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2018/05/08

地方都市を知る方法

連休中に訪れた大分県の臼杵市。

昼間は山に入っていたため、町をあまり見られない。そこで夜中と早朝に町中を歩き回った。さすがに人気は少ないし施設も閉まっている……連休の真っ只中なのに、人が少ないのはどうかと思う……が、歩けば歩くほど見どころがある。
 
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町を歩くのは、私にとって本能のようなものだ。その土地を知るために欠かせない。
 
私は、初めての町を訪れた際は、可能な限り歩き回る。あまり大きいと不可能だが、地方都市は概ね歩くことで全体像がつかめるのが有り難い。
裏通り、とくに路地を求めて歩く。商店街は寂れていても見て回り、その裏手にも入る。駅前も同じだ。そして路地を一本一本しらみ潰しに歩く。
ただし名所旧跡も外さない。繁華街や表通りも重要だ。流行っている店、閑古鳥の店、デザインも目にしたい。興味を引く店や施設があったら、まず入る。面白い人がいると聞けば訪ねていく。
 
列車の本数が少なくても駅に行けば、そこを利用する人が集まっている。シャッター商店街であっても訪ねる。ロードサイドに並ぶ店は全国チェーンであっても、1軒1軒覗く。
 
そうして初めて地域が見えてくるはずだ。全国チェーンであっても、そこで働くのは地域の人々だし、売れ筋が違うので品揃えも微妙な違いがある。
 
現場を徹底的に見て、時間があれば歴史や地理なども詳しく調べる。市史、町史など郷土史を読んでみる。5000分の1くらいの地図を手に入れて(今ならネットでも間に合うが)、にらめっこする。まだ歩いていない道はないか。知らない施設はないか。
 
そんな過程が、地域を理解する一歩だろう。私が生駒に移ってきたときは、そうしたもんだ。
 
 
地方都市の疲弊と衰退がよく語られる。たしかに人口推移や経済力を指標にするとそうなるのだが、それを語る前に町を歩くべきだ。
 
近頃、地方都市に住んでも困らない、買い物は全部Amazonなどで間に合うし、情報だってパソコンで得られる、とのたまう人がいる。だから一応街の拠点である駅前の商店街には行ったことがない、ロードサイドのチェーン店も興味がない……だと? それで地域を論じるなよ。
Amazonで買い物するから地元の店は衰退するんだよ。Amazonは地域にお金を落とさないんだよ。
 
どんな町でも何かある。あるかどうかを探すために歩く。
その上で論じてほしいね。町を歩いて見る景観は、今後の大きな観光の魅力である。
 
 
ところで臼杵は、着いてから気がついたのだが、戦国時代の大友宗麟の根拠地だった。
 
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臼杵城跡。宗麟の拠点だ。かつては海に浮かぶ城だったという。現在残るのは江戸時代の稲葉家のものだが、実にユニークな構造をしていて、城ファンなら興奮するのではないか。
 
大友宗麟は一時期九州全域を制覇する勢いだったが、島津に破れて挫折する。だが重要なのはキリシタン大名だったことだ。そして臼杵はキリシタンの都となり、フランシスコ・ザビエルなど多くの宣教師が訪れて「東洋のローマ」とカトリック協会に報告した土地だったのだ。多くの南蛮からの船が行き来する国際都市だった。
 
天正遣欧少年使節も、この町から出発した。(船に乗ったのは長崎だが。)思わず千々石ミゲル、中浦ジュリアン、伊東マンショ、原マルティノ……この4人の少年の運命に反芻して時空を馳せる。
 
そのほか臼杵石仏もよかった。奈良に住んでいると、石仏なんて捨てるほど見かける(笑)のだが、なぜ臼杵石仏が国宝になったかわかったよ。でも、誰がつくったのか謎なんだという。
 
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臼杵はポテンシャルの高い町であった。それなのに観光客が少ないのはもったいない。宿泊する場があまりに少ないことと、近くに大分や別府など温泉の出る大都市があるからか。
どちらも奈良が宿泊者数全国最下位になりかけているのと通じる理由である。
 

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