朝日新聞の土曜別刷(beフロントランナー)に、島根県安来市にあるの足立美術館の庭師(庭園部長)が紹介されていた。(小林伸彦さん)
この美術館の庭園は、2003年からアメリカの専門誌が選ぶ庭園ランキングで14年連続の日本一に選ばれており、世界的にも人気が高い。国内外から年間50万人以上が訪れるそうだ。
そんな庭園をつくる大変さを語っているのだが、ふと、そうかと思ったのは、後半のこんなセリフ。
「幹が太くなってくると、すぐに元の大きさ、形のものと植え替えられる」
そのために仮植場に様々な大きさのマツを育てているのだという。また変色した松葉や鳥にほじくり返されたコケも、すぐに取り除いたり補充したりするという。
そうかあ。ここでは庭の美は、止まった時間の中にあるのか。。。庭を一幅の絵画のように、一瞬の景観を切り取りとどめるものかもしれない。
一方で「5年先、10年先の庭木の姿と庭園全体の調和を想像しながら剪定します」ともあるように、わずかな生長は計算に入れているのだろうが、絵画そのものを変化させてはいけないのだ。
なんだか、造園と森林の美の違いのようなものを感じた。
私が最近関心を抱いているのは、エルフガーデンだ。これは自然風花壇と訳すようだが、ようは自然景観のように仕立てる庭である。つくられた景観ではなく、自然景観に似せて造る。
具体的な条件には、
多様な種類の植物の植栽。
不規則な配置。
風にそよぐ植物の配置。
イネ科・カヤツリグサ科などの観賞用の草類。
実生で生える植物の自然な配置
支柱の必要な植物(とくに花など)は配置しない。
一年草より多年草
デザイン的には、より複雑になる。たとえば……
花よりも葉の形や色、質感などを重視する
一度に多くの植物が視野に入るデザイン
鑑賞期間の違う植物を組み合わせて、季節の変化を感じられるようにする。
裸地部分を極力減らす
結果的に、管理が楽になって除草期間も集中せずに労働を分散化されるそうだ。
なんだかんだ言っても自然そのものではなく人が計算して景観を作り出すのは変わりないが、少なくても時間を止めるのではなく、変化することを景観に取り込んだ庭園だ。
見た目も「写実主義の絵画」ではなく「田園の里山風」にするのだろう。もっとも絵画にだってバビルゾン派のような里山景観を喜んで描くものもあるが……。
もっとも、私もまだエルフガーデンについてはよくわかっていない。ただ庭園美の新潮流ではないか、という気がしている。
戦前、林業芸術論という論争があって、林業は芸術になるか、造園とは違うか、なんてことが議論されたのだが、ふと造園の世界でも美の変遷があるのではないか、と思った次第。
国際『盆栽展示会』に出かけるかどうか?!愚図愚図してますが、
朝日新聞の土曜別刷(beフロントランナー)も見たりとか、田中さんの記事にある幾つかのテーマを検索したり・・・の方が、(新横浜から)埼玉に出かけるよりも有意義かな?!と思ってます。情報有難うございます。
投稿: ベンツ仙人 | 2017/04/29 11:07
盆栽展、私も興味あったんですよ。今や世界のボンサイですから、新潮流を見てきてください(^o^)。
エルフガーデンも、検索したらゲームの名ばかりが出てきます(;_;)。どこかに詳しくまとめた文献はないものか……。
投稿: 田中淳夫 | 2017/04/29 11:32