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2017/05/09

火の生態学

連休後半から各地で強風にあおられた大火事が相次いでいる。なかでも森林火災、山火事は関東~東北で頻発した。栃木の那須、福島の浪江、宮城の栗原、そして岩手の釜石。何日経ってもなかなか完全鎮火しないようだ。

現地では、関係者みんな大変な思いをしていることと思う。早急な鎮火を祈念したいが……。
 
 
ここで思い出したのがfire ecology、つまり火の生態学だ。
 
世の中には、自然環境に与える火事の影響を調べる学問があるのである。森林火災はもちろん、野火や焼畑まで含む。実は、私も焼畑に興味を持つ中で、結構調べて勉強したり取材した記憶がある。
 
なかには火事で焼けないと発芽しない植物の種子があったり、火事の後に繁殖する植物や昆虫、そして動物種まである。また一定期間ごとの火事の発生によって植生の遷移が進む構造も見つかっている。畑で同じ作物ばかり植えていると連作障害が起きるが、火入れをすることでそれを解消する効果まで確認されている。
実は、アマゾンの大ジャングルもそうした火災を繰り返してきたのだという。
 
 
さて、そんな目で森林火災を見ると、意外と焼けるのは表面だけだそうだ。樹冠が燃える姿は巨大炎が立ち上り恐ろしいが、実はその下ではあまり温度が上がっていない。とくに土壌は、植物が燃える程度ではほとんど焼けず、数センチ地下になると常温だとか……。むしろ水蒸気の影響で土がふかふかになり、地下水が毛細管現象もあって上がってくる。だから焼畑では、まだ煙がくすぶるなかで種まきをしても良く育つわけだ。
多分、焼けた森からは一斉に芽吹きが始まり、再生へと歩み始めるだろう。
 
2 (金剛山の森林火災跡・松田育子氏提供)
 
 
ちなみに福島は帰還困難区域の火災で、放射性物質の飛散が心配されている。
私は現地の状況に関して十分な情報は持ち合わせていないが、少なくても森林の樹木が焼けても放射性物質は飛散しないだろう。
なぜなら6年の間に葉は落ち、枝や幹も降水で洗われているから付着していないという調査結果が出ているからだ。落ちた放射性物質は土壌内の粘土質コロイドに吸着されているはずだ。そして通常の森林火災は樹木や下草が燃えるだけなので、たとえ灰が舞っても心配ないと想像する。
 
むしろ鎮火寸前まで行って、おき火、つまり炭の状態で林床にとどまっていると腐葉土が燃え、土壌の温度を上げてしまう可能性が高い。その結果がどうなるのか私には想像できないが……。
 
 
ここは火の生態学を研究している人々が、それなりの所感を発表すべきではないかと思う。現地を知らない、調査していないからと及び腰になるのではなく、これまでの研究内容を援用して想像できる範囲を、ていねいに説明するのも学者の役割ではないか。
そしてマスコミもしっかり取材してください。。。。私? 私に仕事として発注してくれるのならやりますけどね(^o^)。

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

世界的には、自然な山火事が植生遷移の主な要因となっているのは地中海性気候の地域でしょう。
なぜなら、夏の間(例えば6月から8月まで、とか)、全く降水が無い(比喩ではなく本当にゼロ)からです。
従って、土壌中にも水分がほとんど無い場合もあり、火勢が強いと地下30cmまで焼けてしまう時もあると聞きました。
北米の太平洋岸、特にオレゴンからカリフォルニア周辺は比較的研究が進んでいるような印象があります。

日本では、夏でも深部まで土壌水が皆無になる場合はほとんど無いので、表層土壌までしか焼けない場合が多いのでしょう。

自然発火が繰り返されてきたかは、土壌断面における微粒な炭の層の出現頻度と同位体年代測定をすれば、ヒトの出現以前からかどうか分かりますが、日本では自然発火は主な植生遷移の要因ではないのでは?

日本の場合は、人為的な野火や失火、そして焼畑でしょう。
縄文時代から草原がかなりの割合で広がっていた証拠もありますし、植生に対する影響は無視できないと思いますね。東日本の黒ボク土は、その一端の可能性もあります。

スウェーデンの場合、殆どの林業がPEFC, FSC規格のため、五千ヘクタール以上の事業主は年間皆伐面積の5%を5年以内に自然保護火災に適した森林、皆伐地を焼かなければいけない事が条件、規則になります。
人の手が入る以前の北欧の森林は20年から数十年のインターバルで火災が発生し、その繰り返しで林床が焼け北欧赤松の独特な枝のない直立な幹のフォルムとなりまた。
今でも松の森林に炭化した昔の根株が多くみられます。
火災に依存する昆虫、植物等を保護する為、林野庁と共同で夏季の限られた乾燥期に森林のコントロールファイヤーが、
私の林業作業の大部分を占めています。
自然保護の為の森林火災を人為的にする事を的確に世間で理解されていないのでこちらでも説明に時間がかかります。

「焼かなけれいけない」のですか? これはちょっと驚きです。そこまで火入れを重要視しているんですね。焼かないと、アレロパシーが強まって草木が生えなくなると聞きました。まさにコントロールドファイヤーだ。
というより、 Hotshotsさん、スウェーデンに住んで、森林の仕事をれているんですか。こちらも驚き(^o^)。

チェルノブイリの影響をまともに受けた地域でも普通にコントロールファイヤーをしてます。
セシウム137の半減期を迎えムース肉も平均値1500Bq/kgから300Bq/kg(個体別上限値4000Bqから1500Bq)になり普通に食べています。
コントロールファイヤーは2015から2019までEUプロジェクトLife Taigaで生物多様性の維持、活性化目的で約10億円の補助金でスウェーデンで120ヶ所のパイン針葉樹林を焼きます。
火災が無いと極相の生物多様性の低い暗いトドマツ林ばかりになってしまう事を懸念しています。
安い外材に、、、は同感です、高価な大型林業機械は稼働率を上げるため二交代で夜中まで運転するのが普通で、さらに効率を上げるために機械の入る前に刈り払い機で規格外の小径木を伐採します。
今日も一人で胸高7から10センチパイン19年林を刈り払い機で約1ha択伐して1800本/haに仕上げる作業でしたが合理化の工夫に差が有るような気がします。
ちなみに去年から稼働を始めたストックホルム近郊のバイオ燃料施設では北欧、バルカン、ロシアから枝、樹皮等の林産チップを日に12000㎥消費して年間で19万世帯分に相当する電気、暖房温水を生産していて5万㎥有るチップ貯蔵庫へ私の住む中北部の林業、製材の盛んな地域から新しく導入されたチップ専用貨物列車も毎週出ています。
昔に比べ伐採跡地に枝葉が無くさっぱりして来たのも気のせいでは無いようです。

私も福島は、無理に森林除染を試みるのてはなく、静かに半減期を待つのが妥当だと思うのですが……北欧の事例は参考になりますね。

北欧が皆伐施業なのは知っていますが、そんなやり方ですか。
高性能林業機械も、2交代、3交代で動かして稼働率を上げられる条件ではないと価値はないですね。日本にはまったく向いていません。
バイオマス発電も、遠くバルカン半島からチップを運ぶのは、エネルギー的には無駄が多いように思いますが……。

北欧、行ってみたいですねえ。ノルウェーに行く話があるのですが……。

すみません訂正です、バルカンでなくバルト三国で対岸の国々です。
バイオ燃料用の伐採はハーベスタのアタッチメントをチェーンではなく、複数の木をまとめて同時にクワガタみたいに挟み込んで刃で切り取る方式で行うのが主流になっています。
あっという間に間伐を行い木々は、枝葉を付けたまままとめて林内に置いて乾燥を行っています。
ヨーロッパでも唯一、国土の大部分で平均200から400t/haバイオマスを生産できる国で、色々と林業的に見所が有るかと思います。
ノルウェーにお越しの際はお隣にもお寄りくださいませ。
今年は四年に一度の世界最大規模の林業見本市のELMIA WOODがスウェーデン中部で6月7日から10日まで開催です。

バルト諸国なら、距離的にはまあまあですね。でも、本来は輸入するものではなく同地域内で調達すべきだと思いますが。
 
北欧の林業、一度見てみたいものです。行く際は連絡しますので、よろしく(^o^)。

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