昨年末に、土壌ジャーナリスト最後のスクープ! として「樹木が土壌を変える 」という記事を書いた。
そこでも触れたが、それに関する論文が発表されて手に入れたので紹介しよう。
具体的には、「樹木医学研究」第21巻第1号に掲載された「生物検定を用いて明らかにした樹幹周辺土壌の樹種特性」(伊藤幹二・伊藤操子)である。
党の本人のいうには、「まず入口の現象を見える化したもの」だそうで、次は森林学会に本格的な論文を発表予定だそうである。
ここでは、樹種によって周辺土壌の特性が変わることを示すとともに、その理由として樹幹流に注目している。樹幹を流れる水は、内皮に触れて成分を変化させ(物質交換し)、土壌を自分の都合のよい状態に能動的に変えていくというものだ。
これまで植物は毛細根と葉(の気孔)でしか物質交換をしないと思われていたが、近年はもっと広く環境に関与していることがわかってきた。ある意味、全身で環境と能動的に向き合っているのだ。
なんか、「人間も皮膚呼吸しているでしょ」と言われたような気がする(~_~;)。
まずは要旨。
全部掲載するわけにもいかないので、「はじめに」を。
そして考察の一部分。
さて、学界では、どんな反応が出るのだろうか。
通りすがりで失礼します。興味深く拝見しました。田中さまの本、昔いくつか拝読しました。応援しています。
ちなみに植物の種によって幹周辺土壌の性質が変化することや、微生物の組成や機能が変化すること、そしてその変化が次の世代(稚樹)の成長に影響を与えることなどは、結構昔から議論されてますよ。樹幹流ではなくリターの成分に着目した研究がほとんどですが。
投稿: | 2017/04/06 23:40
ありがとうございます。
この論文にも先行研究が紹介されているように、周辺土壌の変化は既知ですね。その検定をレタスなどの植物を使ったところが新しいかな、と思いました。そして樹幹流に焦点を当てたところ。リターのような受動的影響ではなく、樹木が能動的に土壌を変えようとしたのでは……と思わせます。
まあ、ここに記されたのは入口ですので、本格的な論文を出たら論議が進むのではと期待しています。
投稿: 田中淳夫 | 2017/04/06 23:53