また水害が発生した。今年は、福岡県南部が中心だが、毎年「過去に例のない……」豪雨が発生し続けているような気がする。
そして、豪雨によって山崩れや洪水が起きると、森林整備の問題が取り上げられるもの恒例となった。
さて、そんな時に論文等が送られてきた。学会シンポジウムの報告と水文学の論文だ。
送り主は、人間環境大学の谷誠・特任教授。有り難く拝読した。
……もっとも、私は、森林関係学問の分野の中で、もっとも苦手なのが水文学である。
とはいっても、これまで幾度か記事にしたり拙著の中でも取り上げてきたとおり、必要だと思うからヒイヒイ言いながら目を通してきた。水文学は日進月歩なので、常に新しい情報を仕入れておかないと、危険なのである。
そして、今回もヒイヒイ言った(~_~;)。
そのうちの一つ「北海道の自然」に寄せた「洪水緩和効果と河川整備・森林整備との関連性」に関するものは、改めて考えさせられる。
ここで論文全部を引用できないので一部を。要旨部分である。
ここに目を通しただけでも、これは……(・_・)...?と思わせる。
記されている「大雨に対する森林土壌の二つの効果」について十分認識している人はどれだけいるだろうか。土壌内の「水みち」効果なんて、思いもしなかった。満水状態になっても、それは地形・地質的によって生じる空隙によって「流出平準化効果」発揮されるらしい。
こうした理論は、単に研究者のレベルで留めるのではなく、行政関係者にも共有すべき重要ポイントではないだろうか。
ほかにも論文の中で、私が引っかかった点をいくつか切り取った。
いかがだろうか。洪水対策に森林整備を、という意見は、そもそも否定されるのである。間伐等であっても伐採したら、それだけで洪水緩和作用は弱まってしまう。
治水工事(ダムや堤防など)で防げる災害はほんのわずかだが、かといって森林整備に期待するのもお門違い、ということになる。
一方で、人は木材を必要としていて、まったく手をつけないで済ませるわけにはいかない。また原生林であっても、100年単位で見れば、いつか必ず崩れると言ってよい。
この点を理解した上で、森林の保全と利用のバランスを考えねばならないわけだ。
水文学、なめてはいかんぜよ。
田中淳夫様,拙稿のご紹介ありがとうございました.
拙稿は個人ホームページからダウンロードでききます.ご関心のある方はご笑覧ください.谷誠
https://sites.google.com/site/guchenghomupejitanimakoto/
投稿: | 2017/07/10 15:32
今晩にでも報告しようと思っていましたのに、さっそく読まれてしまいましたか(~_~;)。
勝手な引用、失礼しました。このブログで興味をもたれた方は、しっかり全文を読まれることをお勧めします。
今朝、ブログを読んだ、と某行政関係者に言われたばかりです。。。
投稿: 田中淳夫 | 2017/07/10 16:35