今後、林業界では造林苗が大きな課題となるだろう。
なにしろカイバツくんこと林野庁は「主伐」を勧める際に再造林をセットにしているから、どうししても造林苗が必要になる。とにかく業者側にすると、植えないと補助金もらえないし。(植えた後、どうなっても知らないが。)
で、イチオシがコンテナ苗だ。活着率がよくて、低コストで植え付けできて……という。
私は活着率に関しては全然よくないという声を聞いているし、何より本当に低コスト植林なのか疑問を持っている。
私が注目したのはコンテナ苗の運搬方法。とくに林道・作業道から植え付ける林地(伐採跡地)までの運び方だ。
なぜかというと、年末にお会いした林業家からコンテナ苗に対する不満をたっぷり聞いたからだ。彼ら(夫婦でやっている)もコンテナ苗の植林を請け負ったのだが、現場に十分運べないというのだ。
これまでの裸苗なら、苗木袋に100本200本を詰め込んで、背負ったまま袋から引き抜き植え付け作業ができる。これは私も体験したことがあるからわかる。
ところがコンテナ苗はかさばる。植え付け時はコンテナごと運ぶにしろ引き抜いて持ち運ぶにしろ、とても手間がかかるというのだ。
で、この「基礎知識」ではどのように説明しているのか楽しみに読んだ。
この写真を見ただけでわかった(笑)。こりゃ,たまらんわ。一度に何本運べるのか。苗木袋に移すにしろ、背負子に背負うしろ、数十本が限界だろう。裸苗の10分の1である。苗がなくなったら、また林道までもどってコンテナから苗を抜き担いで元の位置にもどらなくてはならない。下手すると高低差数十メートル、距離にして数百メートルも、急傾斜の造林地を往復するとなると、大変な負担だ。
それに、植えるリズムが悪そうだ。クワで地面に穴を掘り、背中のザックに手を伸ばして苗を引き抜いて穴に差し込み、エイっと踏み込んで根元を固める……こんな植林のリズムがコンテナ苗だと取れそうにない。
さて、1日に何本植えられるのか。
私は、1日200本植えた。ベテランは400本植えるぞ、と言われた。しかしコンテナ苗では、そんなスピードで植えるのは無理だろう。よほど緩傾斜ならともかく。効率が悪ければ仕事としての実入りもよくない。
嫌がるはずである。
コンテナ苗を普及させようと思ったら、活着率を向上させるとか、植え付け器具の開発も大切だが、労働効率も上げないとね。働き方改革が必要だろう。
植え付け再造林(笑)
ちょっとボヤかせて貰います。
コンテナ苗が実際どれだけ植えられるか?
さて作業者としては、日に100本
条件悪かったら80本くらいの実積です。
私の所で仕入れている苗木屋さんは
コンテナから引き抜いて土嚢袋に入れた状態で納品してくれますが一袋で、大体25本入りです。(大きい苗だと10本入りくらい)
問題は植える事自体よりもガードの設置です。(コンテナでめ裸でも)
植えるだけなら日に300本でも植えられますが
今は鹿害対策でガードを設置しなければいけません。
使用しているのはガード大手のハイ○カルチャー
折り畳まれた樹脂製の本体を組みたて、人工竹の杭を2本打ち込み、6ヶ所をタイラップで止める。
一度に持ち運べるのは精々10セット
かさ張るは、デカイは、手間だわ
正直植える作業よりもガード設置が10倍手間になります。
もちろん設置したガードは苗の成長に合わせて何時かは回収する事になりますが、回収実積でも精々一人あたり日に100本、引き抜いて、放り投げて、拾い集めて、バンドを切って、本体をばらして畳み、それぞれ束ねる
そして頑張って背負って持って帰る
(現在回収作業の補助金はないので、切って売って多少儲けた罪滅ぼしで、自社の持ち出しで試験的にやりましたが、この費用までいれると皆伐、再造林は赤字ですね、ここまでやるバカな事業体が全国で何社あるのやら)
ここまでやって杉を植える意味は?
植え付け育林コストは、50年先の搬出で取り返せるのか?
費用は誰が出すんだ?また国か?山主か?
今は各地の皆伐跡地に墓碑のように林立する真っ白な苗木ガードの群が
回収されず放置され山の中に何千本という人工プラスチックのゴミが散乱するのは
遠くない未来で
ガードパイプの普及から逆算すれば少なくとも5年~10年以内に全国の景色になります。
(現在回収しなくて良い生分解性のガードと木製杭のセットがメーカーで開発、テスト導入中ですが、これまで植えた分はどうなるの?少なくと皆伐地には㌶あたり2000~1500本のガードが既にあるのですよ)
そもそもガードの効果自体はなはだ疑問ですが
後の始末も出来ない、皆伐は絶対やるべきでない。
天然更新で自然林に戻ればいいが
それは野となれ山となれ、運と偶然に頼って禿げ山作るのはバカか、確信犯のやることです。
現場作業員のボヤキでした。
投稿: 酔渓 | 2018/03/16 10:28
なかなかためになります。コンテナ苗はせいぜい一袋25本ですか。
ツリーシェルターも、そんなに手間がかかるのですか。私も取材したことはあるのですが、少なくても獣害対策としては悪くない。ガードの中の速成効果もあるし疎植にもできる。(もちろん成長具合によって取り替えることを前提に。)
しかし、つける手間、交換する手間、運搬の手間……これを考えると厳しいですね。
さまざまな角度から考えないと、新兵器開発! とは行かないですね。
投稿: 田中淳夫 | 2018/03/16 16:11