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森と林業の本

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2017/05/02

紳士協定

昨日は「業界」の閉じた世界に苦言を呈したが、それをいかに規制するか、について考えてみた。

 
たとえば木材価格が安い ⇒ だから山主は利益が出ない ⇒ 森林整備ができなかったり、皆伐後の再造林が進まない、という。
そこで何らかの方法で、山主への還元額を高めるとする。これだけの利益があなたの手元に残るんだから、その分を山に投資してよい森をつくってください、と要求する。
 
さて、山主は素直に多く出た利益分を山に再投資するだろうか。
 
……必ずしも期待できない(~_~;)。
 
増えた利益をそのまま自らのポケットに入れる可能性が高い。再投資するのは、現在の利益ではなくて将来への期待がある場合である。投資したら次の世代でも儲かると思わないと、せっかくの利益を捨てるも同然だ。
 
 
では、どうしたらよいか? 細かく規定した契約を交わすという手もある。利潤の何%を森に投資すること、あるいは必ず再造林して、その後最低でも下刈りを3回、除伐を1回すること、とか。
 
無理だ。おそらく抜け道はいろいろあるだろうし、何年も先の施業内容を杓子定規に決めても本当の育林はできまい。それに、仮に契約を破った場合、罰則に効力はあるだろうか。その法的な裏付けを得られるか。
 
 
そんなときに聞いたのが、「紳士協定」である。それも外国の例だ。
 
細かな条件を書きつらねた契約はしない。ただ「いい森をつくってください」とか「お互いの利益を考えましょう」とか「常に話し合いましょう」「約束を守りましょう」といった協定を結ぶ。
「信頼するから守る」という契約である。
 
細かな規約がないからこそ、常に意見交換しつつ決めていく。その手間を惜しまない。
 
それを守らなかったらどうする?
 
協定を違えることは、信頼を破ることである。侮蔑され、名誉を失い、今後の取引もなくなる。長い目で見てどちらの損害が大きいか。
 
意外と効くのではないか、と思った。結局、人間と契約するのだから。契約書のどの条文を守るか、その裏を考えるのではなく、「信用していますよ」という相手を騙す方が心理的抵抗感が大きいような気がする。
 
 
もっとも、口先三寸、やり逃げ的な商売も平気という輩が多いかもしれない。と考えた私は、やっぱり業界を信用できないのだろうな(-.-)。

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コメント

「紳士協定」ははたしてこの国で意味があるのでしょうか。
大企業では粉飾決算などで自らが関係するときだけでも問題が顕在化せずに逃げたいと考える経営者が存在し、国民の多くも赤字国債という借金による将来の世代に付け回すことに何も罪悪感を感じていません。
人間の根本的な資質から「紳士協定」は意味がなく、それがために業界内のご都合主義があるのではないでしょうか。

利益への課税に還付条件を付ける、のはどうでしょう?
消費税は取引金額への課税だから、可能っぽいですけど。
課税なので税務署が監視してくれるし。
課税と還付の間で年度をまたぐから難しいかな?

紳士協定は、紳士が真摯に取り組まないと実現できません(~_~;)。
方法論は違っていても、「森を良くたい」という思いが共通しているとか。それが日本では希薄なんですかね。。。

課税などで縛るのも、やる気のない人だったら抜け道を探すでしょうし。
私は、本格的な取引に入る前の、お試し取引の段階で「紳士協定」を実行し、相手の出方をチェックすることは可能ではないかと期待するんですけどね。
結局、対人間を見て、信頼するに足る取引相手かどうかを判断しなくてはならない。

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