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2018/04/17

必要なのは「教養」~欲望の経済史~

NHKのEテレやBS1でやっていた「欲望の経済史」シリーズが気に入っている。もう放送は終わったが、再放送をまた見てしまう。

ちなみに書籍にもなっているようだ。

 
資本主義の誕生から現在までを追いかけているのだが、結構考えさせる事実と理論が浮かび上がるのだ。様々な立場の経済学者が登場し、分析する。
 
たとえば、産業革命は貧富の差を増大させて労働者階級を苦しめたように思われているが、計量経済学によると、反対なんだそうだ。産業革命以降、あきらかに労働者の取り分は増えている。しかも大量生産によって物価も下がることで、生活は裕福になっていた。
しかし、困窮者が多く生まれたのは事実だ。それは限りない欲望と、医療の普及による人口爆発が引き起こしたという見立てである。
 
そのほかにもいろいろあるが、資本主義は生活をよりよくするために考え出された制度であったのに、いつしか歪みがもたらされる。そこで改善策を考えて制度を改革するのだが、常に時間とともにゆがめられる……という繰り返しであることを示している。
 
そして資本主義はグローバリズムとナショナリズム(両者は一つの主義の裏表であるという指摘も驚き)の方向に発展し、やがて正常な競争をなくし、バブルを生み出し、弾けることを繰り返す。もはや止めどもない領域に入ってきた。
 
 
 
気になったのは、グレゴリー・クラーク博士(カリフォルニア大学教授)の言葉。
アダム・スミスが最初に資本主義の本質を捉えた。彼は言った ”金を稼ぐ目的は教養を学ぶためだ” と」。そして、
 
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Dsc_1016
 
しっかり歴史や哲学、宗教、文学など人文学を学ばないと、社会のビジョンを見失い、目先の利益と制度を個人の都合のよいように変質させてしまうというのである。持続可能な社会を気付くには国民の教養が欠かせないと。
 
 
新たな社会システムや法律も、理念としては「社会をよりよくするため」に考案される。
しかし時間とともに時代の変化に追いつけなくなり、教養なき人が変質させるのだろう。とくに反知性主義が跋扈する現在、そこに希望は見出せるだろうか。
 
 
森林経営管理法が国会を通過した。おそらく、同じことになるだろう。教養なき人が林業を手がけると、必ず変質すると思うよ。
 

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