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2018/03/04

西粟倉村で森林信託

岡山県の西粟倉村が、三井住友信託銀行と「森林信託」事業に乗り出すようだ。
 
プランをまとめるのは3月末ということだが、仕組みとしては地権者および村から森林の所有権を同行に移転し、間伐や木材販売などは民間事業者に委託して、森林を運用する。
 
所有権を移転ということは、山主でなくなるのかと思いきや、地権者側は受益権を持ち、木材などの販売利益の一部を配当の形で受け取れる仕組みとか。
所有権が移れば固定資産税や森林保険料などは山主が負担しないで済む。代替わりで相続する場合も所有権より受益権の方が手続きが簡単だから山主も助かるし、委託側も相続に影響されずに安定的な森林整備を計画できて、森林の外部流出懸念なども減ると見込んでいる。
信託期間は10年以上を予定。期間終了後、希望すれば所有権は返還される。同行はここで事業モデルを作り、全国展開する狙いがあるという。
 
もっとも、現在は調査段階。「信託」の活用による森林管理と民間事業体による収益事業の可能性を探っているわけだ。
はたして山主は所有権の移転に素直にウンというのか。銀行側はこれで利益が見込めるのか。利益を上げるために皆伐したんじゃ話にならないし、森林経営のプランニングは誰がするのか……といった疑問はあるものの、これも森林所有権と利用権(管理権)の分離だろう。
国が森林経営管理法案などを持ち出しているが、自治体や民間でも、現在の制度を利用すればできることなのである。
 
 
森林を信託方式で利用権を分ける考え方は、私も古くから唱えていた記憶がある。それで調べてみると、本ブログには  
 
 という記事を書いていた。2012年2月である。ここでも、岐阜県御嵩町のケースを紹介している。さらに吉野林業だって山主と山守が所有権と利用権を分離しているのだから、森林信託と言えるんじゃないの?とある。
 
……今回のブログで書こうとしていたことを6年前にすでに書いていたわけで、もう書くことがない(泣)。ま、信託銀行が関わるのは国内初なのかもしれない。
 
 
ただ森林の管理は、所有権と利用管理権、さらに受益権を分離して行った方がよいという考え方は、世間のコンセンサスを得たのかもしれない。 
問題は方法だろう。いかなるスキームで分離するのか。経営主体をどこに置くのか。プランニングの主体、作業の主体はどこになるのか。分離して既存の森林組合に委託しました……では何の変化もない。
そもそも人材はどこにいる。森林組合でも市町村や都道府県、そして国でも、人材をいかに養成するのか、生み出した人材をいかに配置するのか……。
 
新しい仕組みづくりを競争する時代かもしれない。

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政策・行政関係」カテゴリの記事

コメント

美作市鷺巣に森林がありますが、今は廃虚になっております。
ヒノキ、杉の木に困てます、良い方法はありませんか、よろしくお願いいたします。

美作市鷺巣に森林がありますが、今は廃虚になっております。
ヒノキ杉の木に困てます、何か良い方法がありませんか、よろしくお願いいたします。

ここで紹介した「森林信託」、先日東京で説明会ありましたね。私は参加していませんが、全国から林業家が集まったようです。
こうした方法で、所有者が手を付けられない森を扱うのも一つの方法だと思いますが、いま一つ利益をどこで得るのかわからない。
 
美作市の森林も、まずは森林の状況を専門家に確認してもらうことです。さもないと手の打ちようがありません。

田中様森林管理の事色々な事を教えてください。利益より、山の事が心配しています。

森林信託について調べていて、田中さんのブログにたどり着きました。(何事も田中さんブログに帰着する。さすが網羅されている・・・)

お金に疎いので理解が追い付ていないのですが、森林経営信託とは、森林所有者が銀行や企業や森林組合に森林経営をの一切を託して、利回り配当を享受する仕組みとの理解ですが、経営管理法に基づいて、森林所有者が自治体に森林経営管理を託すこととと、何が違うのでしょうか?(利回りを期待しないという点ですか?

森林所有者からすると、

市町村
銀行
森林組合

という選択肢があって、
もっとも割に合うところを選べる
ということなんでしょうか?

(銀行は、森林所有者が託したいと思っても相手にしてくれるかどうかわからないけれど、市町村は森林経営管理法に則って、必ず面倒見てくれる、という理解でよいのでしょうか?)

こういうこと、詳しい人ってどの立場の方なんでしょうか?

(お忙しいところ恐縮です。スルーしてください)

私は、森林経営信託に詳しいわけではありません。とりあえず林野庁に効いてみたらいかがでしょう(笑)。そもそも森林信託の法律は以前にもありました。ただ有名無実化していただけ。
以前は九州大学の堺教授が研究していたけど、亡くなりましたからね。。。

森林経営管理法は、山主の選択肢ではなく、より消極的な山主の山を半強制的にするものです。
でも大半の自治体は仕事が増えるので引き受けないのではないかと想像しています。

「森林信託」による森林経営と「経営管理法」による経営管理の違いは、山主のモチベーションの違い、という説明は腑に落ちました。なるほど。

林野庁に聞いてみます(直球で尋ねるとどんな回答があるのか楽しみです)

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