熊本県高森町は、阿蘇地方に生えるヒノキを南郷檜(なんごうひ)としてブランド化を進めているそうだ。
南郷檜は、1955年にこの地方の在来品種として認定されたが、その特徴はなんと挿し木で育つこと。
通常、ヒノキは実生で育つ。というか、挿し木苗など聞いたことがない。それもそのはず、挿し木で苗をつくれるのは南郷檜だけなんだそうである。どちらもヒノキという同じ種なのに、挿し木できるものとできないものがあるのは、植物学的には何が違うのだろうね。
逆にスギは挿し木苗が当たり前で実生苗が少ないうえ、やたら品種が多い。ヒノキと対称的だ。
挿し木だと、基本的に色や木目などが均質な材質となる。挿し木苗がブランドになる理由というのは、ちょっと意外。なんとなく、個性がないようなイメージがあるうえ、同じ形質ゆえに病虫害や風害に一斉にやられる可能性がある。多様性がないというのは、私的には好みでない。
もっとも南郷檜は、梢側と根元の完満の差が小さく円柱・直材が採れるとか。こうした材としての利点と挿し木できる点が合わさった幸運?ゆえだろう。
今でも、一般ヒノキより2、3割高く取引されているという。
ただ植林記録などから南郷檜と認定できるのは260ヘクタールしかない……。これではブランド化しても供給がなあ。ほかにもないか探しているそうだが。
しかし、材質は遺伝子以上に育林環境が影響するからね。吉野杉は実生苗からつくるし、そもそも吉野杉という品種はない。それでも材質が一定程度似通っているのだから。
ブランドというのは、もっとイメージ戦略と最終商品の質に左右される。いっそのこと、幻のヒノキ品種として売り出す方がよいかも?
南郷の他に
カミコウと言う
挿し木生産しているヒノキの品種があります
愛媛県久万高原町の上浮穴高校演習林
に母樹があります
ブランドかどうかは別の話ですが・・・
参考まで
投稿: マサ | 2017/06/15 09:59
おお!
ということは、熊本県高森町は焦らないといけないな(笑)。材質はともかく、唯一のヒノキ挿し木苗と主張できなくなる。探せば、まだまだあるかもしれないなあ。
ある意味当たり前ですけどね。ヒノキという種が同じなのに、そんなに性質が違っていたら困ります。
貴重な情報ありがとうございます。
投稿: 田中淳夫 | 2017/06/15 10:15
はじめまして。
いつも読ませていただいております。
ヒノキの挿し木苗ですが、三重県の速水林業さんでは挿し木苗を育てていたように思います。
違っていたらすみません。
投稿: カミハタ | 2017/06/16 18:49
おっと。ヒノキの挿し木苗、実は全然珍しくないのかも(~_~;)。
南郷檜、どうする?
投稿: 田中淳夫 | 2017/06/16 20:59