村尾行一著『森林業』が出版へ
現在、愛媛大学客員教授を勤める村尾行一氏の新著が、まもなく出版される。
1 ドイツ林業とは何か
2 「ドイツ」とはどこだ
3 ドイツにも山岳林がある
4 日独林業の本質的違い
第1部 ドイツ林業の個性
第1章 ロマン主義の申し子
1 《自然》と《弁証法》を発見したロマン主義
2 文化論なくして林業論なし
第2章 「ガイアー革命」
1 生態学的林学の成立
2 ガイアー林業思想の要諦
3 不定形で、多様で、小規模な森林こそ最良
第3章 多機能林業論
1 林業とは一つの森林から多機能の同時発揮
2 林業の社会性重視と主要産業化
3 「社会的市場経済」の熱情的な擁護者
4 多様な事物の多様なままでの総体把握
第4章 森林機能計画制度
1 ディーテリヒ多機能林業論の制度化
2 バイエルン森林機能計画制度の骨子
3 「利用機能」の発揮はどの森林でも
第5章 「フリースタイル林業」
1 林業における資本主義の限界性
2 森林の多様性・動態性ゆえの「フリースタイル林業」
3 「育林は森の心で」
4 《経済》と《公益性》と《森林美学》と《保健休養》の自同律
第6章 「フォルスト」と「ヴァルト」
1 かつて「フォルスト」は森林とは別概念だった
2 「木材窮乏」がもたらした「フォルスト」の意味変化
3 「林業」から「森林業」へ――森林利用の発達
第7章 「持続可能原則」の揺らぎ
1 「持続可能原則」は発想のコペルニクス的転換ではない
2 「ヘルシンキ総指針」
第8章 ミュンヘン・チューリヒ同盟
1 スイス林業の大改革
2 日本に輸入された「近自然的河川工法」
3 アルプスの国・スイスにおける小私有林の意義
第9章 北ドイツへの宣教
1 「森林業」を題名にした「人間・森林系総論」
2 遅れた北ドイツ林業制度
第10章 「照査法」
1 徹底した現実重視の単木施業
2 照査法を大成したギュルノとビヨレイ
3 日本はクヌッヒェルの提言に学べ
第11章 「恒続林思想」
1 プロイセンでも生まれたミュンヘン・チューリヒ流林業思想
2 「恒続林」とは何か
3 「恒続林施業」はアカマツ林に特化した施業ではない
4 「恒続林施業」と森林美学
第2部 ドイツ林業前史
第1章 かつて森は魔界だった
1 森は恐怖の暗黒空間
2 林業人・山村民は賤民だった
第2章 絶対主義の財政基盤
1 木材依存型体制
2 自己否定する重商主義
第3章 「木材窮乏」が生んだ「持続可能な林業」原則
1 苦肉の策の「保続原則」
2 劣悪なドイツ林業従事者
3 成果なき人材養成策
第4章 コッタによるターラント森林アカデミー創立
1 《林学古典派》??「ゲーテ時代」の人びと
2 近代的林学高等学府の創立
3 《ターラント林学》の特性
第5章 伐期齢問題
1 林業における「伐期齢」の意義
2 自然的伐期齢説
3 工芸的伐期齢説
4 材積収穫最大伐期齢説
5 貨幣粗収穫最大伐期齢説
6 森林純収穫最大伐期齢説
7 土地純収穫最大伐期齢説
第6章 ユーダイヒ──ターラント林学の大成者
1 ユーダイヒ森林経理学
2 日本林業のモデル
第7章 「ノルマールヴァルト」(法正林)とは
1 「ノルマールヴァルト」とは
2 理念型か達成目標か
3 現実の多様性を捨象してのみ措定できる法正林思想
第8章 ターラント林学の限界性
1 林業の思弁的規律
2 排除の論理
3 「マスト林業」──豚と共にある林業
4 ターラント林学は過渡期の林学
第9章 ドイツ林業の地域的多様性
1 目標林形の設定
2 生産目標の設定
3 西南ドイツ林業の問題性
第3部 ドイツ人にとって森とは何か
第1章 森と都市
1 森あってこその近代都市
2 かつてのミュンヘン
3 森の中の都市、都市の中の森
4 都市林の改造
5 都市林の造成
第2章 都市林こそが森林業の精華
1 人と猪の母子が一緒にお散歩
2 都市こそが森林に最も多くを、しかも最も強く求める
第3章 森で憩い、楽しむ
1 大工業都市だからこそ「市中の山居」
2 「氷雨でも森へ行くッ」
3 「森の幼稚園」
4 「市中の田舎暮らし」──クラインガルテン
5 「ウアラウプ」(有給休暇)の第一の行き先
第4章 森のウアラウプ
1 道路
2 森林立入権
3 宿泊施設
4 食事
5 国有林の役割
第4部 最高の頭脳が集まる森林業の人材育成
第1章 医師は一時に一人を救い、森林官は同時に万人を救う
1 憧れの職業
2 ムルナウにて
第2章 林業従事者の職種と職務
第3章 高等森林官の職務と養成課程
1 高等森林官の職務
2 高等森林官の養成課程
第4章 上級林業技師の職務と養成課程
1 高度な人材を求める新事態
2 林業大学校の履修課程
3 上級林業技師の主たる職務
第5章 林業士の職務と養成課程
1 ドイツ林業士の質
2 林業士の養成課程
3 作業士学校の主要履修科目
4 国家試験と主たる就職先
5 さらなる進路
第5部 日本林業再興への処方箋
第1章 過去の栄華が現在の禍根
1 「吾ガ咎ハ常ニ吾ガ内ニアリ」
2 未曾有の活況に惑乱した戦後林業
第2章 《外材時代》への誤った対応
1 外材輸入解禁問題
2 《優良材》という獣道への逃避
3 いわゆる「将来木」について
4 枝打ちの危険性
第3章 間伐と枝打ちの生態学
1 森林は隙間だらけ
2 林分総葉量一定の法則
3 間伐するなら集約的な「定性収入間伐」を
4 列状間伐は〝劣情間伐〟
5 《上層枝打ち》もありうる
第4章 乾燥の重要性──ヨーロッパ材が吉野まで来る理由
1 木材の良さは乾燥材なればこそ
2 伐採の機械化、運材と貯木の陸上化が乾燥工程を省略した
3 無乾燥材の致命的欠陥
第5章 東濃檜物語
1 東濃檜はなぜ天下一の銘柄材になれたのか
2 東濃檜はあくまでも「製品銘柄」
3 東濃檜の教訓
第6章 「分裂せる市場」構造
1 「貧困の価格」か「価格の貧困」か
2 流通の「蛸壺」化による「一物多価」現象
3 「多種目少量」を「少種目一括」に《変圧》できない流通
4 「そんなに材は集まらない!」
第7章 秋田の国有林で見たこと
1 秋田杉問題
2 実際の国有林は《分国有林》
3 「ノン・キャリア」組の難点
4 広域販売こそが要諦
5 ドイツ高等森林官の高い移動性
第8章 「盗伐問題」と「違法伐採」
1 入会とは何か
2 「林野官民有区分」の目的と実態
3 『夜明け前』悲劇
4 「国体」VS.「入会」
5 「違法伐採」・「合法木材」問題私論
第9章 木材栽培業から森林業へ──日本林業の発達的回生
1 日本林業起死回生策要綱
2 日本でも天然更新は容易
3 「焼畑林業」再考
4 〝有害動物〟の林産物化
5 農業モデル化の弊害
6 梶本式立木乾燥法を起点とする乾燥システム
7 楽に伸びる国産材需要
8 日本森林業の主要産業化
9 里山私論
10 担い手の集団と担い手の養成
終章 「社会的市場経済」と森林業
1 「全ての国民に繁栄を」
2 なぜ「人間の顔を持つ資本主義」なのか
3 「社会的市場経済」に日本林業が学ぶもの
4 森林業は情報産業なのだ
あとがき──本書の思考様式的背景
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