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2017/12/01

森林認証の返上

NPO法人PEFCアジアプロモーションズから、来年3月をもって解散するという案内が来た。
 
ご存じのとおり、世界的な森林認証制度PEFCは、昨年の6月に日本独自の森林認証制度である緑の循環認証会議(SGEC)を承認して相互認証することになった。
そこでSGECもPEFC ジャパンに衣替えしたので、このNPOも統合されることになったのだそうである。
 
まあ、このことは事務的なことであり、SGECの変貌によって予期されたことでもあるので、どおってことはないが……今、森林認証制度はどうなっているのか?
 
 
現在、全世界での地域別認証面積は、FSCが約2億ヘクタール、PEFCが約3億ヘクタールのようだ。もっとも、両方を重複して認証を受けている森林がかなりあるので、おそらく4億ヘクタールを少し超える程度ではないだろうか。めちゃくちゃ大雑把(~_~;)
 
これって、全世界の森林面積の約1割ぐらいである。もっとも、ヨーロッパと北米が非常に多い。どちらもヨーロッパが1億ヘクタールぐらいあるし、とくにPEFCは、アメリカ・カナダが半分ぐらい占めている。
 
ともあれ、両方の認証を取得するということは、それだけのメリットがあるということだ。やはり貿易に必要であり、かつ認証のあるなしが価格に跳ね返るからだろう。
 
 
……ところが、日本の最新の森林認証面積を調べようとしたら、なかなか見つからない。どちらのホームページでも、隠しているんじゃないかと思われるほど、どこに記載しているのかわからない。探す手間をかける元気もなくなった。(もし、知っている人がいたら教えてほしい。)
 
一方で、一度は取得した認証を返上したという情報が目立つ。(FM、CoCともに。)
具体的にどことは言わないが、いくつか有名どころ?が消えている。
 
 
森林認証は毎年更新の手続きが必要だ。森林だけでなく、流通(製材業など)もともにである。5年に一度は審査を受け直す。これらの審査料が馬鹿にならないのだ。だから返上するわけだが、逆に言えば取得しても審査料分のメリットがなかったのだろう。
 
規模が小さく経営の苦しい事業体にとって耐えられないのである。一度は審査を受けたということは、それなりに環境への意識のある経営者だったはずなのだが……。
 
 
つくづく日本人は、環境に興味も理解もないのだなと思う。これは森林認証だけでなく、食料品なども同じ。環境認証は普及しないのだ。
 
ここでも、世界の趨勢に反しているのだなあ、と思わざるを得ない。
 
何か、認証材は市場価格の何割増しかで買い取る仕組みをつくらねばならないのではないか、と思わせる。
 

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コメント

初めて書き込みさせていただきます。

日本のことしかわからない者ですが、
建材としての木材については商社や問屋は問題意識を持っていても
街の工務店や型枠工務店はそんな事気にしないですからね。
とにかく使いやすいもの、安い物を持って来いと言う世界ですから。

商流で言う上流は意識が変わりつつあると思いますけど
現場に浸透しないと需要は増えないと思います。

逆に言うなら林野庁もここを攻めていかないと•••
と言っても中小で明日をも知れない経営をしているところに
理解してもらうのは難しいですが。

意識を持ち始めたのは、上流というよりは川中、かな?
残念ながら川上、上流部の林家の意識はそんなに変わらないでしょう。そして川下(工務店)も、もう少し頑張ってほしい(~_~;)。
もっとも、最大のポイントは消費者、川下というより河口ですね。
施主が、本気で環境を意識して要求しだしたら、川上も川下も変わらざるを得ないはずなんですが。

日本に限らず、インドネシアのFSC認証林でも更新をしない次事業者が出始めている様です。
環境林業省ではConsessionの面積を55,000ha(ガジャマダ大の試算では35,000ha)で充分経営が成り立つとしている様ですが、Virgin Forestでない二次・三次林で伐採に必要な費用と認証料と収入とのとの折り合いがつかなくなくなってきている様です。[

そうですね。元来、FSCは熱帯雨林の違法伐採を防ぐために考案されたのですが、ちょっと維持が煩雑でコストも高すぎる。

高度な商流連動型林業を成り立たせた欧米では普及しても、日本のような発展途上型林業では難しいのかな、と思っています。環境教育の度合いも影響するでしょうね。
ちなみにAPPは大丈夫だろうか。最近、環境貢献を強く打ち出して、森林認証も取り出したけど。

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