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森と林業の本

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2017/05/29

未来白書を望む

昨日は、森林・林業白書の中の一つのコラムだけを取り上げたが、もちろん白書全体に目を通している。
 
それなりに白書というのは情報源として重宝していて、統計的な数字を確認するほか全体像をつかむのによい。時には自分のアンテナからこぼれ落ちた各地の動きをキャッチすることもできる。
 
で思うのだが……白書というのは、過去から現代までしか記していないのだなあ。。。という当たり前のこと。
 
ちなみに「白書」ついてウィキペディアには「白書とは、日本の中央省庁の編集による刊行物のうち、政治社会経済の実態及び政府の施策の現状について国民に周知させることを主眼とするもの。」と説明している。あくまで「政府の施策の現状」を記すものであるわけだ。
 
そう言われたら身も蓋もないというか、反論しようがないのだが、読み手としては現在を理解するだけでなく、未来へ向けての指針を得ようという要望もあるのではないか。指針とは今後の施策という意味ではなく、現状が将来的にどちらに向かうと想定されるか、という点だ。
過去から現在まではこんな流れだが、未来はどちらの方向に向かうと予想できるか……そんな指針があれば、それに対して自分はどんな行動を取るか、と考えられる。
 
おそらく、予想をして外れたら困る、責任は誰が負うのか、当たっても無策を問われたらイヤ、なんだろうが、それを条件付きでもよいから示せないものか。
あるいは予想しなくてもよい。将来の変動要素を示すだけでも考えるヒントになる。
 
 
せっかくだから、例として木材需要について見てみよう。白書ではどのように記しているか。
 
(木材需要はほぼ横ばい)
我が国の木材需要量の推移をみると……(中略)……昭和62(1987)年以降は1億㎥程度で推移した。しかしながら、平成3(1991)年のバブル景気崩壊後の景気後退等により、平成8(1996)年以降は減少傾向となった。……(中略)……平成27(2015)年には、燃料材は木質バイオマス発電施設等での利用により、前年に比べて102万㎥増加し前年比35%増の396万㎥となった一方で、住宅需要の伸び悩み等から用材の需要量は166万㎥減少し前年比2%減の7,088万㎥となった。このことから、平成27(2015)年の木材の総需要量は、前年比0.8%減の7,516万㎥となった。
 
28  
 
このように、過去から現代、昨年までの動きを示しただけなのである。
 
しかし、知りたいのはグラフの右端以降ではないか。今後はどうなるの? 今年、来年と短期予想をしなくてもよい。5年、10年、20年と中長期で考える際のヒントがほしい。
 
たとえば製材の最大用途は住宅建材だが、今年は住宅着工件数は90万余。だが約10年後は50万件ぐらいという予想が民間に出ている。なかには将来30万件を切るという大手製材会社の社長の言葉もある。
 
一方、非住宅建築物はどこまで増えるか。期待のCLTは、どこまで普及するか。それなりに普及したとして、その素材の何分の1が国産材を使った品か。
 
為替レートの変動は、外材輸入に響くだけでなく、国産材輸出の多寡に響く。せっかく木材輸出に力を入れても円高になれば一気にしぼむだろう。もちろん円安なら反対に振れる。
 
増えるのはバイオマス発電燃料だけ? いやいや、これも燃料輸入が増えそうだ。さらにFITが終わりに近づけばどうなるか。。。
 
 
……こんなヒントを羅列しておいてくれると有り難い。いわば「未来の白書」である。
 
以前は、「森林・林業・木材産業の将来予測」の本が森林総合研究所編で出されていたのだが、最近は見かけませぬな。。。

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