先日、生駒を訪ねてきた林業人。話していてふと出た言葉が、「ここ何ヶ月か休んでいない」だった。そんなブラック職場だったのか!
とはいえ一応勤め人で、会社としては土日など休みはあるよう。ところが、その週末に個人的な林業の仕事を入れてしまうらしい。それも、ときに東北やら広島やらと遠方に泊まり掛けで行く。そして月曜日からまたルーティーンな林業……。
今回の生駒に来るのが、その貴重な休暇を潰していたのであった。いや、これこそ休暇であるはず……。
しかし、生駒で私と話すことと言えば、これまた林業なのであった。私が別の話題に話を振っても、いつしか元の林業にもどる。延々林業のこと考えて、話して、身体を動かしていることになる。これ、身体によくないんじゃない?やはり働き方改革が必要なんじゃないの?
もっとも堪えている様子がない。疲れがたまって鬱になるとか、体調に異変をきたすとかないのか。どうやら頭の中が林業漬けらしい(笑)。
もっとも、他人のことは言えない。私も、完全オフの日はほとんどない。土日も、たいてい午前中はなにかしら原稿書いているし、休んでいない。もっとも平日に遊んでいることも多いから、単に仕事と休暇の境目がつかないだけかもしれん。
なぜ休みなしの環境でも平気なのか。その一つに雇われ仕事とはいえ、自分で全部仕切っているからではないか。忙しいように見えても自分で仕事の中身は取捨選択している。イヤな仕事は遠ざけてやりたいものから手がけるとか、同じ仕事でもやり方は自分で決める。
この主体性が、過労を防ぐのではないか。
たまに仕事が多岐にわたって忙しくなると、秘書がいて仕切ってくれたら……と思うのだが、実は全部自分で仕切るから楽な面もある。他人にやることを決められたら隷属的意識で仕事をしてしまいがちで、これがストレスになる。自分でやっていたら、テキトーに力を抜いて脱線できる。自己責任で仕事放棄もできる(笑)。
いわゆる「仕事を趣味にする」状況に近くなるわけだ。
残念ながら、現在の請負林業は、個別の作業を発注・受注して、言われた通りに作業することを求められる。とくに補助金絡みになると作業内容に工夫を加える余地が少ない。それが林業をブラックにする。
だが、自由に動けるのなら休みなしで働く林業人もいるのだから(笑)、10年、20年契約で山仕事を自由にやってよいように任せたらブラックなほど自分でよく働くのではないか。
そもそも自然相手の林業って、常に現場で考える仕事のはずだから。
逆に先の読めない長期管理を嫌がる業者、仕事内容を自分で考えるのが苦手な作業員は、多分本当の林業が好きでないのだろう。
これを林業人の色分けに使えるかもね。
……とまあ、そんなことを考えたものの、あんまり林業に入れ込むのもどうかと疑う。人間、もっと興味の幅を広く持たないと、結果的に自由に動けないのではないだろうか。
件の林業人と仮に一緒に住んだら四六時中林業のことばかり話されて鬱陶しく感じるだろうなあ、と私は思うのであった(笑)。
むしろ働き方改革における副業推進の先進事例かも知れません。本業林業、副業林業、趣味林業。
好きなことを仕事にすると言う点では少し羨ましいかも?
投稿: むーいん谷の妖精 | 2018/04/16 17:29
>本業林業、副業林業、趣味林業
こう来たか(笑)。こんな働き方改革はイヤだなあ.。
いくら好きでも、幅広い知見と経験を積んだ方が、結局、本業にも活かせると思うのだけど。
投稿: 田中淳夫 | 2018/04/16 23:02