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森と林業の本

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2017/05/01

セミナーで「業界」について思う

先日、奈良県で開かれた「地方創生セミナー」を覗いてきた。タイトルが「山元への利益還元の在り方について」とあるように、林業をターゲットにしている。

 
演者は、銘建工業の中島浩一郎社長と、八木木材の八木数也社長
もっとも主催は、近畿財務局(+奈良県)という点は、地域経済がテーマなのである。だから参加者は林業家に木材関係者、それに自治体関係者。最後がイチバン多かったような気がするが……(^o^)。
 
私は、部外者ゆえ、あまり細かな話はついて行けなかったのだが……それでも感じたことをいくつか。
 
まず中島社長の話は、やはりCLTのことが大半だった。たしかに世界的にCLTの建築物は伸びていて、建材としての魅力はわかる。ただ、奈良県内でCLTを製造する動きはまだないわけで、CLT需要が直接影響するのは原材料としての原木の買いつけだろう。
 
Img003  
 
その中で私がひっかかったのは、ヨーロッパのCLT価格が立米6万円代に下がったという点。1、2年前は7、8万円と言っていたのに。そしてJASも取得して、日本への輸出を目指しだしたとか。。。。
それに対抗するには、日本製CLTも6万円代に近づけないといけない。
 
そのための原木コストはいくらになるだろう。それは奈良県の林業に貢献できるか。
 
仮に6万円代を達成しても、同じものをつくっていては勝てまい。日本製CLTが欧米製CLTと差別化できるものは何か。
いっそ化粧CLTなんかはどうだろう。現在のCLTは、外装・内装は別に必要になるから、それをいらなくする。内側に使う部分はモルダーかけした美しい壁面に仕上げる。吉野杉材を使ってもよい。
かつて吉野では化粧集成材をつくっていた(吉野杉のフリッチを貼って見た目は吉野杉の柱に見せる)のだからお手のものではないか? 
一方で外気に触れる部分は、 対腐朽性を持たせたCLTにする。……ケボニー化したスギのラミナを使うというのはどうだろう(^o^)。
 
そんなCLTを夢想してみた。うん、イケル気がしてきた\(^o^)/。
 
 
さて、より考えさせられたのは八木社長の話だ。
もともと運搬業だったところから素材生産業に参入し、その合理的で効率の高い搬出方法で一気に成長したことで知られる。そして次に兵庫県木材センター(製材所)の経営も任された。2015年実績で17万9000立米の木材を扱うまでになっている。
 
つまり八木社長は素材生産から流通、そして製材までの行程を全部経験しているのだ。
 
で、課題として上げたのが、有体に言えば、それぞれの業界・業者のいがみ合い。(本人は決してそんな言葉を使わなかったが、私はそう理解した。)
具体的には安定供給と安定価格が必要なのに、なぜ、それが達成できないか、という問題である。
 
パワーポイント資料を引用させてもらうと。
Img002 こんな具合。
 
私も両者の対立は各所で聞かされるのだが、広い意味での林業界を振興するには一体として取り組まないといけないのに、常に疑心暗鬼と出し抜き合いみたいになっている。
 
ああ、これだから「業界」はだめなんだな、と幾度思わされたか。そもそも「業界」という発想がいけない。外が見ようとせず、内向きの細かな事情ばかりを主張する。
大量に注文されたら単価が上がるのは当たり前。量が確保できないのはコレコレこういう理由なのだ。洋風住宅が増えたから国産材が売れない。和風住宅を建てない日本人が悪い、あいつらの言い分は間違っている、直すのはアチラだ。。。(;´д`)。
 
そこで提案されたのは、こんな言葉。
 
Img001
 
「安定利益」という発想を持ち込んだのだ。一緒に安定利益を目指しましょう、と。さらに業者だけでなく、国産材商品の利用者も巻き込んでの安定利益を求めるべきとした。
 
なかなかの炯眼だと思った。もっとも、実際に皆がその方向に進んでくれる方策が難しいのだけど。
 
 
実は、このセミナーの前後に会った人々とも「業界」の問題点をいろいろ話した。その結果は、やはり外部の血が必要なのではないか、ということになる。業界外から新規参入者が、現在の業界をぶっ飛ばす動きでもないと変わらないのではないか。。。業界の合意なんか求めず、従わせるような圧倒的な新商品を持ち込むとか。
 
 
とまあ、業界外の私が感じたのでしたよ(^o^)。

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