事情を知るのに有り難いのだが、とくにヨーロッパのバイオマス発電事情は面白い。日本ではドイツやオーストリアをバイオマス利用の先進地として紹介するものばかりが目立つのだが、そんな“期待”をぶっ飛ばす記事が多く載る。
 
今回も私と同意見というか、非常に納得できることが書かれているが、とくに私が引っかかったのは、
 
 これでやったことで、ドイツでも、オーストリア(ウィーンやギュッシングなんか本当に死んでいます)でも手痛い失敗を過去にしたわけです。
 
この一文だ。何をやったかというと、
「自分の地域だけは、入念に地域における需要量と供給量を計算しているから大丈夫だとうそぶく」
「地域で供給できる木質バイオマス(チップ)の量を、地域にある森林面積やその蓄積から推計して計算していることがほとんどであること」

である。詳しくは、リンク先をよく読んでほしいが、実際の調達能力を無視して潜在的資源量だけで計画を進めてしまっているのである。
 
なかでもギュッシングが登場したところに目が止まった。
 
オーストリアのギュッシング市を知っているだろうか。小さな田舎町なのだが、バイオマスエネルギー利用で一躍豊かな生活を送っている! と日本からも視察団が殺到、大絶賛された町なのだ。とくにNHK番組、および大ベストセラーになった「里山資本主義」で取り上げたことで有名になったのである。  
 
私は、現地に行ったわけではないから「ギュッシング市は、例外的に上手くいった町なのかな」と思っていた。きっと製材が盛んで燃料も製材屑が調達できるのだろう……。
 
ところが、村上氏に「本当に死んでいます」と書かれてしまった。
ここを視察に行って、日本でもバイオマス発電を、と唱えた人は誰だ。。。(失敗を過去にした、とあるから、今は復活しているのかどうか知らない。)
 
 
ああ、里山資本主義もバブルを経て、死んでしまったか。。
 

2017/03/03

階段木琴

ちょっと奈良県森林技術センターに寄ったら、こんな木工品?を見かけた。

 
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何かわかるかな? ヒノキ製と思う。
 
ヒントは、イチバン下にあるコレ。
 
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ここにある木の球を、イチバン上から転がすのだ。
 
そう、ころころ転がり落ちながら音を奏でる階段木琴であった。形はいろいろあるようである。音の鳴る仕組みもさまざま。
一度転がしたのだが、何の曲だったかな。童謡のような、「赤とんぼ」だったかな……。
 
以前、森の中に仕掛けた木琴が奏でるコマーシャルがあったと記憶している……探してみたらありました。DoCoMoのCMであったか。
 
 
 
センターにはこれ1台ではなく、何台かあるそうだが、イベントなどで人気だそうである。
 
楽器と木材は、ナカナカ相性がよい。木材に変わる素材は少ない(素材を変えると音色も変わるから別の楽器になる)からだ。木材の利用法の中で、ある意味最高の代物といえるのではないか。使われる量は少ないし、天然ものゆえに木材の中でも選ばれた部分だけだが、感覚に訴える面からもアピールにもってこいだ。
木材価格も楽器用となると跳ね上がる。
 
 
そういえば、奈良県はほかにも吉野杉で楽器づくりを進めていたな……。(続く。いつかわからんけど。)

2017/03/02

専門職業大学が誕生する

この4月から林業学校が3校増え、全国19校になる。兵庫県の森林大学校、岩手県の林業アカデミー、和歌山県の農林大学校に新設される林業経営コース……。

今後も計画・構想は目白押し。また短期の林業研修コースを設けている自治体もある。
 
 
ま、こんなに増設・拡大することの善し悪しはともかく、一方で専門職業大学を設立する動きがある。
 
専門職業大学は農業や観光、ITといった分野で経営者層を育てることが目的とかで、4年生大学や短大と同じ学校教育法に位置付ける。つまり卒業すると、大学と同じ「学士」が得られるわけだ。(今国会で同法を改正予定)
だから専門職業大学は4年制か2~3年制にする。ほかにも条件としては、専任教員の4割以上を実務経験者にすること、企業内実習を2年間で300時間、4年間で600時間以上……などがあるそうだ。とにかく経営者として必要な実践的な内容を学べることが目標だ。
 
その一番手として考えられているのが、農業大学校の改組。今のところ静岡県の農業大学校が手を挙げているそうだが、さて全国に広がるだろうか。
 
 
と聞けば、その流れは林業学校にも来るのかと考えてしまう。静岡の場合は農林大学校だから、林業コースはどうなるのだろうか。
 
ワーカー(作業従事者)ではなく、経営者を育成しようという考え方は賛成だが、学校教育法に馴染むかどうか、と考えると疑問もある。
 
そもそも、現在の通称「林業大学校」の中で、学校教育法に沿って「専修学校」扱いで設立されたところは少ないはずだ。農業大学校の場合の法的根拠は、農業改良助長法だ。
 
林業大学校も自治体の林業関連部署直属だったり、社団法人や森林組合の塾的扱いのところもある。
なぜなら、その方が自由度が高いからだ。学校教育法に沿うと、一般教養や体育なども含めないといけなくなるとか、上記のような授業時間に枠がはめられる。それでは、新しい実習や講座が開けなくなりかねない。
 
林業理論も、あまりにバラエティがありすぎて、定番を教えることが難しそう。
 
さらに言えば、林業で専門職業大学を作っても、専業林家なんてほとんどいない(食えない)わけであり、新規就農者が農地を得ること以上に自分の土地(林地)を確保するのが難しい。だいたい経営を考えるなら、100年単位だ。
 
ああ、成長分野の経営者を育てる、という専門職業大学の趣旨から林業は外れているわ。。。むしろ既存の林業経営者を学び直させる必要があるわけか。
 
 
そのように考えると、日本の林業って、つくづく「学校」が似合わないなあ(⌒~⌒ι)。
 

2017/03/01

女子大生の土倉発表

大都会の埼玉~東京から帰った翌日は、吉野の川上村へ。

 
実は日本女子大学の学生が4人来訪したのだ。そして、土倉庄三郎について調べたことを(主に)村民に発表するという大舞台。参加しない手はありませぬ(~_~;)。
 
そもそも日本女子大学と庄三郎は、並々ならぬ関係がある。成瀬仁蔵が女子大学を創設しようと思って最初に頼ったのは庄三郎であり、広岡浅子(NHK朝ドラ「あさが来た」主人公モデル)とともに大学側には大恩がある。
 
昨年の百回忌もあって、ゼミ生が土倉家について調べたものを教授会(的なもの)で発表し、好評を博したので川上村でも行なってもらうことになったのである。
 
これを私的には、今年の土倉翁没後100年に際して行なう連続イベントの第1回と位置づけている。
 
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発表は3人で。4年生二人に3年生一人。
 
内容?  いや、清々しい(^o^)。
 
特段新しい事実はなかったが、それでも女子大側に残されていた「土倉氏ヨリ借入金」(1700円分)の証書は興味深い。庄三郎は5000円を寄付したことで知られるが、それ以外にも借金の形で金を拠出していたことを示している。果たして返済されたかどうかは怪しいが……。
 
ほかにも女子大の舎監として務めた土倉千代(庄三郎の弟の孫)の話も登場する。
 
会場からいくつか質問(というか、林業等に関する解説)も出た。私も、実は甘いところを突っ込み、宿題を課す(笑)。
ついでに土倉情報の収集も依頼。このことは、彼女らの指導教官にもお願いしておいた。転んでもタダでは起きない(⌒ー⌒)。 
 
 
終わってからは村長とも面談。なぜか私も同席。
 
2 (左端が村長)
 
 
その後、彼女らは林業体験を行なうことになる。今春卒業する二人は、どちらも小学校の教師になるそうで、森を育てる林業から人づくりも学んでもらおうという趣向である。
 
私は、遠慮しましたけどね(^0^)。

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