大日本山林会の機関誌「山林」4月号に、「世論調査からみた森林と木材に対する人々の観点(1)」という記事がある。
森林総研の石崎涼子さんの寄稿だが、内閣府が40年以上に渡って行ってきた世論調査の結果を分析したものだ。
調査方法や対象者については、最初のページに詳しく触れている。
そして「森林に期待する働き」に対する回答の変遷をグラフ化している。
それぞれの項目について分析を試みているのだが、詳しいことを知りたい方は、「山林」をお読みいただけばよい。
その中で私の注目したのは、「木材生産機能」だ。ようするに林業ということになるが、森林から木材を供給する機能についての世間の期待度ということになるだろうか。グラフでは太い黒線で表わされているところだが。。。
1980年頃は55%程度に達するのだから、かなり高い。にもかかわらず、その後はつるべ落としで低下していく。ま、それは想像通りである。この頃は、森林破壊が常に話題に上がった時代でもあるから、林業は森林破壊だ!という声がよく聞かれたと私自身も記憶する。
ところが2000年代に入ると、木材生産機能への期待がじわじわと上がっているのだ。多少の揺らぎはあるが、ボトムの12~13%から24~25%へと増加している。
石崎さんの分析では、回答者の変化もある(都市生活者、若年層が増加)ようだ。また単純に木材生産への期待と見るより、森林整備も経済効率を考えて行うべきとする声が強まっていることも関わるのかもしれないという。
私からすると、これまで国民意識は森林に関して総じて意識が甘い(森林整備のためなら税金を注ぎ込むのも仕方がない)と感じていたが、じわりと変化が見られるのだろうか。
ちょうど国の森林環境税も創設されるが、たいして反対意見が出ないこともその証拠と見ていた。
だが、そろそろ国民は、森林や山村だというだけで、採算度外視で金を注ぎ込むな、ちゃんと木材を生産して利益を上げろ、という気持ちが出てきたと読み取ると興味深い。
あるいは林野庁の広報の効果が出て、日本の森は木がいっぱい、どんどん伐って使おうよ\(^o^)/という発想が根付きかけているのか。
日本経済が総じてくすぶっている中で、林業は成長産業化してほしいという願望も混じっているのか。
どのように解釈するかは人によって違うだろうが、人の心は不変と思うのが大間違い。時代によって揺れ動くものだ。気がついたら日本人は森が大嫌いになるかもしれないし、林業はもういらない、と言われる日が来ることだって覚悟した方がいいよ。
ちなみに、自分ならこの項目になんと回答するかと考えてみても面白い。
私なら……森林に期待するのは「野生動植物の生息の場」かな。生物多様性至上主義者だから(笑)。
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