ふと覗いた文化庁のホームページ。新着情報の中でそこで目に止まったのが、認定された『日本遺産』である。
今年は17も選ばれた。それを目に通すと、中身はさることながらそのキャッチフレーズが楽しい。いくつか紹介すると……。
≪江差の五月は江戸にもない ─ニシン繁栄が息づく町─≫
≪荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間 ~北前船寄港地・船主集落~≫
≪サムライゆかりのシルク 日本近代化の原風景に出会うまち鶴岡へ≫
≪忍びの里 伊賀・甲賀─リアル忍者を求めて─≫
≪「最初の一滴」醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅≫
≪日が沈む聖地出雲 ~神が創り出した地の夕日を巡る~≫
≪きっと恋する六古窯 ─日本生まれ日本育ちのやきもの産地─≫
≪関門“ノスタルジック”海峡 ~時の停車場、近代化の記憶~≫
……これ、観光ポスターのキャッチコピーか!
自治体の担当者が知恵を絞ったのか、広告代理店や観光関係者に知恵を借りたのか。ある意味、これは遺産という名を借りた、観光客誘致合戦だということを感じさせる。
もともと「日本遺産」には“ストーリー”が求められる。モノ、コト、だけでなくドラマ性のあるものを選ぶと定められているから、余計に観光向きなのだ。
応募されたものをそのまま使っているのだろうが、選定されるためにキャッチフレーズ、つまり応募テーマに凝ったのだろう。
どうせなら、
申請された地域全部 を眺めると、もっと面白い。79の応募があったそうだが、みんなの工夫の跡を感じる。
中身はわからないが、キャッチコピーだけなら、認定されたものよりこちらの方が面白そう、というものもあれば、こんなテーマで応募したのかよ! と突っ込みたくなるものまで。
私の知っている地域や「ストーリー」も目に止まるが、それはイマイチじゃねえ?というものもある(でも、認定された)。
地域と歴史のストーリーというのは、いわばイマジネーションだ。ドラマが地域と歴史を喚起し感情を刺激する。意外なものがこんなところで関連し合っているのだよ、と興味を引く。
観光振興でよく使う手段だが、実際に訪れた人々を満足させられるかどうかは、努力次第。
今回の認定された地域の中には森林や林業系は見当たらない。申請地域の中に宮崎県の飫肥杉がある程度か。近いものなら「日本一の木彫刻のまち」とか、「木蝋」とか「薬草木」などだろうか。
ちなみに「薬草木」を取り上げたのは奈良なんだが、これは本草学(江戸時代の薬学。動植物鉱物の効能を研究したもので、発展して博物学、そして正統科学としての生物学へとつながる)の地として切り口として、日本の秘境探検と結びつけたら、面白くなるのだけどなあ。
紀伊半島からは多くの本草学者を輩出した。南方熊楠だってその末裔と位置づけられる。いずれも紀伊の山奥に分け入り未踏の地で動植物を探索している。幕府派遣の探検隊も組織された。
もっとウケるキャッチフレーズを付けて次回の認定をめざそう(笑)。
ちなみにホームページには「国宝・重要文化財建造物の保存修理で使用する漆の長期需要予測調査」も報告されていた。理想的な修理周期において国宝・重文建造物に使用する国産漆の需要量は、年間平均約2,2トン……という結果を出している。
現在の国産漆の年間生産量は、約1,2トンなので、あと1トンの増産が必要……。それを平成30年までに達成したい?
漆を取るにはウルシノキを10年くらい育てないといけないから、今年から何十ヘクタールかのウルシノキの植林を毎年続け、漆掻き職人も育てないと。無理そうだな……。
たまにに官庁のホームページをネットサーフィンしてみよう。面白いものが見つかるかもしれない。
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