獣害問題が声高に叫ばれる中、狩猟者の数の推移を調べてみる気になった。
よく「1970年に比べると、現在は3分の1以下に……」といった言説を見かけるからである。
ようやく資料を見つけたら、たしかに70年代は狩猟者が60万人近くいたらしい。 現在は20万人を切っているから、正しいわけだ。
が、さらに調べて気付いた。狩猟者人口のピークが70年であって、その前はもっと少ないことに。たとえば1920年代は10万人を切っていたのだ。戦後、うなぎ登りに増えて70年代をピークになったのは、狩猟ブームだったのだろうか。そして、その後は下がりだしたのであった。
そういや、地方の過疎問題を調べていたときも同じことを感じた。
「1960年に比べて、現在の人口は何分の1に!」という言葉が各地の農山村の資料でよく見かけたから調べたのだが、その土地の人口のピークが60年前後なのであった。
その頃は、戦後の食料難や大陸からの引揚者などから農山村に移り住む人が多かった。加えて林業が盛んだったし、鉱山開発も各地で行われて人口が急増していたのである。この時期、農山村は過密であった。
そんな時期と比べて、今がいかに過疎であるか……と嘆いても。。。(60年と比べるのは政府の過疎の定義が1960年と比べることになっていたから。つまり官庁が意図的に人口減少を演出したのだ。)
さらに、木材価格でも同じだ。
「1980年の木材価格と比べると、現在の材価は3分の1……」なんて言い方をされている。
が、1980年の材価は、木材バブルの全盛期で最高水準なのだ。戦前はそんなに高くない。そして現在の価格が国際水準だったりする。
ピークと比べて現在がどれほど減ったかという対比の仕方は、プレゼン的にはよくやる手だろう。しかし、政策立案にそれをやっても全体像はつかめず、間違った方向に誘導しかねない。
ピークというのは、一種異常な時期なのだ。その状態と比べて今が落ち込んでいるというのは、どちらが異常なのか誤らせる。
たとえば狩猟者が減ったから獣害が激化したという理屈は成り立たない。
有害駆除数は、狩猟者の数がピークの時期より現在の方が圧倒的に多いのだから。(1990年と2014年で示すと、狩猟者は3分の1になったが、駆除数はシカが4万2000頭から58万8000頭、イノシシが7万200頭から52万600頭へと急増している。しかし被害額は減らず伸びている。)
こんな数字を見たら、狩猟者を増やしても獣害対策にはならないことが読める。
「異常な時代」と比べて現在を嘆いても、根本的な解決法は浮かばないのだ。
なるほど。確かにそうですね。
今日鉄砲の音してたな…。白鳥飛来してるがまさか…(○_○)
ちなみに…昔、家の裏にいたら足元がババババ
となり逃げまどった事が…(足踏み状態で逃げれませんでしたが)
散弾銃だったのか…
投稿: | 2017/11/29 01:04
統計の数字自体に嘘や偽りは無い(?)のでしょうが、それを如何使うかで、かなり意図的になるのは、国会の討論でもよく見掛ける風景です。
木材に関しては、むかし・昔(国産材オンリーの時代)、伐採された量(政府の統計)の何倍もの木材が流通していたのを思い出しました。
投稿: 仁藤浪 | 2017/11/29 10:20
おっしゃるとおり有害対策に狩猟者の数を議論しても何の意味もないと思います。狩猟というはあくまで趣味の領域であって、狩猟者数というのは、狩猟を生業としている職業人口とは違うわけです。いつまでも趣味の人(アマチュア)頼みの施策でいいのかという議論になっていると思います。それともうひとつの問題はその年齢構成です。50代、60代は若手です。彼らにいわせれば、ハンター自身が絶滅危惧種になっていると自嘲していました。
投稿: 通りすがり | 2017/11/29 11:22
散弾が家の裏に飛んでくるなんて……。
獣害対策は、まず被害を抑えることなのに、野生動物の数を減らすことばかりを考えるから、狩猟者を増やせという発想になる。根本的に原因を見誤っているのも、こんな統計の嘘を信じるからでしょう。
まず予防。次に防御。駆除は最後です。
投稿: 田中淳夫 | 2017/11/29 11:44
私もこの数字にミスリードされてました。昔のことを知ると、オヤッと思うことが時々ありますね。
投稿: 青木広行 | 2017/12/03 08:21
獣害問題も、過疎化問題も、時間軸を広くとって眺めると、別の世界が見えてきます。
過疎は怖くない(さっさと撤退する)という選択肢も考えたら(~_~;)。
投稿: 田中淳夫 | 2017/12/03 09:43