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森と林業の本

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2018/04/10

北硫黄島と南硫黄島の自然

日経ビジネスオンラインで面白い記事を読んだ。

 
 
ここでは、小笠原諸島の南端ともいうべきところに二つ並んである北硫黄島と南硫黄島の調査の話をしている。
 
両島は、どちらもよく似た地形で小さく急峻で尖った山しかない孤島なのだが、北には戦前日本人が入植に入って住み着いた時代がある。南はまったくの無人島で、だから原生環境保全地域に指定されている。
 
さて、両島の植生はどのように違うか。
 
重要なのは、北には人とともにネズミが移り住み、そのため鳥類の卵を食べ尽くしたらしくミズナギドリなど海鳥はほとんどいないこと。
結果として、北硫黄島の方が植生は豊かなのだ。なぜなら海鳥がいないことで地表が踏み荒らされたり穴を掘られることがないから。南は、海鳥がいっぱいいて、地面が荒らされている。だから草木も生えにくい。
 
移入種がいた方が、植生が豊かになる……。もちろん動物や昆虫層まで含めた生物多様性は、どちらが豊かか難しいが、通常は植生の豊かさに比例するだろう。
 
この話で、私も思いつくことがある。
 
移入種ではないが、シカの増加で植生が劣化してしまう現象のことだ。これを大問題とする学者もいる。近年のシカの増加で、各地の貴重な植生が荒れだしたというのだ。農作物だけではなく、森林植生の点からもシカを駆除しろ、という声が上がるのだが……。
 
だが、シカは昔からいる。田畑に限らず、常に草木を食い荒らしていただろう。
 
ところが、明治以降約100年に渡って、シカは激減していた。その理由はいろいろあるだろうが、ともかく草木を喰う動物の数が少ないことで森林植生が回復してきた。とくに戦後は、はげ山がすっかり緑に覆われるまでになった。
 
緑が増えたことで、再びシカが増え始める。添えたシカが森林を食べて劣化させる。
 
元の自然にもどすためには、シカを減らさなくてはならないという声が出てくる……。
 
だが、どこを起点に自然の豊かさや劣化を図るのか。原生環境の自然とは、野生動物に荒らされたものなのだとしたら、その時代にもどすのがよいことなのか。。。
あるいは植物の多様性だけを考えて、シカなど野生動物の少ない特殊な時代にもどすことをめざすのは欺瞞ではないのか。。。
 
もしかしたら農林作物への獣害も、害があって当たり前なのかも。
 
なんて、考えたのである。さて、獣害対策もどうする?
 

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