Yahoo!ニュースに『「林業は成長産業」って本当? 』を執筆しました。
直前に、「日本の林業は「成長産業」 若者比率など驚くべき状況……」と言った記事がネットで流れたので、それに対する当てつけだろう、と思っている人が多いと思う。実は……その通りだ(笑)。
いや、インスピレーションをいただいたのは事実なんだが、ずっと前から考えていたのだよ。記事にも触れた通り、そうした取材で私のところに連絡が幾度も入っているから。その度に説明するのだが、納得しないというか、そんなことを言われたら困るという反応になる。番組や記事にならなくなると思ったのだろう。
もう一つ。「成長産業」という言葉に思い出がある。
私が勤めたばかりの新人の頃、リクルート社の「成長企業の研究」という冊子づくりを命じられたことがある。ようするに企業案内というか就職活動の冊子なんだが、その広告ページとは別に、冒頭に就職運動に関するノウハウや企業情報を調べるハウツウを書かされたのだ。
問題は、タイトルにある「成長産業」の定義だ。
担当者ははっきり言った。「中小企業のこと」。
大企業の就活案内冊子は別にある(いわゆるリクルートブック)。それに対する中小企業の案内なのだが、中小企業と書いたら人気が出なくなる。だから「成長企業」と名付けて、将来性のある会社と思わせるのだと。
実際、紹介するのは小さな会社ばかり。本当に成長しているのかどうかも怪しいのだが、業績が伸びている、社員数が増えている、特別な技術を持っている、世界で(日本で)ここだけの商品を持っている……と特徴を探して取り上げる。
ま、あの頃は日本経済全体が堅調だったからそれでもよかったのだろう。ブラック企業なんて言葉もなかったし。
ともあれ、私にとって「成長産業」と聞くと、この「成長企業」を思い出す。そして疑いの目で見るのである。
今から20年前、いや30年前、昔のことでもう定かではないが、戦後の植林の人工林が間伐の時期に入り、その間伐材が売れなくて間伐が行えないという問題が出てきた。その時から林業の可能性を感じて林業に関心を持っていた。
その結果は、この国はだめな国であるということが良く分かった。政策のすべてが10年以上の遅れで行われどんどん悪くなっていく。今後も過去と同じように失敗を積み重ね、また手遅れの政策を自ら考えたことではなく、他のまねで行いそして失敗をする。
林業が成長産業でないことを示すことは、ジャーナリストとしては正しいことではあるが、経済的は損であるのだろう。
でも、そうであるから信用できる。
投稿: フジワラ | 2017/08/19 09:23
ご心配ありがとうございます(笑)。たしかに林業系の仕事は減っているような気がします……(-.-)。。。ま、いいか。
日本林業の遅れに気づいて、政府もドイツなど海外に視察に行ったりフォレスターなどを呼んだりするのですが、そこで教わったことを実行しないんですね。そんな抜本的な改革は骨が折れるから……という理由で。とくにソフトは無視。ハード(つまり機械など)の導入ばかりが熱心。市民・国民を説得するのが面倒だから。よほどコミュニケーションが嫌いなのでしょう。
しかし21世紀に入って、20年前のドイツの林政を真似てどうする。
投稿: 田中淳夫 | 2017/08/19 10:01
草刈十字軍がありましたね。一方で、伐採十字軍、いや、森林(処理)整備十字軍・・・は如何ですかね。
山の急斜面の木の処理が一番厄介です。これを悪と見做して成敗する御旗を立てる十字軍。さてプロの戦闘家(『木』殺し屋)ならば、どのように処理するか・・・?!
燃してしまえっ。灰が役に立てば・金になれば、喜ばれるだろう。炎が上がったら動物や鳥などは自主避難するだろうから、さして心配しない。と、十字軍は言うかも知れません。私の、この考えは極論ですが、
何十年経っても解決せず、今や手遅れとも言われている。ならば荒療治も考えたら、と思うのです。急斜面の木が洪水被害をもたらす『元凶』とか、言われ始めていますし、きれいごとを並べる森林整備論で、果たして良いのでしょうか。
投稿: ベンツ仙人 | 2017/08/19 10:25
十字軍で伐採とは……命懸けですね(~_~;)。いや、ボランティアで行うには危険すきます。
私は放置したらよいのではないか、と思っています。無理に「治療」せず、あるがままに見守る。災害は起きるかもしれないけど起きないかもしれない。整備したから起きなくなるというものでもないし、下手な手の入れ方をした方が危険です。急斜面を伐採したら、むしろ崩れやすくなる。
その代わり、崩壊に対する徹底的な監視体制と避難訓練を施したら少なくても命は助かる可能性が高い。財産被害に関しては、救援資金を出す方が安くつくような気がする。
投稿: 田中淳夫 | 2017/08/19 12:05
医療、みたいですね。
癌は、増殖を断ち切るために『切除』が一般的ですね。一方で、免疫力向上策(切らずに)で対抗する方法もあるようですが。暴れの元になる急斜面の木をどうするか?!・・・・寓話的なら、
→(ナメクジ駆除のごとく)縮むような薬剤を振りかけて小さくして後に『引き抜く』、、、しかも、大き目のドローンを使って。
立ち枯れ状態だったら材木利用時の『乾燥手間』の面でも有利だし。
特殊光線を浴びせて小さくする・・・SF的手法も有効ですかね?!
冗談はさておき、叡智ある人類が(本気になって)考えれば、『林業を成長産業にすること』を含め、何とかなると期待しますし、有能な方々に、(早く)取り組んで貰いたいものです。。
投稿: ベンツ仙人 | 2017/08/19 18:04
林業を、成長産業かどうかはともかく、黒字の幸福な産業にするのは、原理的には簡単だと思っています。鍵は、川下が握っているのです。林業は街で生れたのだから。
投稿: 田中淳夫 | 2017/08/19 21:22
単純明快!!ですねっ。田中さんの発した一言に集約されてます。
木が必要だというから(山に)木を植え、その後の色んな過程を得て最終的に『利用』する・・・需要があるから供給する、という単純なことです。
一方で、、、、何処かで、誰かが、何らかの間違いをしたのだと思います。~昔むかしのその昔、椎の木ばやしの直ぐそばに・・・という童謡の歌詞に私は違和感(作為?)を感じるのです。
それはそれとして『出来たもの』は兎にも角にも使うべきです。ダンシャリでも何でも、誰かが何らかの形で利用すれば報われると思います。
森林資源利活用ジャーナリストをお迎えして、今日の一連の件をタイトルにした講演会を企画する(いよいよ)、ですかね。
(質問ですが、海外でも枝打ちや間伐とかをやるのですか?)
投稿: | 2017/08/20 08:33
森林資源利活用ジャーナリストに肩書変えようかな……。
ちなみに「お山の杉の子」の歌は、戦中に作られたそうです。戦後は兵隊さんらが出てくる部分を改めて植林奨励、拡大造林を後押しするような歌にされたとか。スギの木に価値があったんですね。
森づくりはとにもかくにも成功したのだから、次は使い方です。とにかく使え! と燃やしてしまうなんて最低の方法しか思いつかない林政担当者はアホです。
投稿: 田中淳夫 | 2017/08/20 09:50
田中さんを講師でお迎えするときには森林資源利活用にも一家言を有する、ジャーナリストさんと、ご紹介します。
木は材木として竹は出来れば丸いまま、それぞれ素材の持つ機能を生かして利用すべきで、『簡単に燃すな、よっ!!』です。
投稿: ベンツ仙人 | 2017/08/20 15:35
いつも楽しく勉強させて頂いております。
今回の記事、まさにその通りだと思います。仕事は増え続けているのに、なかなかキャッシュフローが出来ません。経営が下手・・・と言う事も有りますが・・・。
そもそもグローバルスタンダード価格の原木を、人件費が世界的に高水準な日本で取り扱う事に無理があるような感じがします。聞くところによるとヨーロッパでは旧東欧諸国から安い労働力をいくらでも供給できるとか?難民で膨れ上がるヨーロッパでは暫らく安い現業労働者に困らないとか?大量生産を日本で行ってコストが下がっても太刀打ち出来るのかどうか分からないのです。
片や『自伐林業で明るい未来が来る』と布教しておられる方々がいますが、私は自伐で借金が膨らみ、途中で子供の部活のジャージを買ってやれなくなった経験が有りますのでねぇ。そもそも付加価値を付けたつもりの立木が付加価値分高く売れる時が来るのかどうか。成長産業であるならば、その時を信じて耐え忍ぶのも林業のやり方なのかなぁ?
かく言う小生、バイオマスに目がくらみ〇千万もするチッパーを購入してしまいました。とほほ・・・
本当の事を言ってくれるのは田中さんしかいないから、もっともっと林業の本質を宣伝してくださいねぇ~!
投稿: 銀山で林業 | 2017/08/21 09:20
銀山で林業されているんですか。銀掘る方が……(^^;)\(-_-メ;)。
ただ人件費に関しては、日本の方がはるかに安いですよ。欧米の林業従事者の給与は相当高いです。旧東欧出身者を雇うにしても格差を付けられない。まあ、東欧で安く伐っている可能性はありますが。
すでに日本の林業関係者の待遇が発展途上国並になっていると考えるべきかと思います。
自伐もねえ。。。小規模でていねいに、というお題目がくれてきているように思えます。高く売れないと自伐も請負も一緒でしょう。むしろ請負で造材技術を磨いた人が高く売っているケースが目につきます。
チッパー買っちゃったんなら仕方ない(~_~;)。早く減価償却することをオススメします。多分、バイオマス・バブルは近く弾けます。
投稿: 田中淳夫 | 2017/08/21 11:31
こんばんわ
造林班3年目のwoodangelと申します
gooblogでブログ書いてます
久しぶりに林業で検索してたら、すごぉくまともなことを書かれているブログを発見して嬉しくなりました
田舎で林業といえばIUターン、女性作業員という視点の記事に飽き飽きしていたからです
あ、あとじばつりんぎょうや森林ボランティアも聞き飽きていたところです
林業が生活もままならない収入であることは確かですが、そこだけじゃなくワクワクすることを記事にしている田中さんのお仕事?にとても興味を持ちました
講演会の予定とかありますか?!
本ももちろん拝読させて頂く予定です
投稿: woodangel | 2017/08/24 21:13
ありがとうございます。woodangelさんがどちらにお住まいなのかわかりませんが、近々の講演は昨日のブログにも書いた通り、9月2日に伊勢神宮のせんぐう館で行います。可能であればいらっしゃってください。
たしかに最近の林業界の話題で多いのは、UIターンに林業女子、自伐 でしょうか。ほかバイオマスにCLTかな。私も気をつけねば(~_~;)。
投稿: 田中淳夫 | 2017/08/24 22:06
コメント返信ありがとうございます
そっか伊勢神宮ですか・・・
中国地方在住の私にはとってもとっても遠いです
ちなみに前職にかかわる行きたい研修があってそれが兵庫県なのですがそれさえも延々半年行けていません
散々お願いして何とか見学という形にまで持っていっているものなのだけど・・・こういう貧乏な状況です
来年の3月の研修予定まで、予定だけ抑えてあります
兵庫県にはいらっしゃいませんか?
それか私の住んでいる県庁の林業課に頼んでみます
田中さんを呼んでくれるように
そんなお願いを県庁にしてみてもいいですか?
もしも今後
中国地方方面で講演会予定がありましたなら是非ブログでご紹介頂ければ嬉しいです
投稿: woodangel | 2017/08/24 22:27