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森と林業の本

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2017/05/17

「林業」は現場にはない

タイトル、正確には「林業を学ぶ場は」現場にはない、である。

ちっと省略したら、ぎょっとした人、別の意味に捉える人もいたかもしれない。ネットでは、タイトルしか読まないでコメント付ける人もいるようだから、楽しみだ(笑)。
 
先日、来月からフィンランドで林学を学んでくるという学生が、出発前に日本の林業を知っておきたいと訪ねてきたので、いくつか紹介した。それで彼は九州は鹿児島から宮崎、大分と回り、関東も東北も行くつもりらしい。
なんと意欲的なことか。私もそんなに熱心ではない(^^;)\(-_-メ;)。
 
で、視察場所や会うべき人を紹介しておいてナンだが、私は「現場ばかり見るのではなく、まずは本で勉強を」と忠告した。何も私の本を買って読めという意味では……少しはあるかもしれないが、現場、現場という点に、少し水を差したのであった。
 
勉強というのは情報の理解と整理が大切なんだが、現場ばかりでは理解する暇がないし、整理の仕方も間違う。整理するスキームづくりを先にしておかないと、ただ情報を溜めるだけでは無駄になる。
 
 
別の機会に新聞記者と話す中で「現場、現場という前に調べることあるだろう」という話で盛り上がった。
 
記者という職業も、「まずは現場に足を運べ」と言いがちだからだ。
 
現場に行くことを否定はしない。。。というか、現場に行かずに取材したとは言わない。それは当たり前だ。しかし順序として、まず広く全体像をつかむ勉強をしてから現場に行くのではなかったら、現場で何を見聞きするのだ? どんな質問をするのか。先方の答をいかに理解するのか。
 
実際、まずは現場に駆けつけインタビューを試みても、先方に質問内容で理解度を読み取られて、話す情報の質も左右されるのである。
 
いや、もっと単純な話、「訪れる現場」をいかに選ぶのか。自分の知っている現場を100回訪ねても、しょせん既に知っているところを再確認することにすぎない。そしてお会いして話を聞かせてもらった内容を金科玉条のように信じるだけになる。
まずは多くの事例を知って、どれとどれを取材したら核心に近づけるか、と読み取らねばならない。そのためには、やはり文献を漁って全体像を知る必要がある。この人の意見と真反対の意見はこの人が持っている……と知ってから両者に話を聞くとか。あるいは自らの仮説をぶつけるのに適した人物を探すためにも文献は大切だ。
 
 
……そんなことを考え出したのは、やはり現場に出かけるのは疲れるし、金もかかるし、老いてからも仕事ができるよう、手抜き取材を正当化する安楽椅子ジャーナリストをめざそうかな、と思ったからかもしれないねえ(^O^) オイオイ

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林業・林産業」カテゴリの記事

コメント

北欧では現場で経験を積んでから林学へ進学する人もかなりいます。
現場仕事の豊富な経験からの学習も復習みたいなものでしょうが、現場での疑問が研究課題や卒論となり森林会社に就職して現場の管理、計画の職に就くのが一般的です。
林業の職業訓練校は進学の若い学生ばかりです。
学生さんもお若いのでしょうから、半年とか日本の現場で実習なり研修なりされればもっとリアルな林業の現場の問題点とか北欧に行ってから比較、勉強する素材が生まれてくることと思います。
自分も若いころ現場主義なので日本の林業の実情を知りたくて北欧から帰ってすぐ長野の職安で林業の現場仕事を見つけて半年くらい架線張ったり色々とやったりしてました。
その後、こちらに戻りましたが林業の現場は雲泥の差が有りました。

学ぶという点からすると、ルートはいろいろあると思います。現場から入るのも一つ。机上から現場へも一つ。現場だけ、机上だけというのがイチバン困る。

ただ間違った認識の期間に「仕事」をすると、後々後悔することも増えます(笑)。記事に深みもないし、他人に間違った認識を拡げてしまった罪悪感?も生れるのです。

同じく林学でフィンランドに留学中の大学生です。専攻(科目等)が林業と関わりがないので、去年一年間、森林組合や事業体、役場などにお話を伺ってまわりました。その前に本などを読んだのはほんのわずかな期間でした。実は、言葉の意味がまったくわからなかったんです。インターネットで調べてもピンと来ず、見て、聞いて、時にはチェンソーを使ってみて、ようやく本や記事を読んで理解できるようになりました。
私の場合は、文献が理解できなかったため、先に現場を見に行ったという経緯があります。今思うと、先方の方には失礼だったかもしれませんし、得られた情報や知識も少なかったかもしれませんが、それでも直接見て聞いたことで理解できることが随分と増えました。質問したいことも以前と比べてたくさん出てきましたし、帰国後はまたたくさんの場所に足を運んでみたいと思っています。
現在はフィンランドの研究所で研究をしています。どちらかというと、足を運んで見てみることの方が好きで、文献調査には苦手意識がありましたが、今回のブログ記事を読ませていただいて、頑張ろうと思いました。今後も精進したいと思います。

おっと、北欧に日本の人材がたくさん流出しているんですねえ(~_~;)。国内の林学徒が枯渇しないか。。。
学ぶということは、遠回りしてもいい、遠回りした方が想定外のことを知ることができるかもしれません。順序も現場が先でも机上が先でもいい。

ちょっと誤解を招きかねない書き方をしたかもしれませんが、冒頭の学生が「学ぶ」話よりも、私の思いは後半の「取材」という仕事の方が強いです。勉強は遠回りしつつ、最終的に真理?に近づけたらよいのですが、仕事では間違ったことを発信してしまうことになるので。
それと、最近は「現場に必ずしも正解はない」ということを感じていることもあります。一つの現場は、ただの一つの事例にすぎない。100、200の現場を回ればあるいは正解に近づけるかもしれませんが、一つ二つの現場を取材して「わかった!」と思っては危険だ、という自戒を込めています。

ぜひフィンランドで学んだことを世の中に還元してくださいね。私にも教えてくれると嬉しい(^o^)。

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